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9.聖女


「旅に出る事が決定事項なら一つ提案があるの。さっき魔法の鞄が持ち込まれたの。明日には掲示板に入荷情報を張り出すんだけど、一瞬で売れてしまうと思うわ。今なら買えるわよ。買わない?」


「魔法の鞄……?」


「そう、無限収納、時間停止の魔法の鞄。旅をするならとても役に立つと思う。滅多に出回らないからすごく高いけれどレイなら買えるわ」


「無限収納……?是非欲しいです!いくらですか?」


「一億ギルよ」


「買います!」


「さすがね……即答するとは思わなかったわ」


「無限収納は僕のスキルと最高に相性が良いと思うので。一億ぐらいすぐ稼げますよ!」


「普通の冒険者にはなかなか言えないわよ……少し待ってて。取ってくるから」


 僕とリンはそこで待った。

 しばらくするとアイリスさんを連れてソフィアさんが戻ってきた。


「レイさん、こちらを購入されるんですね……すごいです……さすが凄腕の採取人ですね」


「これがあればもっと採取出来るので」


「これが一億ギルで魔法の鞄を購入する契約書よ。アイリス、説明してあげて」


 その後契約書にサインをして口座から支払いを済ませた。

 魔法の鞄の簡単な説明を受け、使用者を僕に設定してもらった。

 この鞄はロック機能があり、使用者を四人に絞れるそうだ。僕に設定し、今まで使用者だったソフィアさんの権限を外した。

 今後は僕の権限において、残りの三人の使用者を設定出来るそうだ。すごい機能だが、必須の機能だよね。


「レイがレイザールを離れると寂しくなるわね……」


「本当ですね。まさかレイさんが勇者候補のルーナさんと恋人関係だったなんて……」


 ソフィアさんを見たが目を逸らされた。違うのに……。


「さぁレイ。今から騎士の駐屯地へ行くわよ」


「えっ……今からですか……?」


「そうよ。口座からお金を使った以上あなたは生きていて、買い物をした事になる。早く解決しておかないとご家族にも影響が出るわよ」


 僕はソフィアさんに連れられて騎士の駐屯地へ向かった。

 行くのは初めてだ。あいつらはちゃんと駐屯地にいるようだ。ルーナもいる。


 駐屯地へ到着し、守衛に話しかけた。


「ブレンという騎士はいるかしら?双星の聖女ソフィアが会いにきたと伝えて」


「そ、ソフィア様……少々お待ち下さい!」


 えっ……双星の聖女って……?

 ソフィアさんって聖女だったの?


「ブレン副隊長は中でお待ちです。案内致します!」


 僕たちは会議室のような所へ通された。

 中でブレンが待っていた。


「ソフィア様……何かご用でしょうか……?」


「うちの商品を亡き者にしようとしたそうね。私は忠告したわ。手出しするなと。覚えているわね?」


「は、はい、その件は覚えていますが、その後手出しした覚えはありませんが……」


「レイ、今日あなたに危害を加えようとした騎士の名を教えて」


「騎士ブレン、騎士ロバート、騎士アレックス、騎士ロドニー、騎士グレイ、騎士オーセンの六名です」


 ブレンが驚愕の表情を浮かべた。


「ここに全員呼んで。今すぐに」


「い、いえ、ですからそのような事実は……」


 一瞬でソフィアさんが腰のポーチから二振りのメイスを抜き取り、会議机を粉砕した。

 勢いに気圧されてブレンが椅子から転げ落ちた。


「私の異名を知っているかしら?これを見て。星みたいでしょ?これを二つ振り回すから双星。これで叩くとどんな魔物でもすぐに死ぬの」


 ソフィアさんのメイスは先端に人の頭ぐらいの大きさのトゲ鉄球が付いているモーニングスターメイスだ。物凄く重そうな武器だけど、あんな速度で振れるもんなんだ……怖すぎる……。


「これであなたを叩きにきたの。罪なき者を襲う騎士なんていらないもの」


「そ、そ、そ、そんな事をしてただで済むとお思いですか?」


ブレンは床に転がったまましどろもどろになって反論した。


「済むわ。聖女は品行方正にして嘘をつかない。聖女が罪人だと認定したらそのまま確定するの。刑を執行する権限もある。ここであなたを処刑してもなんら問題ないの。後の処理はロベルトに任せれば良いだけ。逆に聞きたいわ。あなたは私を敵に回してただで済むと思ってたの?」


「大変申し訳ありませんでした!!この通りです!お許しください!」


 ブレンが地面に額を擦り付けている……ソフィアさんって何者……ロベルトって誰……?


