初めて殴られなかった1ヶ月
押しかけてくるのだ。
食堂に、サークル活動中に、しまいには講義室にまで押しかけてくるようになったのだった。
「ねぇはるちゃんこれなら毎日殴られた方がマシだったと思うのね。」
「ぶっちゃけあたしもそう思う。」
毎回毎回NOと言っているにも関わらず、だ。
こんなことが1ヶ月も続けば心身共に疲弊してくる。
昼時から少しずれた人の少ない食堂で、はるちゃんと2人項垂れていた。
「大丈夫ですか姉御」
「姉御って呼ぶなって言ったでしょ香山」
ヤツを追い返しているのを同じ学部生に見られた結果、それまでお淑やかな子で通していたのにすっかり姉御呼ばわりされるようになってしまった。
特にこの香山が鬱陶しい。面白がるんじゃない。
「にしてもアイツめちゃくちゃ執念深いな。素直になれないだけでマジで姉御とより戻したいだけなんじゃねぇの。」
「そんなわけないしそんなわけだったとしても下手くそすぎるでしょ。変な冗談言わないでくれる。」
そう、そんなわけがないのだ。ただアイツは寂しいだけなんだから、私が大事だから一緒にいたいわけじゃない。
アイツの寂しさを本当に埋められていたのは私だけなのかもしれないけど。