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27.召喚タクト

 魔王シトリーの居城へ向けて移動を開始していた。

 ケインさんのテレポートで近くまで飛び、そこからは徒歩で移動だ。

 ケインさんは経験豊富だから近いスポットまで飛べて移動が本当に楽だった。


 僕は移動しながらルーナと話していた。


「テレポート、僕も覚えたいなぁ。テレポートの魔道書ってどこで買えるんだろ?」


「テレポートの魔道書はレアだって聞いたよ。手に入れるならオークションとかになるんじゃない?」


「オークションかぁ。一回探してみようかな」


「レイ君、ずっとメフィストさんのステータスをミラーリングしてるんでしょ?どんな魔法でも取れるんじゃない?」


「うん、そんな気がする。ミラーリングを解除したら何も使えなくなるけどね」


「ミラーリングしてても何もデメリットないんだからずっとしてたら良いんじゃない?」


「でもそれだと自分のステータスが全く伸びないんだ……もう諦めた方が良いんだろうね」


「難しい所だね……でも自分のステータスって何だろ?私も勇者の息吹のスキルに目覚めて一気にステータスが補正されたから、厳密に言うと自分のステータスじゃないよ。レイ君もスキルで伸ばした事になるんじゃない?そう言う意味じゃ同じだよ」


「そうか……そう言う考え方もあるんだね……ありがとう。自信ついたよ」


「どういたしまして。私もたまには役に立つでしょ?」


「そんな事ないよ!ルーナがいるだけで楽しい気分になるから!いつだってお役立ちだよ!」


「なんか変なフォローだね……」


「そうだ、移動しながらこれ試してみようか?」


「それって?」


「召喚タクトだよ。魔竜、魔虎、魔狼、魔鬼。どれにしようか?」


「うーん……一番弱そうなのはどれだろ?魔狼?」


 ルーナが適当に答えるとリンがルーナを睨んだ。


「魔狼が弱い?」


「い、いや、違う違う。狼が弱いわけないよ。魔鬼が弱いかな?」


 ルーナが慌てて言い直した。

 リンはドヤ顔だ。

 そうだよ、リンはずっと人の姿だから忘れてたけど、本来の姿は狼なんだよな。


「じゃ魔鬼でいってみようか。魔鬼って何が出てくるんだろう?ゴブリンとかかな?」


 僕は魔鬼召喚のタクトを掲げてみた。

 背筋がゾクリとして、タクトに大量の魔力が流れ込んだのを感じた。

 瞬間空が荒天し、一筋の雷が目の前に落ちた!

 その衝撃は物凄く、前を歩いていたケインさんとソフィアさんとロンドさんが不意を突かれた形になり、爆風で吹き飛ばされていた。

 雷の着弾点にはクレーターが出来ており、その中心に筋骨隆々とした大柄な男性が立っていた。

 手には大きなハンマーが握られ、身体からバチバチと放電している。


「鬼神トール、古の契約に応じて馳せ参じた。ここは戦場に見えぬが打ち倒すべき相手は何処か」


 ヤバいヤバいヤバい……怖い人来た……。

 

「す、すみません……昨日このタクトを手に入れたので、試しに使ってみたんです……すみませんすみません……」


 僕はペコペコ頭を下げた。

 トールと名乗る男性はギョロリとした目でこちらを見た。

 

「確かにメフィスト公の作りしタクト……」


 男性は目を瞑り、語り始めた。


「遥か以前の話だ。かのメフィスト公がそのタクトを携えて我が居城を訪ねて来られた。メフィスト公が直々に我が居城へ来られたのだ。ワシにとってこの上ない栄誉だった。その上ワシをそのタクトの召喚鬼の目玉として登録したいとおっしゃったのだ。ワシを認めて下さっておる証拠。二つ返事で了承したのだ。その折にメフィスト公はこうもおっしゃった。ワシを召喚するのに要する魔力は桁違いに高く、知る限りではメフィスト公自身でしかワシを呼び出せぬと」


