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3.サーチ

 今回の避難は長引いている。

 レイザールへ避難してきてからもう一ヶ月が経った。


 騎士団の派遣は二度目となる為、三度目がないよう確実にフェンリルを仕留めるそうだ。

 

「母さん、宿代大丈夫?」


「まだ今は大丈夫よ。でもこれ以上長引くと厳しいわ。そろそろいい知らせが欲しいわね」


「そうだね。でもあのフェンリルは頭が良さそうだから、探されてるとわかっている所には出てこないかも」


「どうしてそう思うの?」


「なんとなく……」


「そう……レイ、あなた何か隠してるの?」


「いや、隠してないよ。ただ二度とも僕たち気絶してたのに食べられてないから、思った程悪い魔物じゃないのかと思って」


「そうね……アルバートさんも意識を失ってた。あなたも。なのに二人とも食べられてない……」


「アルバートさんも風圧で飛ばされて意識を失ったと言ってた。僕も怖すぎて意識を失った。フェンリルに害意は無かったのかも知れない」


 そんな事を話しながら食事をとっている時だった。


「邪魔するよ、ミアさん、レイ君」


 アルバートさんが声を掛けてきた。


「あら、レントにいらっしゃったんじゃ……?」


「レントにいても相手がフェンリルじゃ俺は役に立てないんで、引き継ぎを終えてこっちへ戻ってたんですよ」


「そうだったんですね」


「一度レイ君とゆっくり話がしたいと思ってたんです。今から連れ出しても良いですか?」


「えぇ、構いませんよ。レイ、お金は持ってる?」


「うん、持ってる」


「では、すみませんが少し連れ出します。夕方にはこちらに送り届けるので」


「はい、よろしくお願いします。レイ、いってらっしゃい」


「うん、行ってきます」


 そうして僕はアルバートさんと外に出た。


「どこへ行きますか?」


「少しフィールドへ出ようか。君のスキルが見たいんだ」


「僕のスキルですか?どうして?」


「言っただろう。最高のスキルだって。ただ使い方がわかってなさそうな雰囲気だから一緒に検証してみようと思ってね」


「サーチのスキルに関して詳しくご存知なんですか?」


「俺も冒険者を長くやっていたからね。スキルの価値はわかるつもりだよ。鑑定が絡むスキルはほぼ例外なく有用だ。ただスキルというのは使い方を知らないと宝の持ち腐れになりかねない。サーチを深掘りしてみよう」


