少し前の話
アイツとは高校1年の時に会った。隣の席だった。背が高くて顔が良かった。それはそれは顔が良かった。少々独特だったが、ユーモアのセンスもあった。そしてとんでもなく賢かった。数学に関しては最早天才の域だった。
しかしそんなハイスペックを見事帳消しにしてしまうような欠点があった。
まるで人の心がないのだ。アイツの言葉には優しさのやの字もなかった。そんなヤツに私は目をつけられてしまった。めちゃくちゃ絡まれた。最初は面倒だったが、なんだかんだ放っておくことができず、忘れ物が多いアイツの世話をアレコレと焼いてしまっていた。そうしていくうちに私たちは仲良くなり、とうとう周りから付き合っていると囃し立てられるようにまでなってしまった。そんな日々が2年間ほど続いた。そして3年の夏に私から告白した。彼は私に完全に心を許してくれていた。とても幸せな半年だった。筈だ。
彼は異常にスキンシップが好きだった。これまで人と必要以上に関わってこなかった反動だろうと、そうした接触を拒むことはほとんどしなかった。付き合って3ヶ月で体を重ねた。ここから彼のわがままがヒートアップしてしまった。デートの度に体を重ねたがり、常に触れたがった。もともと連絡不精だった彼の性格と相まって、体目的なんじゃなかろうかという疑念が私の中で生まれてしまった。そんな訳ないことは誰よりも分かっていた筈なのに。
受験のストレスと彼への疑念とで頭がぐちゃぐちゃになってしまった私は彼に理不尽な怒りをぶつけた。彼はその日から私を信じられなくなってしまったようで、卒業式の日振られてしまった。悲しかったが、しょうがないとも思った。
どのみち別れていただろうと。
これからもっと素敵な恋をしよう。誰も傷つけないような、優しい恋をしよう。そう思って大学へ通い出した。第一志望だった、彼と通うはずだった大学へと。