20.超越者
目の前にそれぞれが注文した料理が並び始めた。
ルーナの戻りは時間が読めないので先に頂くことになった。
「今日のクエストは何の問題もなかったな。あれでレベル帯30-35。明日は40-45を受けてみよう。40ともなると生半可なクエストはなくなる。どれも高難度な物ばかりだ。魔王よ、レイを守ってやってくれよ」
「大丈夫。レイは必ず守る」
「今日のクエストが楽に感じたのはゴブリンがロンドのスキルと相性が良過ぎたというのもあるわ。他のクエストならもう少し手こずるかも知れないわよ」
「ルーナの剣もおそらく十日ほどはかかるだろうし、その間は適正レベルを見極めながらスポナー除去を続けよう」
リンがあっという間に食べ終わってしまったのでもう一人分追加注文した。
「リン、遠慮しなくて良いよ。食べたいだけ食べてね」
「人のご飯、美味しいからいくらでも食べられる」
「リンの言葉が流暢になってきたね。会話をしながら言葉を覚えていってるの?」
「そう、使える言葉増えてきた。もっと覚えてもっと話せるようになりたい」
そんな事を話しているとルーナが戻ってきた。
「おかえり、打ち合わせは無事に終わった?」
僕は声をかけた。
「終わったよ。十日欲しいって。それまではこれを使えって」
ルーナは見慣れない剣を僕に見せてきた。
「ミスリルだな。それはそれで非常に価値のある物だ。つなぎとしては申し分ない」
「この剣、握ると魔力を吸い取られる気がします」
「ミスリルは魔力を込める事で強度が上がり、切れ味が増す。エンチャントとの馴染みもいい。オリハルコンの下位互換と言った所だ。普通はミスリルを使い込んで、より高みを目指すためにオリハルコンを希望するんだがな」
「今日依頼した剣の支払いっていくらぐらいになるでしょうか?」
「一番大きな材料費がないからそこまで大きな金額にはならんだろう。それでもオリハルコンの鍛造はかなりシビアだと聞く。一千万ギルぐらいは覚悟しておいた方が良いだろう」
「それぐらいなら大丈夫ですね。良かったです」
「馬鹿言うな。それはお前の個人資産だろう?ルーナの個人資産を確認したのか?これはルーナの剣だ。パーティの戦力に直結するから百歩譲ってオリハルコンを提供するまでは良いとしよう。だか、鍛治費用は自分で払わなければダメだ。ルーナはお前の部下じゃない。対等な仲間だ。お前が与えるんじゃなく、自分で用意するんだ。ルーナもその方が良いだろう?」
「はい!その方が良いです。十日あるので頑張れば足りると思います」
「剣が出来上がるまでにルーナが一千万貯められるようにクエストと並行してレアアイテム収集もやった方が良いだろう。俺のテレポートで行ける場所ならば時間もかからない。今高く買い取りされている物を調べておいてやるから明日からどんどん採取していくぞ」
その後ルーナとリンの食事を見守り、その日はお開きとなった。
◇
翌日僕は早く目覚めたので食堂へ降りてみた。
まだ食堂はやってないようだ。
外を見ると屋台街はもう営業しているようだ。
僕は屋台街へ行ってみることにした。
宿を出ようとしてすぐにリンが追いかけてきた。
「リンおはよう」
「レイどこいくの?」
「早く目が覚めたから降りてきたんだけど、まだ食堂開いてないから向こうの屋台を見に行こうかと思って。リンも行く?」
「リンも行く」
僕たちは二人で屋台街の方へ歩いていった。
屋台っていい匂いがするから通る度に何か食べたくなるよね。
「この匂い、寝ててもずっと気になってた」
「リンの鼻なら宿にいても匂うんだ?」
「町中に匂ってる。人の街、どこにいても美味しそうな匂いしてる……」
リンにとってそういう認識だったのか……もっと食べさせてあげないと可哀想だな。
「どれでも食べたいの食べていいよ。昨日のクエストではリンの分け前もあったから、いくらでも食べられるよ」
リンは初め遠慮がちに食べていたが、途中から素が出てきたのか、すごい食べっぷりになってきた。
この小さい体のどこに入っていくんだろう……?
