26.鑑定屋
翌日いつものようにリンとルーナとご飯を食べてギルドへ集合すると、ギルドが騒然としていた。
どうやら昨日僕にガラクタを売った人たちがレイという男に騙されて超級アイテムを売ってしまった、返却させるように言って欲しいと言った雰囲気の事をギルドに要求している。
何も騙してないし、双方合意の上での取引だから何も問題ないはず。
「おい、いたぞ!あいつだ!」
誰かが僕に気付き大きな声を上げた。
「てめぇ、こんな事してタダで済むと思ってんのか!」
大柄なおじさんが僕に詰め寄る。
初めに鉄球を売ってくれたおじさんだ。
「クソガキが!昨日買ったもん全部出せ!俺らから買ったもんは今ここで返してもらうぞ!」
言ってることが無茶苦茶だ。
「皆さん昨日ガラクタを売ってくれた人達ですよね。僕が買ったのは確かにガラクタとして売られてたと思いますが」
「しらばっくれんじゃねぇ!俺たちから買ったもんが超級アイテムとしてギルドへ売りに出された事が新聞に載ってるんだよ!ガタガタ言ってねぇで出せよ!」
「では聞きますが、あなた達はどうしてそれを超級アイテムとして売らなかったんです?」
「鑑定出来ないからに決まってんだろ!鑑定出来なけりゃ価値はわからねぇだろうが!」
「あなた達が今後も手に入れるであろう鑑定不可のアイテム。僕が鑑定しなければガラクタのままですね。」
「あぁ?何言ってやがんだ?」
ハッとした顔をして半数近い人はスッと下がって様子見に入った。
「察しの良い方は気付いたみたいですよ。有料になりますが、今後は依頼が有れば鑑定してあげても良いと思っているんです」
「な……んだと……?」
「高度な偽装アイテムは普通の目利きでは鑑定出来ない。その事は皆さん今回のことで良くわかったと思います。高度な偽装を看破出来るのは僕だけです」
みんな僕の言葉の続きを待っていた。
「もちろん何の偽装もされていない正真正銘ガラクタを超級かも知れないと一生大事に持っておいても良いですけど、鑑定して換金出来るルートが有れば皆さんの冒険も楽しみが増えるんじゃないかと思いますけどね」
詰め寄っていたおじさんも黙ってしまった。
「昨日店頭に並べていなかったガラクタを今持ってる方はいませんか?鑑定は前金で一点当たり五千ギル。ガラクタが超級に変わるかも知れません。クジだと思って鑑定してみたらいかがですか?」
みんな心当たりを思い出しているようだ。
「お、俺……運がねぇからガラクタいっぱいあるんだよ……割と高難度の遺跡からの取得物だから流石にガラクタとして売っちまうのは忍びない。けど使い道もねぇから鞄の肥やしになってるんだ……見てくれねぇか?」
おじさんは急に態度を変えた。
「構いませんよ。一点当たり五千ギルです。ただし、本当にガラクタであっても返金は出来ません」
「あぁ、当然だ。ほとんど捨て金になるであろう事は理解した上で頼む」
ケインさんが口を挟んできた。
「レイ、五千ギルは安すぎだ。魔力の高い鑑定屋は一点当たり一万取る所もある。お前の神の瞳は100%偽装を見抜ける。一万以上はつけておけ」
「皆さん、こちらにいるのは皆さんも良くご存知のケインさんです。ケインさんから鑑定料の事でアドバイスがありましたが、こちらから提案した手前、今日一日は一点当たり五千ギルで鑑定します。明日以降は相場を見て価格設定し直します」
おじさんが俺が一番だと言わんばかりに鞄からアイテムを引っ張り出した。
「これだよ!見てくれ!この五点だ。二万五千ギルも先払いだ」
「次は私!私も鞄の肥やしがいっぱいあるんだ!手持ち三万ギル分頼む!」
「俺も頼む!」
「私も!」
「僕も!」
鑑定に時間をかけたくなかったので自分の前に並べてもらい、個数分の前金を受け取った。
一気に確認して、偽装されている物を順に看破していった。
みんな「これは!」と思う物を出していたので偽装されていたアイテムは全体の1/4に登った。
