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24.タロス

 タロスがいるとされているローディアの神殿はケインさんも行ったことが無く、少し離れた場所から徒歩で向かう事になった。


「ここからなら二時間程で到着するはずだ。少し早足で向かうから遅れるなよ」


 そう言ってケインさんは歩き出した。

 僕は今日はずっとメフィストさんのステータスをミラーリングした状態でいる。

 このスキルは一度ミラーリングすると、解除するまでそのままでいられる。

 継続するのに特別何も必要ないので、このままいても何もデメリットはない。

 それならばこのままでいいと思っている。


「到着する前に一応伝えておく」


 ケインさんが語り始めた。


「タロス討伐の冒険者レベルは60だ。だが、60あれば討伐出来るという訳ではない。60あれば死ぬ可能性が低いという事だ。タロスはローディアの神殿を守るように配置されている。つまり入ろうとする者を排除する役割を持ってそこに存在している。入ろうとしなければ襲っても来ない。入ろうとして襲われても、神殿から離れると追ってこない。つまり手にあまると思えば撤退すれば良い。そういう特性もあって低めの60と設定されている。今に至るまで誰にも討伐されていない事からわかるように、タロスは強敵だ。ステータスだけでは測れない強さがある。決して油断するな」


 ケインさんはそう言って立ち止まった。


「あれがローディアの神殿だ。正面に立っているのが見えるか?あれがタロスだ」


 確かに見える。

 身長は三メートルぐらいだろうか。

 思ったより大きい。

 見た感じは動くとは思えない。

 片手に剣を持ち、もう片手に盾を持っている。

 オーソドックスな片手剣スタイルだ。


「私が盾役をやる。ルーナは攻撃してみて」


 リンがルーナにも声をかけた。


「わかった!死ぬ気で行くよ!」


 ケインさんがルーナとリンにバフをかける。

 ロンドさんは二体のゴブリンキングをゾンビ化した。

 単純に強いゴブリンキングはこういう物理で押すべき敵には有効だろう。

 ソフィアさんはモーニングスターメイスを構えながら回復魔法をいつでも打てるよう準備していた。

 僕はリンの背後少し離れて見守っている。

 戦闘が始まる瞬間、僕の視界が何か変わった。

 周りの動きが急激に遅くなる。

 時が止まったような妙な感覚に襲われた。


 リンがタロスに近づき初撃をタロスに取らせた。

 タロスの動きも非常にゆっくり見える。

 それに合わせてガードするリンの動きもゆっくりだ。

 タロスの攻撃の戻りに合わせてルーナが剣を出す。

 タロスは紙一重でかわし、一歩下がる。

 リンが一歩間合いを詰めて左下から右上に爪を振り抜く。

 タロスの右胸を捉え一部えぐり取ったが、傷口はすぐに塞がった。


「タロスはいくら傷ついてもたちどころに再生する。恐らくどこかに核があるはずだ!」

 

 ケインさんの声が響く。

 核……。


 タロスが反撃に出たがまたリンが受け止める。

 さっきよりも鋭いタイミングでルーナの剣がタロスを襲う。

 ガキンという鈍い音を立ててタロスの左肩に剣を突き立てる。

 タロスはまた一歩後退したが、ルーナの剣がタロスの肩に刺さったままだ。


「ルーナ、離しちゃダメ!回収出来なくなる!」


 リンは下がるタロスに一撃入れながらルーナの剣を引き抜いた。


「ごめん、次は気をつける!」


 ルーナに剣を渡しながらリンがタロスを牽制した。

 

 二体のゴブリンキングが両サイドから攻撃を仕掛けるが、タロスは剣と盾で攻撃を防ぎ、上手く逃れた。

 

