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18.ギルド本店

「ソフィア、俺のスキルを封じる為にパーティを結成して旅を始めた訳じゃないだろう?何か旅の目標のような物はあるのか?」


 ケインさんがソフィアさんに問いかけた。

 

「そもそもこのパーティのリーダーはレイよ。レイとリンちゃんがパーティを組み、このルーナさんが加わった。この子は勇者候補よ」


「ルーナ……その名はロベルトから聞いた事がある。有望な勇者候補だと言っていた。君がそうか……」


 ケインさんがルーナを真っ直ぐに見つめ、ルーナはレジストローブで体を隠した。


「も、もう大丈夫だとわかっててもつい……」


「ケイン、一度失った信頼を取り戻すのは大変よ。頑張ってね」


「俺は信頼を失ったのか……」


 ケインさんがショックを受けているが話は続いた。


「ルーナさんが勇者として成長出来るよう、後見人として私はパーティ入りしたの。言ってみればオブザーバー参加よ」


 オブザーバーとは観察者や傍聴者という意味だ。

 

「その割にはえらく張り切ってるじゃないか……」


「このパーティ、面白そうでしょ?」


「あぁ、このパーティは面白そうだ。それはまちがいない。そっちの男は……ロンド……死霊魔導士とはまた珍しいな」


「彼は私の旅に同行を希望してこのパーティに参加しているの。相当な実力者でしょ?」


「あぁ、ちょっと見かけないステータスだ。これ程の男が無名でここまで来ている事に驚く」


「私は二十歳から八年間ファーランドでダンジョンに潜っておりました。ダンジョン専門でしたので、大きな討伐戦や未踏開拓など名が売れる事はしてきておりません。もとより名を売るつもりはございませんでしたので」


「ファーランドは冒険者のレベルが高い。しかもストイックなダンジョン専門がやたらと多い。君もそのクチだな」


「その通りです。到達階層が伸びる事こそ生き甲斐のような生活でした。私はソロでしたので行くも戻るも自分の意思。決して誰かのせいには出来ませんので、到達階層が伸びれば、それすなわち自分の成長。ほとんど病気です」


「いや、その気持ちは俺にも良くわかる。自分の限界を伸ばす……俺が要職に就かず、こうして研究に没頭していたのも、ある意味自分の限界を伸ばしたい一心だった。職についてしまえば仕事に追われ成長する機会を失ってしまうからな」


 ケインさんとロンドさんは気が合いそうだ。

 でもこのパーティはすご過ぎる。

 勇者、魔王、聖女、死霊魔導士に賢者。

 そこに僕がいて良いんだろうか……。


「レイと言ったな。お前がこのパーティの(かなめ)だ。お前の面白さに俺は動かされた。自信を持て。お前は世界を変えるぞ」


 ケインさんには僕が考えていた事はお見通しだった。

 

「しばらく王都にいるのか?」


「まだ決めていませんが、僕は王都が初めてなので数日滞在出来たら良いなと思ってます」


「それが良いだろう。このパーティで本店のクエストをいくつかこなしてみよう。特に塩漬けを中心にな」


「良いわね。ルーナさんの勇名も稼げるわね」


「勇名?」


 僕は勇名という言葉がよくわからなかったので聞き返してみた。


「勇者とは国王から任命されるのよ。じゃぁ国王は何を持って勇者に任命するのか?その時の指標になるのが勇名よ。名を売るのと同じね。有名な勇者候補が勇者に任命されるのよ」


「私の勇名なんてまだゼロだからこのままじゃいつまで経っても勇者にはなれないの。頑張らないと」


「今日はまだ時間がある。ギルドへ行っていてくれ。俺も旅の準備をしてすぐに追う」


 ケインさんの提案で僕たちはギルドへ向かう事になった。



「ここがギルド本店……」


 ギルド本店はとんでもない大きさの建物だった。

 レイザールのギルド十軒分ぐらいありそう……。

 中へ入ると人の多さに驚いた。

 そしてクエストを張り出す掲示板の数も半端じゃない。

 

「クエストを見るだけで半日かかりそうですね……」


「王都のギルドは管轄が広い上に、地方の冒険者では手に負えない高難度クエストも集まってくるから自然と件数が多くなるの。でもクエストは難易度別にエリア分けされているから全部は見る必要ないのよ。こんなの全部見てたら日が暮れるわ」

 