「お願いします!」


 僕たちは街を出てフィールドへ到着した。


「君のサーチには今何が捉えられている?」


「今は……何も捉えていません」


「なるほど……範囲があるのかい?」


「そうですね、範囲があります。その範囲内に何かが有れば探知出来ます」


「何かが有れば?」


「そうです」


「小石や枝、落ち葉は探知されない?」


「……そういえばそうですね……」


アルバートさんは手のひらに乗せた薬草を見せた。


「薬草ですか?」


「そうだ、薬草だ。試してみよう。薬草をサーチするんだ」


「薬草をサーチ……」


 僕は意識を薬草に向けてフィールドを眺めた。

 するとサーチの範囲関係なく薬草のありかが無数に視界に映った。


「普段と違う結果が出たかい?」


「……はい。範囲関係なく薬草のありかが無数に確認出来ています。いつもなら範囲内にある物しか探知出来ないのに」


 僕達は最寄りの薬草のありかへ移動した。


「確かに薬草だね」


「人物はどうかな?ミアさんをサーチしてごらん」


「母さんを……?」


 僕は母さんに意識を向けた。

 すると母さんの居場所がすぐにわかった。

 方角と距離がイメージ出来る。


「母さんは向こうにいます」


 僕は母さんのいる方向を指し示した。


「上出来だ。次は俺の知り合いのフィートを探してみてくれ」


「フィートさん……」


 僕は意識を向けたがフィートさんの所在は掴めなかった。


「すみません……知らない人は出来ないみたいです」


 するとアルバートさんが僕の肩に手を置いてきた。


「もう一度やってみるといい」


 よくわからないが次はフィートさんの所在が判明した。


「出来ました!あっちの方向にいます」


「やはりね。俺は今フィートを思い浮かべて君に触れた。探したい人物を知っている者に協力して貰えば人探しも容易に出来そうだな」


凄い。僕が出来る事が増えていく。


「フェンリルはどこにいる?」


「えっ……フェンリル……」


 僕はフェンリルに意識を向けた。

 一体のみ確認出来る。


「一体しかいません。合っていますか?」


「伝説級の幻獣が何体もいたら困る……レントはこの方角だ。あっちにいるかい?」


「少し外れていますがその方角に居ます。こんなに長く騎士団が捜索しても見つけられなかったフェンリルをこんなに簡単に……」


「驚いたね……相手が強大でもレジストされないようだな。思った以上に凄いスキルだ」


「自分でも驚いています……」


「レイ君は今まで近場にある売れるとわかっている物を探知していたに過ぎないようだ。本来のサーチには有効範囲がない事が確認出来る。フィートは大陸を隔ててずっと遠くにいるんだ。つまりどこまでだって見通せるという事。初めに君みたいなすごいスキルに目覚める事が出来たなら俺ももう少し上を目指せたんだろうな……」


アルバートさんは少し寂しそうに笑った。


「さっ、少しは役に立てたかな?役に立ったなら少し君のスキルで小遣い稼ぎさせてもらっても良いかな?」


「もちろんです。教えてくれたお礼に今日は僕のスキル使い倒して下さい!」


「頼もしい!じゃ遠慮なく」


 その後僕たちは高く売れそうな物を片っ端からサーチして、すぐ行ける範囲なら回収、遠くなら諦めて次という感じで次々とお宝をゲットしていった。


「そろそろ帰ろうか。今日は楽しかったよ」


「はい、こちらこそ楽しかったです。今日回収した物は全部アルバートさんが取ってください!」


「明日からやる気充分だね。本当羨ましいよ」


「頑張って母さんを喜ばせてあげたいんです」


アルバートさんが僕を真っ直ぐ見て言った。


「レイ君は戦闘系のスキルに目覚めたかったと言っていたが、戦場に身を置くというのはそんないい物じゃない。死ぬ危険もある。ミアさんを喜ばせるのとは全く反対方向へ進む事になる……」


確かにそうだ……常に戦場に身を置く冒険者になると母さんは僕の事をずっと心配するだろう……。


「一方君のスキルは戦闘を回避出来るだろう?敵対する魔物全般を常にサーチしていれば敵との距離までわかる。つまり戦わなくても冒険が出来る。大人になったら広い世界を見る旅に出てみるといい。君のスキルならなんだって出来る」


 すごい……僕のスキルは本当にすごいんだ……。


「後そのスキルは人に教えない方がいい。はっきり言って利便性が高すぎる。悪意ある者に利用されかねない。自分のスキルを説明しないといけない場面が来たら、今までやってきたように、周囲にある物を探知出来るスキルだと説明すればいいだろう。他では聞いたことの無いスキル。ユニークスキルなのかもしれない。詳細を知ってる者などそういないはずだ」


「はい!そうします!」


 そう言って僕達は宿に戻った。


「俺はミアさんと少し話していくよ」


 宿の食堂でお茶していた母さんを見つけてアルバートさんは母さんの方へ向かった。

 アルバートさん……母さんといい感じなのかな?



 二ヶ月後。僕と母さんはレントへ戻る事が出来た。

 結局フェンリルは討伐出来ずじまいだった。

 これだけ探してもいないなら、あのフェンリルは周回性の習性を持つ個体なのではないかという結論に至ったようだ。

 僕のサーチでもフェンリルまでの距離がかなり離れている事を確認出来た。でも、またいきなりニアミスしたくないのでフェンリルの居場所は常に視界に収めておく事にした。

 僕のスキルはそういう事も出来るんだ。

 アルバートさんも言ってたけど、利便性が凄く高い。


 そしてどこまでも見通せる。


 自分の世界が一気に広がったような感覚だった。


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