進展か崩壊か
さっき殴られた右頬はジンジン痛んで、熱を持っているのがよく分かる。顔見知り程度の学生達は、事情を察してか哀れみのような同情のような視線を送ってくる。食堂の端の席とはいえ顔面にデッカい湿布が貼ってあるんじゃ目立って仕方がない。これじゃまともに恋愛も出来ないじゃない。
はるちゃんの言う通りアイツに直接言いに行ったとして、果たして何か改善されるだろうか。それはないだろう。この逡巡は5回目のビンタを超えた頃から何度もしている。アイツが根本的に変わらなければ同じことが延々と続くことだろうという答えも何度も出した。
「どーしようもないなぁ」
はぁ、と11回目のため息をついてテーブルに突っ伏した。冷たくて気持ちいい。はるちゃん私のつむじをシャーペンでぐりぐりしないで地味に痛い。
突然はるちゃんのシャーペンの力が弱まった。そのあとガタッと椅子が鳴って、はるちゃんが立ち上がったような気配がした。
あーすっっっごい嫌な予感がする。
「なぁ」
なぁ、じゃねぇよなんか他に言うことあんだろうが。
そこに立たないでくんないかなあんたの身長じゃ目立つんだよ何しに来たんだよ。
顔を上げると案の定、アイツが目の前に立ってた。
高校1年生の春、初めて会ったときと同じ、無機質な冷たい表情のアイツが。