第十一話 違和感 その①
ランキング上位に入れば、数々の恩恵を受けることができる。
例えば、食券割引、授業選択優先。そして、企業からのスカウト。
もちろん、誰もがなれるわけではなく、優秀な召喚獣と、正確な判断力をもつ召喚士のペアじゃなければ、達成することはできない。
ある者は尊敬を、またある人は嫉妬の目を向ける。
本来であれば、僕が成れることはまずない。ないんだけど……。
「……たしか、上位者って、週に一回は試合を受けなきゃならないんだっけ?」
「そうだ、申し込んできた奴の中から、1人選んで、ランキング戦を行わないとならない」
冬至の話により、ますます気分が重くなる。
もちろん、金欠気味な僕にとっては、若干割引はすごくありがたいけど、その恩恵も長くて一週間だ。
「間違いなく、強い人から申し出がたくさんあるよね……」
「間違いなくな」
僕以外の召喚士から見てみれば、今の僕は学校の的にすぎない。
なんせ、ヒヨコに勝つだけでランキング一位の座を貰えるんだ。
「おはようございまーす」
ガラガラガラと我が教室のドアをあけ、教卓の目の前の席(すぐ眠るため)に座る。
てっきり、クラスメイトから声をかけられると思ったが、意外と何ともない。
まぁ、昨日あれだけ安藤さんから体裁を受けたし、憐れんでくれているんだろう。
しばらく待つと、三十代にしては老け顔の担任、上垣先生が、朝のホームルームを始めだした。
「……以上です。何か質問がある人はいますか?」
「はい」
「はい、高橋さん」
「ランキングの、上位者待遇について教えて欲しいです」
「上位者待遇? どうしてそんな事を?」
質問を質問でかえされた。
どうしてって、そりゃ。
「一番ですから」
「一番? ……あぁ、そうですね、一番ですからね(笑)」
「すみません先生、今笑いませんでしたか?」
「あっはっは、笑ってないですよ、あっはっは」
イラっとしたが、僕も大人なので耐えられた。
見る休み、冬至は親指と人差し指を顎に当て、深く考え込んでいた。
「どうしたの、冬至?」
「いや、大丈夫だ、多分気のせいだからな」
「そっか、じゃぁ、食堂にいこうか」
我が学校の食堂は、ものすんごく広い。
小学校や中学校の、体育館以上の広さを誇っている。
注文は食券方式で、カレー等の定番メニューから、フォアグラ丼という、誰向けか分からないようなメニューまで、種類は100以上に及ぶ。
召喚士の社会貢献度を考えると、これぐらいは当たり前というのが学校の方針らしいけど、高校の枠を超えていると常々思わせられる。
「あ、そういえば、カルビ丼奢ってもらえるんだっけ? あ、じゃあ、この前の賭けでつけておいたカルビ定食と相殺ってことでいい?」
「……」
横を見ると、また親指を顎に当て、考え込んでいた。
「冬至?」
「ん、ああ、すまん。……用事ができた。 先に食っててくれ」
そう言うと、足早に食堂を出て行った。
……しまった、食券買ってもらうべきだった。
でも、待遇があるから、通常の値段の半額で食べられる。ここだけに関しては一位になって良かったと思う。
「ごめんね、まだ連絡をもらってないから、割引することはできないのよ」
フォアグラ丼の食券を手に、残酷な事実が言い渡された。
本来なら、半額分のキャッシュバックが行われるはずだったけど、ただただ財布を軽くしただけになってしまった。
これにより、僕の明日以降のお昼ご飯は、惣菜パン一個になってしまった。
……おかしいな。
試合の申し込みが全く来ない。
SNS社会、些細な情報でも、すぐに拡散されるはずなのに。
でも、試合をしないに越したことはないし、あまり気にしないでおこう。
『ピヨピヨ』
胸ポケットにすっぽりと収まっていた、ヒヨコが、嘴で襟をひっぱってきた。
「ん、どうしたの?」
『ピヨ』
「公園に散歩に行きたい? ……うん、いいよ、行こうか」
どうせ、また鳩に戦いを挑むのだろう。
見た目によらず、好戦的なんだよね、このヒヨコ。