 こんな事があって良いんだろうか……みんなの動きが止まって見える……これがメフィストの力……。


 僕も力を試してみたくなったが、もう少し様子をみる事にした。

 ルーナも必死に頑張っている。


 ゴブリンキングが同時に攻め立て、それに合わせてルーナも突きを繰り出している。

 核を破壊する為には斬撃ではなく、貫通攻撃で無いといけない。でもなかなか深くは突ききれないようだった。

 ゴブリンキングもいくつか攻撃を当てているが、ダメージにはならず、瞬時に再生されていた。

 リンは手を出さず、危険な攻撃がくる瞬間だけ受け止めていた。


「貫通力が足りないか……レイも少し参加してみたらどうだ?」


「わかりました!リン、僕も出る!」


 僕はリンに声をかけた。

 リンは一瞬僕を見てスッと一歩下がった。


 タロスは僕をみた。

 僕の目にはタロスが止まって見える。

 核の位置もしっかりわかる。


 タロスが踏み込んで剣を出してきたが、その剣を手で掴んだ。

 タロスは瞬時にそれ以上動かなくなった剣を捨て、反対の手に持つ盾を打ちつけてきた。

 僕はこちらに迫る盾を逆に引き込んだ。

 盾を引かれたタロスは体勢を崩し、身体が開いた。

 僕は剣を宙に置いたまま核がある部分を爪でひと突きした。


 剣はカランと音を立てて落ち、タロスは動きを止めた。

 正確に核を突けたようだ。


「えっ……?」


 ルーナが声を漏らした。


「レイ、信じられないぐらい強くなった」


 リンが後ろから声をかけてきた。


「タロスの動きが止まって見えるんだ」


「レイ君……」


「レイ……ルーナにも見せ場を残してやらんか」


「はい、すみません。ルーナごめん、どうしても試してみたくなったんだ。次から気をつけるよ」


「いや、別に良いんだけど……強すぎない……?」


「メフィストの力を使ったんだ。核の位置もわかった。スキルが無くてもこんな強さってヤバいね……」


 ダメだ……自分が興奮しているのがわかる。

 今まで戦闘で活躍出来た事なんてなかったのに。

 でもこれは努力で手にした強さじゃない。

 人の力を借りてるだけだ。

 自分の力じゃないとしっかり理解しておかないと、どこかで大きなしっぺ返しを喰らうかもしれない。

 

 動かなくなったタロスは次第に白変していき、崩れ落ち、砕けた青銅色の玉が残された。

 

「これが核のようだな。色も同じだ。よく核の場所がわかったな」


「サーチ出来たのでバッチリわかりました」


「そうか……お前にはそれがあったな……」


「よし、タロスは無事討伐出来た。ローディアの神殿を探索してみよう。まだ誰も踏み入った事のない神殿だ。何があるのか楽しみだな!」


 ケインさんが言い、ルーナとリンが先導して入っていった。


 神殿内部に生命反応はなかった。

 罠の類もないようだ。

 真っ直ぐに伸びる通路の奥に台座があり、そこに鈍く光る玉が鎮座していた。さっき見た核の完全な姿だ。

 台座には文字が刻まれているが、ケインさんでも解読は困難なようだ。


「これは……タロスの核だな……難解で一部しか読む事が出来んが、要約するとこの核に魔力を通す事で魔導人形タロスを生成する事が出来るようだ」


「これはとんでもないお宝だわ……タロスを戦力として手に入れる事が出来るという事よね」


「戦力化した後どうなるのでしょうか?魔力供給を止めれば再度核に戻せるのでしょうか?」


 ロンドさんが疑問を呈した。

 確かに、一度生成してしまうともう核に戻せないとしたら、使い所は難しい。本当にいざと言う時の切り札だ。


「待て、少し時間をくれ。この文字を解読してみせる。恐らくその辺りのことが書いてあるはずだ。他に何かないか探索していてくれ」


 僕は核をブラウズしてみた。

 ロンドさんの予想とは少し違って、魔力は初めに供給するだけで自然界から魔力を吸い取りずっと動くようだ。止める時には魔力を供給した者が止める意思を持って触れる事で核に戻る。エゲツないよね……どんな技術が使われているんだろう……。

 僕はブラウズで知る事が出来たが、ケインさんが頑張って解読しているので黙っている事にした。


 しばらくしてケインさんが同様の内容を文字から読み取り、引き上げることになった。


「テレポートするぞ」


 僕たちはギルド前へ戻り、討伐報告を済ませた。

 タロスの核の事もギルドに報告したが、売らずに持っておくことにした。この世に二つとないお宝だけに手放す事は出来ないよね。

 明日の新聞が楽しみだ。


 ギルドから出た時点でまだ昼過ぎだった。

 午前だけで魔王討伐してしまうなんてとんでもないパーティだよ……。



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