 目を開き、ギョロリとした目でこちらを見た。


「お試しでワシを呼び出したと申したな……お主、いかほどの魔力を持っておるのだ?」


 おじさんはギョロリとした視線をリンに向けた。


「ロキの子、フェンリルか。久しいの。お主、この者と行動を共にしておるのか?」


「はい、レイはつがい」


「なんと!まことか!ロキに知らせておこう。来た甲斐があったわい」


 再びギョロリと僕を見た。


「レイと申すか。ワシでもお主の力は読めぬ。人の子ながら面白い男だ。タクトは流し込む魔力を加減せい。毎回呼ばれては堪らんからの」


 言うや否や地上から空へ雷が飛び上がった。

 雷と共にトールと名乗った男性は帰ったようだ……。


「お前ら……何をやったんだ……?」


 ケインさんが恐る恐る聞いてきた。


「すみません、このタクトを試してみたんです。そしたら今の人が召喚されてきたんです」


「鬼神トールと聞こえたが……少なくともアイテムで気軽に召喚する類の存在ではない……」


 ケインさんが眉間を抑えている。


「トールおじさんは父さんの友人」


「お前の親父はロキだったのか……道理で強い訳だ……」


「トールさんはこのタクトもあのメフィストさんの作品だと言っていました。他のタクトも魔力をいっぱいに流したら化け物みたいな存在が出てきそうです……」


「魔力を絞れと言われていただろう。次からは限界まで絞れ。それでも化け物が出てきそうだが……」


 さっきから黙ってるルーナが聞いてきた。


「もしかしたらレイ君、魔力のコントロールが出来ないんじゃない?」


「そうだね……今のは勝手に吸い取られたように感じたけど……」


「はぁぁぁ……そこからか……まぁ今まで魔力など扱ってきてない訳だから当然と言えば当然だな」


 シトリーの居城までまだまだかかる。

 道すがらケインさんに魔力の絞り方の訓練方法を教えてもらった。

 小さな火球を一定の大きさで指先に維持し続けると言う方法が一番簡単だと言う。

 でも僕はまだ攻撃魔法を持っていない……。


「僕は攻撃魔法を持っていません……訓練するにしても何か覚えてからですね」


 ケインさんはカバンから本を一冊取り出した。


「魔道書だ。開いてみろ。この魔法に必要な能力を満たしていれば習得出来る」


 僕は言われるまま本を開いた。

 フワッと視界が光に包まれてスッと消えた。

 生活魔法をいくつか習得した時と同じだった。


「習得出来たな。今お前が習得したのは火球だ。一度壁に向けて撃ってみろ。いきなりでは難しいかも知れないが出来るだけ魔力を絞ってみるんだ。何度も反復してコツを掴むしかない」


「はい……」


 僕は魔力を絞るイメージをしてみた。

 生活魔法を使う時は何も意識せずとも勝手に魔力切れを起こして使えなくなっていた。

 でも今の僕には有り余る魔力がある。

 しっかり管理していかないと太陽みたいなファイアボールを撃ってしまうかも知れない。

 怖いがやってみるしかない!


「いきます!」


 僕の手の平から太陽みたいなファイアボールが発射され、壁に激突した!

 壁というか崖だったんだけど、直径20mぐらいの穴を開けながら火球は進んでいった。

 穴の上から崩落が起き、やがて火球は見えなくなった……流石に山の向こうまで貫通はしないよね?


「お前ふざけているのか……?お前の全てを乗せた火球に見えたんだが……」


「違います!まだ魔力はしっかり残っているので絞れたと思います」


「今ので絞れているのか……そうか……ふざけている訳じゃないんだな?」


「大真面目です!もう一回いっていいですか?」


「ちょっと待て!山が無くなってしまう。もっと普通の奴にミラーリングの対象を変えてやるんだ。メフィストの魔力でやると本当に山がなくなるぞ」


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