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17.ケイン

 ドアの下から這い出てきたケインさんにソフィアさんが言った。


「私達がレジスト装備を羽織ってる時点で何か感じなかった?賢い賢いケインなら感じる物があったんじゃないかと思うけど」


「な、何の話だ……いきなり来てドアを蹴破るとはどういう事だ!ソフィアと言えど容赦せん。訳を話してもらおうか!」


「ここにいるレイの話は何か聞いてる?」


「レイ?知らん。今その子は関係ないだろう!」


「大有りよ。この子を鑑定してスキルを見て」


「スキル……サーチ・ブラウズ・初級剣術・加速……このサーチとブラウズというスキルはなんだ?ユニークか?」


「サーチは探し物が出来るスキルよ。ブラウズは鑑定」


「ふんっ、それがどうかしたか?探し物と鑑定とくれば採取系のクエストが捗りそうだとは思うが、やはり今回の件には関係ないな」


「サーチには射程距離がないの。そしてブラウズにも」


「射程がないだと?バカ言うな。いかなる生物であっても魔力は有限。そこから生み出されるマナもまた有限。消費マナの大小は威力や射程距離に応じて変化するのが常だ。距離に応じたマナを消費せず、射程距離なくどこまでも探せてしまったらオリハルコンでも狙って採掘出来てしまう。冗談も休み休み言え」


「レイ、あれを出して」


 僕はオリハルコンの鉱石をテーブルに置いた。


「オリハルコンは採掘済みよ」


 ケインさんが目を大きく見開きオリハルコンに触れていた。


「ぐ、偶然だろう……たまたま近くにあった物を掘り出したに過ぎん。射程距離がないなどと……ありえない」


「ブラウズにも射程距離がないの。これがどういう事かわかる?」


「ブラウズはさっき鑑定と言っていなかったか?鑑定に射程距離がないならどこにいても誰のステータスでも覗けてしまうではないか。あり得ん」


「しかもこのレイの鑑定はレジスト出来ないのよ」


「次々とくだらない事を言うな。レジスト出来ない魔法などない。俺はこいつのステータスを見た。こいつが俺を鑑定出来ない事は明白だ。出来ると言うならやってみろ」


「もうやったの。レイザールで。その時に書き出したあなたのステータスよ」


 ソフィアさんはあの時の紙をまだ持っていたようだ。

 それを受け取って見たケインさんが次第に震え始めた。


「こ、これは俺じゃない。お前!いい加減な事を言うな!お前が俺を鑑定出来るわけがないだろう!もうお前ら帰れ!帰ってくれ!!」


「ケイン、ここを見て欲しいの。ここよ。透視と書いてあるでしょう?それで私達はレジスト装備に身を固めてここまで来たのよ。だってそうでしょう?あなたにずっと裸を見られていたなんて想像したくないけど、今後も同じ被害者を出さない為に誰かがあなたを躾けないといけないの」


 ケインさんが震え始めた……。


「し、知らん……こ、このステータスは嘘だ。俺は透視など使えん」


「さっき私の服の中見ようとした」


 リンが呟いた。


「お、お前は誰だ……リン……フェンリル……だと……?」


 ケインさんが鑑定をしようとしたがレジストされたようだ。ソフィアさんと同じように種族と名前だけ見れている状態だろう。


「そうよ。リンはフェンリルなの。リンちゃん、あの時のステータスの紙持ってる?ケインが見たいんだって。見せてあげて」


 リンはポケットから紙を出してケインに見せた。

 ケインさんの震えが酷くなってきている。


「ケイン、震えてるじゃない。見えた?この子魔王なの。あなた魔王の裸を見ようとしてレジストされて蹴り飛ばされたのよ」


 ソフィアさんがケインさんの頭をポンポンと叩いている。ケインさんの顔色が土色に変わって来た。


「こ、殺さないでくれ……もう二度とこのスキルは使わない……命だけは……」


 ケインさんがガチめに命乞いをしてきた……。


「ちなみにレイのスキルはこの魔王リンのステータスすらも鑑定出来るの。おそらくレジスト不可能なスキル。私は神の瞳と呼んでいるわ」


「ソフィア……頼む……俺を助けてくれ……」


 やはり魔王の称号は脅威という事がわかる。

 ケインさんのような有力な冒険者程魔王の怖さを良く知っているのかも知れない。


「今からその透視のスキルを封じる。私の聖女の固有スキル(悔い改める者)を使えば本人の同意を持ってスキルを封じる事が出来る。ケイン、同意してくれるわね」


 ケインさんは一瞬ハッとした顔をして、その後しまったという顔をした。

 