「あんた……あねさんとこの若い衆じゃないか!」
振り返るとハーバルであった冒険者さんだった。
確かギースさん。
「おはようございます。ギースさんでしたね」
「名前まで覚えてくれたとはありがたい!もう王都へ来てたんだな。しばらく滞在するのかい?」
「鍛治屋さんに剣を発注したので、それが出来上がるまではいるつもりですよ」
「あねさんも一緒かい?」
「ソフィアさんとはパーティを組んでいるのでもちろん一緒ですよ」
「聖女様とパーティ……なんと羨ましい……」
「レイがパーティのリーダー」
リンが補足した。
「えっ……あねさんがリーダーではなくて?レイというのはあんたの事か?確か神の瞳と呼ばれていたか……あんた……そこまでの使い手だったのか……」
「神の瞳はやめて下さい。レイで良いですよ」
「確か王都で賢者のケイン様と会うと言ってなかったか?会えたのかい?」
「ケインさんとも合流出来ましたよ。あと、あの時の死霊魔道士のロンドさんもパーティに加わりました」
「賢者ケイン様もあの死霊魔道士もあんたのパーティに加わったのか……?」
「そうですね。あとはルーナという勇者候補もいます。全部で六人パーティです」
「勇者候補も……そのパーティのリーダーがあんただと……?俺は大きな誤解をしていた……」
「誤解とは……?」
「あねさんのパーティに参加している売り出し中の若い衆だと思っていた。そこまでの超越者だとは知らなかったんだ。無礼な物言いをしてすまなかった」
「そんな!全然大丈夫ですよ。そのままで大丈夫です!」
「謙虚な所も凄みがある……俺はこれからあんたの事をゴッドアイと呼ぶよ」
「絶対やめて下さい!あっ、連れが起きたみたいなんで僕たちは行きますね。またどこかで!」
ルーナが起きて部屋を出たみたいだから僕たちは宿に戻った。
「ここにいて仲間が起きた事がわかるのか……まさにゴッドアイ……」
二人を見送りながら呟いた。
あのレイという青年からはそれほど超越者のオーラを感じない。だが一緒にいた少女は目を合わせる事が出来ない程の得体の知れなさを感じた……。
相手が自分より遥か高みにいる場合、相手の力が測れずに勝てない勝負を挑んでしまう事があるというのを聞いた事がある。
自分より強いか弱いかの判別も出来ないなんて事ある訳ないと思っていたが……。
俺にはあのレイという青年は大した事がないように感じた。だがあの青年のパーティメンバーはいずれも超越者……あの得体の知れない少女ですらあの青年に付き従っていた。あの青年が普通の青年のはずがない……遥か高みにいるという事だろう……ゴッドアイ……とんでもないのが出てきたもんだ……。
◇
僕たちはクエストを受注してフィールドへ来ていた。
今回の敵は物量じゃなく単体。つまりめちゃんこ強い敵って事だ。
「今回の相手はドラゴンだ。炎を纏う竜、レッドドラゴン。ブレスが特に危険だが、魔王、ブレスからレイを守れるか?」
「結界を張る。大丈夫」
「だそうだ、レイ、お前は魔王から離れるな。ロンド、お前のアンデッドも火には弱いだろう?ゴーレム系は出せるか?」
「出せます。炎耐性のあるファイアゴーレムを出します。短時間ですがタンク役はファイアゴーレムが引き受けます。三体出せますので、三体目が朽ちる前に勝負をかけていただけますか?」
「私がアタッカーをやります!炎耐性魔法をかけてもらえますか?」
「今から全員にかけるわ。でも完全耐性じゃないから直撃に気をつけて」
「俺は中距離からアイススパイクを連射する。ヘイトがこちらに向かないようしっかり管理してくれ」
「わかりました!」
「ブレスが来たらマジックシールドを張るから俺のそばに来い。いいな!」
「はい!」
「じゃいくぞ!あの崖の下だ!一気に距離を詰める!捕まれ!テレポート!」
次の瞬間僕は燃える竜の前にいた。
圧倒的な熱量で喉が焼けるようだ!
僕は思わず口を押さえた。
「結界を張る。レイ、大丈夫?」
「ごめん、熱でやられた……炎耐性をかけてもらったのに……こんなのほんとに倒せるの?」
見るとすでにロンドさんはファイアゴーレムを飛ばしドラゴンの動きを封じていた。
ルーナはミスリルの剣で確実にドラゴンにダメージを与え、ケインさんはアイススパイクを連射していた。いや、連射というか、ほとんど繋がって見える……。
ソフィアさんはリジェネという持続回復魔法をルーナにかけ、ルーナのライフを管理していた。
ダメだ、僕はなんの役にも立ってない!
リンの結界に守られて何も出来ずにただうずくまってるだけだ。
僕がいるからリンは戦いに参加出来ない。
こんなんでこの場に居ていいんだろうか……。
悔しい……ただのお荷物じゃないか……。
アルバートさんは戦闘系のスキルなんてそんなに良いものじゃないと言ってたけど、ここにきて戦えない事が堪らなく辛かった!
そんな僕の思いに呼応するかのようにスキルが降りてきた。
「スキルが増えた……」
僕は思わず呟いた。
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