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16.王都

 ロベルトさん達は他の四人の冒険者を解放し、馬で王都へ引き上げて行った。

 僕たちはその後馬車で王都を目指す。

 馬車の中でロンドさんが改めて謝罪をしていた。


「皆さん、大変なご迷惑をお掛けしました。昨夜の私はどうかしていました……これからは心を強く持ち、パーティの為に身を粉にして尽くす所存です。どうかよろしくお願い致します」


 ロンドさんは深く頭を下げた。

 ロベルトさんのスキルでもこの人の言葉に嘘がなかった事は証明されている。

 だけどよくあんな事隠さずに正直に話せたな……。

 僕はある意味尊敬していた。

 ロンドさんは見れば見るほど美形だった。

 この人絶対モテると思うんだけど。


 その後ロンドさんが自己紹介をして、こちらもそれぞれ自己紹介を済ませた。

 リンの自己紹介の時は挙動不審になっていた。

 捕まえられる時によほど怖い体験をしたのかも知れない……。


 もうすぐ着くとソフィアさんが言うので窓から外を見ると、まだフィールドにいるはずなのに建物が多く建っていた。


「レイは王都は初めてだからこの光景は違和感があるでしょう?」


 僕が外の景色に違和感を感じているのを見透かしたようにソフィアさんが言った。


「フィールドに建物なんて建てて大丈夫なんですか?魔物に襲われる恐れはないんですか?」


「この辺りはもう魔物はいないわ。王都にはレイザールなんて比べ物にならない程の冒険者がいる上に、騎士団や王国軍もいる。スポナーもあらかた回収されてるから魔物が生存する余地がないの」


 なるほど……すでにこの辺りの魔物は狩り尽くされているのか。


「もちろんイレギュラーはいつでも存在する。万が一襲われたとしてもそれは自己責任。みんなそれを理解して家を建てる。王都の中は土地が高いの。城門の中に家を建てるのはよほど成功した者だけよ」


「なるほど……そういう事ですか。人が多過ぎて溢れてしまっているんですね」


「簡単に言うとそういう事だけど、フィールドに建てた方が移動時間を短縮出来ると考える冒険者も多くいるわ」


「でも結局ギルドへ足を運ぶ必要があるんじゃないですか?」


「王都のギルドには出張所があるの。ほら、そこよ」


 ソフィアさんが指差す方に少し立派な建物があった。


「あそこはギルドと同じ役割を果たせる設備が揃っているの。冒険者は王都に入らなくても仕事が出来るのよ」


「すごいですね。もうここだけで完結してしまうんですね」


 ロンドさんが続きを説明してくれた。


「補給の時だけ王都へ入り、大量に買い込んで自宅へストックする。王都暮らしの冒険者の三割程度はこのスタイルですね」


「三割なんですか?もっと多くても良さそうですが」


「その理由はクエストの質にある。この出張所へ回ってくるクエストと王都本店のギルドに張り出されるクエストとの間には明確な差がある。フィールド住まいの冒険者はものぐさが多く、全体的にレベルが低い。回ってくるクエストもそれなりの物しか回ってこない。一方城門内に生活する冒険者は所得が高く高レベル帯の者が多い。クエストの質も高難度の物が多い。どちらで活動するかを自分で選ぶ訳だが、選んだ時点で自ずと振り分けられてしまうんだ」


「三割の冒険者はフィールド住まいを選んでいる……」


「仕方ない部分もあるのよ。王都住まいはお金がかかり過ぎる。張り出されるクエストの質は高くとも受けられるかどうかは自分のレベルと相談になる。受けられなければお金のかかる城門内の暮らしを維持出来ない。王都で活動する冒険者は皆このジレンマにぶち当たるわ」


「昨日会ったギースさんはどちらなんでしょうか」


「冒険者レベルが30と言っていたからおそらく本店通いでしょうね。冒険者レベル30といえば相当なものよ」


「僕の冒険者レベルはいくつなんだろう?どこを見ればわかるんですか?」


「冒険者証の名前の後ろにある数字が冒険者レベルを表しているわ」


 僕の冒険者証を確認すると005と書かれていた。


「僕はまだ5みたいです。全然ですね……」


「あなたがこなしたクエストは2個だけでしょ?いずれも私があなたに指名依頼したもの。2つのクエストで5まで上がっているんだから十分よ。5まで上げるのに普通はもっとクエストをこなさいないといけないのよ」