「今回の件の首謀者は誰?そいつを殺すわ」


「ソフィア様……お許しください……お許しください……まだ死にたくない……」


 ソフィアさんは黙ってそれを見ている。


「早く。全員をここへ呼んで」


「お許しください……お許しください……」


 ダメだ、ブレンは壊れた機械のように同じ言葉を繰り返している……。


「レイ、全員この建物にいる?」


「います。すぐ隣の部屋で聞き耳を立ててる雰囲気です」


 ブレンが絶望した顔でこちらを見た。


「そう、どっち?」


「こっちです」


 ソフィアさんは指差した方の壁を一撃でぶち破った。

 ブレンの目が点になっている。


 隣の部屋では僕を襲った騎士達が部屋の隅で固まって震えている……。


「全員に星を一つづつプレゼントしようかしら?それとも首謀者を処分するか。どっちがいいの?」


全員がブレンを指差した。首謀者はやはりブレン……。


「やはりあなたが首謀者のようね。こちらへきてここに座って。すぐに済むから。」


「嫌だ!!行かない!!絶対行かない!!誰か助けて!!誰かーーーー!!」


 ブレンが泣きながら部屋を出ようとし、他の騎士に食い止められている……。


「どうしようもないわね……後の処理はロベルトに任せる。それはそうと……これだけ騒ぎを起こしているのにどうしてルーナさんは来ないのかしら?」


全員が目を逸らした。


「ルーナに何かしたのか?」


 全員が黙っている。

 ルーナの居場所はすぐにわかった。

 

「ソフィアさん、向こうです!」


ソフィアさんは軽々と壁をぶち破って進んでいった。

その先にルーナはいた。

薬で眠らされているようだ。

幸いまだ何もされていない……良かった……。

僕はルーナを抱き上げた。


ブレンがいる部屋まで戻り、ソフィアさんは言った。


「ここまで来ると処刑は免れないでしょうね……ロベルトが許してくれるとは思えないわ。ルーナさんは本日付で退職するから。いいわね」


そう言って僕たちはギルドへ戻った。



ギルドの医務室にルーナを寝かせて一安心した。


「ソフィアさんって聖女様だったんですね。凄いです!」


「筋肉聖女よ。聖女様なんてガラじゃないわ」


 ソフィアさんが軽い自虐ネタを入れてきた。


「ロベルトさんってどなたなんですか?」


「昔のパーティメンバーよ。今は騎士団の総統をやっているから、今日の件はロベルトに任せておけば大丈夫」


 騎士団の総統……めちゃんこ偉い人だ……。


「ソフィアさんって凄い人だったんですね……」


「マスターはかつて勇者パーティのメンバーとして数々の難敵を打ち破ってきた伝説の聖女様なんですよ」


 アイリスさんが補足してくれた。

 

「二つの星を自在に操る所から双星の聖女と呼ばれていたそうです。ね、マスター」


「その星は見せてもらいました。隕石が落ちたような威力でした……」


「えっ、マスター……駐屯地で何して来たんですか……?」


「何もしてないわよ。ルーナさんを救出してきただけ」


「確かに……ルーナさんが窮地にいた事は確認出来ますが……」


「人助けよ。聖女として当然の責務を果たしただけ。当人達の処分はロベルトに任せる。何も手出ししてないわ」


「レイさん、本当ですか?」


「本当です。相手には指一本触れていません」


「そうですか。ならギルドへ請求が来る事はないですね」


「あー、うん、多分」


 壁代はいくらか請求が来るかも知れないなぁ……。



「ルーナはいつ頃目覚めるでしょうか?」


「勇者候補を眠らせる程の効果を持つ睡眠薬だから、かなり強い効果を持ってると見ていい。丸一日ぐらい起きないかも知れないわ」


「僕ここでルーナを見ています。今日はありがとうございました」


「ダメよ。自分でも言ってたでしょ?ただの幼馴染だって。年頃の男女、しかも女の子は眠っている。間違いが起こらないように私がついてるわ」


「そうですね。ルーナさん、とても綺麗ですから間違いが起こっても不思議じゃないですね」


 ソフィアさんが言い、アイリスさんが同意した。


「ルーナさんもいつまでもレイに寝顔を見られてると恥ずかしいでしょ。今日はもう寝て朝一から旅の準備でもしてらっしゃい」


 そう言って部屋を追い出された……。


「そ、そんな……」







 

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