22.思いがけない名品
「えっ?!」
「何っ?!ヨルムンガンドが弟だと??」
一緒にいたケインさんもすごく狼狽えていた。
「リン、転生した。転生前はヨルムンガンドの兄だった」
「リンって転生したの?」
「そう。転生してすぐレイと出会った」
「そうだったんだ……ヨルムンガンドさんは強いの?」
「リンなら勝てる」
「ちょっと待て……魔王ヨルムンガンドに勝てるのか……強いとは思っていたがそこまでだったか……」
「魔王ヨルムンガンドというのは一番強い魔王なんですか?」
「違う。いる場所が判明していて、いつでも討伐に向かえる魔王の中で一番強いと言われているだけだ。どこにいるかわからん魔王の方が圧倒的に多いからな。居場所はおろか、存在すら知られていない魔王も相当数存在すると言われている」
「そう、リンより強いのいっぱいいる」
「未踏の地を攻略していると稀に魔王の住処や居城を発見する事がある。その場所を攻略しない限り先へ進めない地形になっている事が多いため、居を構える魔王はこうして討伐クエストとして張り出される事になる訳だ」
「魔王討伐クエストは王都でも確認出来るわよ。でも一定のレベルを超えている冒険者のみが閲覧可能という形になっている。王都には一気に名を売りたい一心で魔王に手を出して全滅する冒険者が多かったから、現在のシステムが導入されているの。イタズラに手を出すと思わぬ反撃を喰らって街や村が被害を受ける事もあるの」
「こちらの街ではこうして張り出しても大丈夫なんですか?」
「現状パースは攻略組が一番多い街だ。自分の限界に挑み続けているだけに、手に負えるか否かの判断ぐらいつけられる。馬鹿はここで生きられんからな」
王都は冒険者の数は多いけど、質に関してはバラツキがある。
一方パースには自己管理がしっかり出来る冒険者が揃っている。
簡単に言うとそう言う事なんだろう。
僕たちはクエストを見終わって道具屋さんに戻った。
ちょうど査定も終わっており、買い取りが完了した。
「ここ数日溜めていたスポナーも一緒に売却したとはいえ、相当な稼ぎになったな。山分けしても一人頭500万ギル。ルーナ、もう足りてしまうんじゃないのか?」
「これで足りました。今日一日でクエスト報酬とアイテム売却で600万ギルですよね……ちょっと信じられないです」
「価値のある素材をピンポイントで回収出来るレイがいてこそだな。今日取ったオリハルコンをまたガラムのとこに持っていってレイの剣も作っておくか?」
「僕の剣は100%じゃなく、必要最小限で打ってもらって、僕とルーナの鎧や盾も作りたいです」
「それがいいだろう。レイもミラーリングを使えば戦闘に参加できる事がわかった。魔王もレイから手が離せるなら飛躍的にパーティの戦力が上がる。是が非でもレイを戦力化すべきだろう。上手くやればレベル60ぐらいまで一足飛びに上がれるかも知れない」
「かつて勇者パーティとして活動されていた頃の冒険者レベルはどのぐらいだったんですか?」
「俺達はレベル68だった。当時俺たちが攻略組のトップだったが、今の攻略組のトップは75だと聞いている」
「パーティ全体の平均ですか?」
「そうだ。俺は70だ。ソフィアが65だったか?ロベルトが69。ジークが68だったか」
「ケインさんが一番高いんですね」
「俺が一番早く冒険者になっていたからな。積み上げが少し多かっただけだ」
僕は17、ルーナとリンは12になっていた。今日のレッドドラゴン討伐で7上がった事になる。
「お前達は今17、12、12か。ロンドが42になっている。ソフィアは65、俺もそのまま70。今のパーティレベルは……36か」
「数字だけ聞くとまだ全然ですね」
「潜在的な強さは攻略組の上位に食い込めるだろう。お前らのレベルはすぐに上がるだろうからじきに数字に現れる」
それから僕たちは王都のガラムさんの所へ行った。
店頭まで剣を打つ音が聞こえていた。
「いらっしゃい。店主は今集中してるから代わりに伺います」
そう言いながら若い男の人が出てきた。お弟子さんだろうか。作業中はこの店員さんが御用聞きをするようだ。
「いや、出直そう。ケインが来たとだけ伝えてくれ」
「承知しました。伝えておきます。わざわざ来て頂いたのに申し訳ございません」
「いや、それだけ集中してくれているのは依頼人として嬉しい事だ。な、ルーナ」
「そうですね!楽しみです!」
ガラムさんの工房を出てケインさんが武器屋を覗いてみる事を提案してきた。
