ある魔道士たちの会話
この世に存在する魔法は全ては1から始まった。不可能を可能にする奇跡を人は魔法と呼んだ。
奇跡を起こした1人は、その奇跡を自分の周りの人間に薄める形で広めていった。
薄められた魔法は、多種多様な人間たちによって更に薄められ、また、あらゆる望みを叶える形で変化していった。
原点とも呼べる〈魔法〉はこの世にはもう残っていない。
あらゆる願いと理論化を経て起こる擬似的なそれを現代の人間は〈魔道〉と、名称を改めた。
「だから、私たちは魔法使いじゃないんだね」
「そうだね、僕らは等しく魔道士だ」
「少し悲しいよね、これだけ頑張っても魔法は使えないなんて」
「……そうかな」
「……?」
「魔法は1つの奇跡しか起こせない、その奇跡がどういうものだったのか、文献にはどこにも残ってない。けれど今の僕らには魔道がある」
「……魔道は奇跡じゃないよ、勉学だよ」
「奇跡を元にした勉学さ、あらゆる人間が知識と情熱を持ってして生み出した新たな境地だ」
「どういうこと?」
「先人が作った道を僕らは進むんだ、あらゆる願いの通過点、死んだ人がどんな願いでその魔道を行使したのか、僕らは魔道を通してそれを知れる」
ルタ・レガーソンは優しく微笑む。
「素晴らしいと思わないかい?僕らはこうして思いを紡ぐんだ」