「もう使わない……!もう二度と使わないから封じるのは……このスキルの取得難度はSランクなんだ……封じるのは勘弁してもららえないだろうか……」


 尻すぼみに声が小さくなっていった。

 封じられるとなると急に惜しくなったみたいだ。

 命よりも惜しいんだろうか……。


「もう充分楽しんだんでしょう?封じるのに同意しないならギルドの掲示板にあなたのステータスを張り出して、エロ賢者が透視してくるので気を付けてくださいと注意喚起しなければならないわね」


「ぐっ、汚いぞ……俺を脅す気か……」


 その時リンがケインを睨みつけた。

 鼓膜を圧迫されるような張り詰めた空気が辺りを包み、ケインさんは痙攣したように震え上がった。


「わ、わかった、同意する……頼む……威圧を解いてくれ……震えが止まらん……」


 大変だ!ケインさんが気絶してしまいそうだ。


「あの威圧の恐ろしさは受けた者にしかわからない。気絶しないケイン殿は流石だ……」


 ロンドさんが冷静に分析した。


「リン、もう許してあげて。ケインさん同意したから」


 僕はリンの頭に手を当てて撫でた。

 空気が軽くなり、リンが威圧を止めたのがわかった。


「リンちゃんはレイの従魔なのよ」


「信じられない……魔王を従魔にしているのか……あり得ないだろ……」


「従魔じゃなく家族だと思ってます。ね、リン」


「そう、レイ家族。(つがい)


「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」


 僕とソフィアさんとルーナの驚きの声がハモった。


「つ、つがいはまだ早いんじゃないかなぁ……」


「早くない。リンとレイ、つがい」


「ルーナも一緒でいい?」


「レイ君??」


 ルーナが驚いている。


「ルーナも家族。一緒でいい」


「三人で仲良くしようね」


 僕たちは三人で手を繋いだ。

 リンが純粋で良かった……。


 その後ケインさんの透視は封印された。

 両膝を床につき、下を向いて放心しているケインさんは一気に老け込んだように見えた……。



「ケイン、今回来たのはこれだけじゃないの。レイのスキルが魔力残滓を残すかどうか知りたいの」


「残さん。俺を見たんだろう。だが俺には見られた自覚はない。残滓を残すなら見られた事に必ず気付いている。そのスキルが残滓を残すなら対策出来たんだ……」


 ケインさんはまだ引きずっているようだ。


「つまり魔力残滓を残さない。見た事を相手に気付かせない」


 ソフィアさんが考え込んでいる。


「サーチもブラウズもえげつないスキルだ……俺なんかよりそっちを封印すべきじゃないのか」


 ケインさんが不貞腐れている……。


「心当たりが一つある」


 ケインさんが立ち上がって椅子に腰掛けながら言った。


「アカシックレコードというのを知っているか?」


「この世の全ての事が記録されているという?」


 ソフィアさんが即答した。


「そうだ。こいつのスキルはアカシックレコードを参照している可能性がある」


「どういう事?」


「こいつのスキルには射程距離がないんだろう?レジストも出来ない。相手を対象にスキルを使ってるんじゃなく、アカシックレコードを参照しているとみた。それなら射程もレジストも関係ない。どうだ?」


「アカシックレコードなんて実在するの?」


「知らん。俺に聞くな。聞くならそいつに聞け」


 みんなが僕を見た。

 アカシックレコードなんて知らないんだけど……。


「試してみろ。魔王バラリスをブラウズしてみるがいい」


「魔王バラリスを……」


 僕はブラウズしてみた。

 サーチをせずにブラウズしたのは初めてだった。


「出来ました。魔王バラリスを知りませんがブラウズは出来ました」


「見ろ。こいつのスキルが相手を対象にしていない事が証明された」


「どういう事ですか?」


「魔王バラリスは俺達が討伐した。もうこの世にいない。お前はアカシックレコードに記録されたバラリスの情報を参照したんだ」


「間違いないわ……想像していたよりずっと神寄りのスキルね……」


「サーチは位置情報を参照し、ブラウズは内容を閲覧するんだろう。お前のスキルは世界を掌握できるスキルだ。決して悪用するな。悪用すれば世界を敵に回すぞ」


 ケインさんが真っ直ぐこちらを見てそう言った。


「はい……決して悪用しません」


 もちろん悪用するつもりなんて元からない。

 

「決めたぞ。俺もお前らのパーティに入れてくれ。お前らと行けば面白い物が見られそうだ」


 こうして賢者ケインがパーティに加わった。

 エロ賢者だけど透視は封印したから大丈夫だよね……。



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