僕の持ってる剣は鉄の剣……せめてもう少しマシな剣を用意すれば明日から戦闘に参加出来る。僕は是非にとお願いした。
「もう一度パースへ飛ぼう。この時間ならまだやってるだろう」
今日二回目のパースだ。
「この武器屋は買い取り金額が良いからダンジョン産や遺跡発掘で出た物が良く持ち込まれる。掘り出し物がある事も珍しくない。良いのがあると良いんだが」
お店の中には時間が遅い為かお客さんの姿はなかった。
「ファッジ、まだやってるか?」
「おぉ!ケインじゃねぇか!えらく久しいな!王都へ引っ込んだって聞いてたが……」
「現役復帰してな。今日はこいつの剣を見にきた。なんか掘り出しもんはないか?」
「昨日持ち込まれたのがあるぜ。双剣なんだがかなりの業物だ。使えるなら今一番おすすめ出来るのはコイツだな」
「双剣……レイ、お前双剣は使えるか?」
「使った事ありません……」
「レイ、爪を買えば良い。使い方リンが教える」
「爪か……お嬢ちゃん爪が使えるのかい?」
「使える。爪欲しい」
「あるにはあるが……そっちの兄ちゃんにはちと高過ぎるかも知れんぞ」
「ファッジ、こいつは金持ちだ。一度見せてやってくれ」
「そうか、じゃ一度見てみてくれ。これなんだが」
出された爪をリンが手に取った。
「ダメ。この爪すぐ折れる。リンの力に耐えられない」
「おい、そいつが折れる訳ねーだろ。ミスリルが30%入ってんだ。おかしな事言うな」
「いや、ファッジ、この子が折れると言えば本当に折れる。この子はお前の想像を遥かに超える力を持ってるんだ」
「ケイン……よく考えろ。ミスリル30%の爪が折れる訳ねーだろ?」
「もっと良いのはないか?」
「待て、これの上って言うとオリハルコンになるぞ。あるにはあるが5000万ギルの超級品だ。マジで言ってんのか?」
「それを出してくれ」
「お前ら……俺をからかうつもりなら帰ってくれ」
「違います。僕はそのお金を用意出来るので見せてください」
「用意出来るだと……?まぁいい。見るだけならタダだ。見せてやる」
そう言ってファッジさんは奥にしまわれていた木箱をだしてきた。
「こいつはとある遺跡から発掘されたもんだ。オリハルコンが使われている」
リンが手に取った。
「これは良い爪」
僕はブラウズしてみた。
「メフィストの爪……オリハルコン30%、ミスリル70%、攻撃力50%上昇、速さ30%上昇、クリティカル率30%上昇、装備者は中級体術を得る……」
「お、おい!なんだその情報は!!俺も鑑定したががこの爪にそんな情報はなかったぞ!」
「メフィストに封印されていたんじゃないか?ファッジ、この爪を5000万ギルで買う。良いな?レイ」
「はい、買います。5000万なら安く感じます!」
「待てよ!まだ売るとは言ってねぇだろうが!メフィストっていや最強クラスの魔王の名だ!そんな名品5000万じゃ売れねぇ!」
ケインさんが大きなため息をついた。
「パースにその人ありと言われた武器商人ファッジが売り渋りか……価値もわからず値を付けたが、良いもんだとわかって値を釣り上げるつもりか?お前も老いて欲に塗れちまったか……」
「ぐっ……価値もわからず値をつけた……事になるのか……クソッ!いい、わかった。5000万だ。持っていけ……」
僕はカードで支払いを済ませた。
「こいつ……本気で一括払いしやがった……何もんだ……?」
「レイだ。その内名が知れ渡るだろう。楽しみにしておけ」
そう言いながらケインさんがファッジさんの肩をポンポンと叩いていた。
「お前らパーティを組んでいるのか?」
「あぁ、このレイがリーダーだ。こっちは勇者候補のルーナだ。覚えておいてくれ」
「レイ……それよりメフィストの爪……忘れたくても忘れられねぇよ……」
僕たちは宿へ戻ってきた。
「思いがけず名品を手に入れたな。さっき読み上げた内容は本当なんだろう?」
「本当です。アイテムに鑑定させないような封印って出来るもんなんですか?」
「あぁ、出来る。鑑定難度は施術者の魔力依存となるがな。こいつはファッジクラスの武器商人でも鑑定出来なかった事からメフィスト本人の施術とみて良いだろう」
「ガラクタ市場でもレイ殿がブラウズして回れば大変なお宝が眠ってそうですね」
「それは大いにあり得る。価値のわからん物が大量にあるからな。ルーナの支払いの目処もついた訳だし、明日はクエストを早めに終えて見に行ってみるか?」
「面白そうじゃない。レイならではの遊びと言えるわね」
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