「とりあえずレベル30-35辺りのクエストから見ていきませんか。慣らしにはその辺りが適正でしょう」


「いきなり30ですか……?」


「レイは非戦闘員だから心配しないで。ルーナさんはかなりの腕前だし、リンちゃんもいる。何も問題ないわ」


「レイさんには私のアンデッドを護衛に付けましょうか?」


「レイはリンが守る。指一本触れさせない」


「ありがとう、リン。頼りにしてるよ」


「とりあえずスポナー除去系のクエストが良いかもね。レイの力が発揮出来るし、難度が高いからルーナさんの勇名も稼げる。一石二鳥よ」


「確かに。スポナー除去は狙って出来る物ではありませんから、それを狙ってこなせば一気に勇名が広がるでしょう」


 ソフィアさんの先導でレベル30-35のクエストが張り出されている辺りに来た。


「手分けしてスポナー除去クエストを探すわよ。レイ、迷子にならないでね」


「さすがに迷子にはならないですよ……」


 僕とリンとルーナ、ソフィアさんとロンドさんの二手に分かれて探す事になった。


「冒険者としてクエストをやるのは初めてだから緊張するね」


「僕もこうしてクエストを探すのは初めてだから同じ気持ちだよ。特に今までずっと戦闘を避けてきたから余計に怖い……」


 その後クエストを順に見て行った。採取系もたくさんある。

 採取対象が近くにあるかサーチしながらクエストを見ていった。どれもこれもすぐ近くにあるなぁ。

 全部取って一気に片付けたい衝動に駆られる……。


「ねぇ、これどうかな?」


 ルーナが指さしたのはゴブリンの巣を掃討して、全てのスポナーを回収する物だった。


「ゴブリン?レベル30でもゴブリンが対象になるんだ?」


「ゴブリンには種類がある。巣になるとおそらくジェネラル級がいるだろう。稀にキング級が混ざるからレベル30-35といえど油断出来ん」


 後ろからケインさんが解説してくれた。


「スポナー除去系を探しているのか?確かに良い選択かも知れない。お前の力がいかんなく発揮されるな。あとロンドの力も見る機会になる。これは確保しておこう」


 ケインさんがクエスト票を取った。


「ソフィアと合流するぞ」


 僕はソフィアさんをサーチして合流した。


「便利なスキルだ。合流もスムーズ。言うことなしだな!」


 ケインさんが僕の背中をポンと叩いた。


「なるほど、ゴブリンね。ロンドの力をレイ達に見せる良い機会ね」


「死体爆破は死霊魔導士の真骨頂だからな。早めに見せておかないとな」


「わかりました。ザコは私が全て片付けましょう。ジェネラルやキングがいた場合にはルーナ様に活躍頂きましょう」


「ロンドさん、様付けはやめて下さい……」


「ルーナさん、勇者は常に勇者様、ルーナ様と呼ばれるのよ。今のうちに慣れておいて」


「わ、わかりました……」


 僕たちはゴブリンのクエストを受付へ持って行った。

 受付も十箇所ぐらいあってその全てに行列が出来ていた。

 並んでいる間に他の冒険者を見ていた。

 みんな装備が整っている。さすが本店通いの冒険者だ。

 受付では冒険者レベルが確認されるみたいだ。

 僕のレベル5だし、ルーナは0だ。

 そういえばリンも冒険者登録した方が良いのかな?


「ソフィアさん、リンも冒険者登録した方がいいですか?」


「出来るかしら……?やってみないとわからないわね……どう思う?ケイン」


「冒険者登録は個人が特定出来ればそれ以上は感知しない。魔物だろうが魔王だろうが出来るはずだ」


「だそうよ。リンちゃんも冒険者登録しましょうか」


「わかった。リンも登録する。」


 ちょっと不安だったがアッサリと冒険者登録出来てしまった。案外ザルだね……。

 その後はパーティ登録も済ませてクエストを受ける事が出来た。


「すぐ向かおう。今日中に済むだろう」


 ケインさんの提案で僕たちはすぐに向かう事になった。


「みんな俺を中心に集まってくれ。近くまでテレポートする」


「テレポート!!物語では良く見たけど実在する魔法だったんですね!」


「黒魔道士といえど使えない者も多い魔法よ。これが使えるか否かは黒魔道士の能力を測る指標にされるの」


「行くぞ。テレポート」


 僕たちは林の中の池の畔に飛んできた。


「ここから少し歩けば巣があるはずだ」


 僕はゴブリンをサーチした。

 すぐ近くで大量のゴブリンの反応がある。


「こっちですね。たくさんゴブリンが発見出来ました。」


 僕は反応がある方を指さした。



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