歓喜の声、怨嗟の声、入り混じっていたが、概ね満足だろうと思う。
「レイ殿、さっきは失礼な態度を取って申し訳なかった!また見てもらいたいもんが出来たら声をかけるよ。ありがとう!」
おじさんは人が変わったように礼儀正しくなった。
このおじさんのアイテムは五点中二点が超級に変わったんだ。
結構レベルの高い冒険者さんかも知れない。
他の人達も皆お礼を言いながら去っていった。
「レイ君、いくら稼いだの……?」
「五十万ギルぐらいかな。百点ぐらいあったと思う」
「今の数分で五十万ギル……」
「やはりレイ殿のスキルは汎用性の塊……如何様にも生きて行けそうです」
「こんな一気に稼げるのは今回限りですよ。今回は人が集まってたので」
「馬鹿言うな」
ケインさんがピシャリと言った。
「この事は明日の新聞に載るだろう。世界中からガラクタを持って人が押し寄せるぞ。お前の鑑定は100%だ。しかもこれは!と思うガラクタからの偽装アイテムの発見率の高さ!流石にあんなにあるとは思わなかった。最低でも二万は取れ。おい、記者は近くにいるか!明日以降の鑑定料は一点当たり二万ギルだ!この事を記事にするなら書き添えておいてくれ!」
すすっと寄ってくる女性がいた。
いかにも記者という風貌をしている。
「記者のフェリスと申します。今後の鑑定料は一点当たり二万ギル。個数制限はありませんか?鑑定を依頼する場合の連絡先などは……?」
「個数制限はありません。王都にいつまでいるかわかりませんが、王都にいる限りはギルドへ通うと思います。ギルドで見かけたら声をかけてください」
「他に発信したい事はありませんか?」
「特には」
「では……」
フェリスさんはスッと人混みに消えていった。
しばらくモニタリングしておこう……。
「一点当たり二万取ったら今ので二百万ギル……冒険者する必要無くない?」
ルーナが驚愕の表情で僕を見た。
「副業だよ……小遣い稼ぎとしては良いんじゃないかと思って」
「鑑定屋からクレームが来るだろうな……奴らの商売あがったりだろう……」
「でも二万も取るとこはないでしょ?僕の鑑定は高いから棲み分け出来ると思いますが……」
「お前始め五千ギルでいこうとしただろう?五千ギルなら全てお前に殺到していたぞ?」
それから僕は新聞記事を読んだ。
魔王タロス討伐、そして神の瞳。
かなりのスペースを割いて記事が書かれていた。
相当注目されている事がわかる。
「今日も魔王討伐を狙ってみよう。これだけ注目されると他の勇者候補が動き出すかも知れん。気を引き締めていくぞ」
「はい!今日こそは私が仕留めて見せます!」
僕たちは魔王討伐クエストを確認していった。
「魔王シトリー……冒険者レベル65。このクエストは完全な討伐で無くとも良い。シトリーは居城を構え、軍団を持つ魔王だが、現在までに二度冒険者との交渉で居城を移動している。交渉の余地がある高い知能を持った魔王だ。移動させる事でクエストクリアとなる」
「軍団を持っている……どれぐらいの戦力なんでしょうか?」
「未知数だ。それを明らかにした冒険者はいない。未踏区域を開拓する為に退いてもらう形だ。二度交渉に成功している実績があるだけに可能性は十分ある」
「城を再建築する事を考えると、良く二回も退いてくれましたね」
「未踏区域には数多くの城が存在すると言われている。空き城も沢山あるんじゃないか?」
「そのシトリーって魔王とは戦闘にならないですか?」
「交渉次第では決戦もあり得る。勝算は充分あると踏んでいる」
「シトリーなら大丈夫。友達」
リンがサラッと言った。
「えっ!」
「おい、それは本当か??」
「シトリー、良い子。リンが行けば戦闘にならない」
「よし、では今日はシトリーで行こう。違う城へ移動するように交渉してくれ」
「わかった」
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