「最初の10レベルを上げるのは時間がかかるんですよ。まだ実力もなく、冒険者としての経験も足りない。死なないように慎重にクエストをこなす必要があるから時間がかかるんです。クエスト2つで5まで上げているのすごい事です」


「指名依頼というのはレベルを上げやすいんですか?」


「指名を受けて期待通りの働きをしてギルドに貢献する。大きく評価されて当然よね」


「なるほど……ロンドさんの冒険者レベルはいくつなんですか?」


「私は41です。基本ソロなので上がりやすい傾向にありますよ」


「ロンド、あなたどこで活動していたの?レイザールではないでしょ?41まで上げている冒険者の話が私の所に上がってこないはずがないもの」


「私はソフィア様にパーティ入りを断られてから8年間、ファーランドでダンジョン探索をしておりました」


「ファーランド……なら噂を聞いてなくて当然ね。ダンジョン専門だったの?」


「そうです。自己鍛錬にダンジョンは最適でした。到達階層で自分の成長がわかりますので」


 そんな話をしているうちに城門までたどり着いた。

 城門で搭乗者の身分証を確認後、馬車の発着場へと到着した。


「着いたわね。まず宿を確保しに行きましょう。遅くなると王都の宿は交通の便のいい所から順に埋まってしまうの。早く確保しておかないと遠くの宿しか空いていない状態になってしまうわ」


 ソフィアさんの勧めで向かった宿は特別目立たないが利用者はかなり多そうだった。


「この宿は各部屋にお風呂が完備されているの。大浴場は大体の宿にあるけれど、各部屋に風呂があるのは珍しいのよ。私は王都へ来たときにはいつもここ。ロンドは馴染みの宿はある?」


「私は特に馴染みはありません。王都で長く滞在する事はありませんでしたので」


「ルーナさんは?」


「私は騎士団の兵舎にいましたので、宿は利用したことがありません。部屋にお風呂がついてるなんて最高ですね。すごく楽しみです!」



 部屋は一人一部屋確保出来たので、次はいよいよケインさんの所へ行く事になった。


「ルーナさんはこれを羽織って。魔法防御に優れたローブで大概の魔法をレジスト出来るわ。ケインの魔法もレジスト出来るはずよ」


「はい……念の為レイ君の後ろに隠れています」


「リンちゃんはウルフになって貰えないかしら?ローブは二つしかないのよ」


「リン、自分でレジスト出来る。見ようとしたら睨み返す」


「そ、そう。頼もしいわね……」


「先程から見る、レジストする、という言葉が出ていますが私には話が見えません。よろしければ私にもお聞かせ願えませんか?」


「他言無用よ……ケインは透視のスキルを持っているの。魔力が高過ぎて誰もケインを鑑定出来なかったから気付かなかったのよ」


「と、透視……私がソフィア様に許しを頂いた時に仰っていたケイン殿の話はここへ繋がっているのですね……」


「そう。私達はケインを指導する為に来たのよ」


「透視などと……許せません……ソフィア様の……決して許せません……」


 ロンドさんがわなわなと震える程憤っている。

 羨ましいんじゃないのかな……。


 ソフィアさんの案内で城門外の一軒家の前まで来た。


「ケインも私と同じで変わり者だから要職に就かずここで一人で魔法研究に没頭しているのよ。入りましょうか」


 ソフィアさんがドアを叩いた。


「誰だ?指名依頼なら受けない。他を当たってくれ」


「ソフィアよ。開けてくれる?」


「ソフィア?」


 扉に付いている小窓が開き、ソフィアさん、ルーナ、リンと視線が移っていった。

 リンに目線が行った瞬間リンがドアを蹴破った。

 いきなりの事に皆動けないでいた。

 中のケインさんはドアと一緒に部屋の奥に吹き飛ばされた。

 

「な、な、何をするんだ……!」


 ドアの下敷きになりながら現状把握しようとするケインさんにリンは一言返した。


「見た」


 僕達は一瞬で意味がわかった。


「そう、会った瞬間見たの……」


 ソフィアさんが哀れなものを見るような目でケインさんを見た。



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