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15.狩りのついで

 リンがゲートを出てから僕たちは宿に戻り朝食をとっていた。

 

「リンちゃんは狩りに出たのね。子供の姿に変身しているから食事の量に関して認識のズレが出ていたのね。本来は大きな躯体を持つフェンリル。私たちと同じ量で足りる訳がないわ」


 僕もそこは認識が甘かった。

 今後もこうやってたまに狩りに出してやった方が良いかも知れない。


 食事を食べ終わった頃に外がざわついている事に気付いた。

 僕はサーチする前に気付いた。

 さっきまで野営地にいたロンド達がゲートまで来ている事に!


「ソフィアさんすみません!食事に気を取られていてロンドをモニタリング出来てませんでした!ロンドがゲートまで来ています!」


「なんですって!行くわよ!」


 僕たちがゲートまで駆けていくとリンが立っていた。

 その周りには五人の冒険者が白目を剥いて倒れている。


「リンさん……これは?」


 僕はリンに尋ねた。


「ついでに捕まえてきた。悪いやつ」


 リンはそう答えると僕の前に立った。


「リン、ありがとう。良くやったね」


 そう言って頭を撫でてあげた。

 リンは目を細めて撫でられていた。


「その冒険者を捕縛せよ!」


 ロベルトさんが騎士に指示を出し、何事もなくロンド達五名の捕縛が完了した。


「リンちゃんの底が見えない……ロンドはかなりの手練れだったはずなのに……」


 ソフィアさんがリンを見ていた。

 鑑定しているのだろうか。


「リンの鑑定は出来ているんですか?」


「私ではリンちゃんは種族と名前しか鑑定出来ないの。魔力が高いんだと思うわ。ブラウズして書き出して貰えない?」


 たぶんブラウズ出来るけどやらないでおこう。

 リンは大切な仲間だからわざわざステータスを覗く必要はないよね。


「リンは大切な仲間なので見ないでおこうと思います」


「レイ、リンも数字知りたい」


 リンさんや……僕の配慮は……。


「じゃ見てみようか」


リン

年齢  :16歳

種族  :フェンリル

体力  :25000

マナ  :13500

攻撃力 :25100

魔力  :15500

称号  :魔王

状態  :変身中(ステータス1/3)



 リンさんや……君は魔王だったのか……。

 皆が僕の筆先を覗き込み、驚愕の顔をしていた。


「リン、書けたよ」


 僕はステータスを書いた紙をリンに渡した。

 リンが嬉しそうに見ている。


「レイ、リン強い?」


「めちゃめちゃ強いよ。これからもよろしくね」


 リンはとても嬉しそうに紙を見ていたので頭を撫でてあげた。

 みんなが僕とリンを見ていたが、心なしか距離が開いた気がする……。

 そんな中ルーナはリンを抱きしめていた。


「リンはすごいね!また私に稽古をつけて欲しいな」


「わかった。リンがルーナ鍛える」


 リンはドヤ顔で答えていた。



 その時騎士さんがロベルトさんに声をかけてきた。


「ロベルト様、捕らえた冒険者が目を覚ましました」


「すぐ行く。ソフィア、行くぞ」


 僕たちは捕らえた冒険者の所に向かった。


「俺達何もしてねぇだろ!拘束される覚えはねぇぞ!」


 戦士ガイは悪態をついていた。


「そうよ!私達何もしてない!そこの死霊魔導士が死体を集める手伝いをしてくれって言うから同行してただけ。昨日のトロルも仕留めるのに手は貸したけど、あんな事すると思ってなかった!」


 白魔道士エミリーは自己弁護をしていた。


「信じて下さい!我々は真っ当に活動してきた冒険者です。実績もあります!王都で活動しています。疑うなら調べて下さい」


 黒魔道士ラバールは自分達の実績を見て判断して欲しいと訴えていた。


「今回はレイザールまで護衛の依頼で向かいました。レイザールでロンドと知り合い、王都までの道のり、魔物を一緒に狩りながら移動していただけです。本人間で意気投合して一緒に移動したりクエストこなしたりするのはそんな珍しい物でもない。ですがロンドがこんなヤバい奴だと知ってれば絶対関わってない。俺たちは真っ当な冒険者なんです」


 リーダーと目される盗賊イーサンは顛末を話した。

 死霊魔導士ロンドは下を向き黙秘している。


「おい!ロンド!なんとか言えよ!このままじゃ俺たちまで犯罪者扱いじゃねぇか!責任取れよ!」


 戦士ガイはロンドへ罵声を浴びせた。

 死霊魔導士ロンドはため息をついて語り始めた。


「この者達の主張は正しい。今回のトロルの件は私の独断でやった物です。ロベルト殿ならこの者達の言葉に偽りが無い事がわかるはずです」


 ロンドはアッサリと自供した。しかしなぜロベルトさんに真実を見抜くスキルがある事を知っているんだろう?


「確かに。君達の言葉に嘘はない。ロンドを除く四名は取り調べから外す。ただ私のスキルも万能ではない。軽く裏を取らせてもらう。確認が出来た後に解放するので一度別室で待機してもらいたい。構わないか?」


「構いません。よろしくお願いします」


 盗賊イーサンが答え、他のメンバーも頷いていた。

 四人は別室へ移動した。


「死霊魔導士ロンド、君の話を聞かせてくれ」


 ロンドは目を瞑りしばらく黙っていたが、ゆっくりと話し始めた。


「ソフィア様がパーティを編成し、レイザールを出ると知りました。通常ではあり得ない事……」


 ロベルトさんとソフィアさんが注意深くロンドの言葉に耳を傾けている。


「私は以前からソフィア様と行動を共にしたいと考えておりました」


 その時、ソフィアさんがハッとした顔をした。


「あなた……レイからロンドという名前を聞いた時に、どこかで聞いた事があると思った……でも思い出せなかった。今思い出したわ。私がギルドマスターに就いた頃に何度かパーティを組みたいと打診しに来てたわね。当時あなたは闇魔導士だった」


「私の名を覚えていてくれたのですか……」


 急にロンドは顔を上げ、恍惚とした表情を見せた。

 その顔はとても整っていて、非常に美形であった。


「私は血の滲むような努力を積み重ね、闇魔導の頂点である死霊魔導士の資格を得ました。いつの日かソフィア様のお役に立てるよう、そればかりを考え日々邁進して参りました」


 ソフィアさんがロベルトさんを見た。


「嘘はない。この男は真実を語っている」


 ロンドは続けた。


「ソフィア様がパーティを組んでレイザールを出るならば私も末席に加えて頂きたい。その一心で後を追いました。あの冒険者達は王都へ行くと言っていたので死体集めを手伝ってもらいながら一緒に王都へ移動していただけです。何の罪もありません」


「それはわかったわ。彼らは釈放されるはずよ。聞かせて欲しいのはその事じゃない。ハーバルを襲った理由を聞かせて」


 ロンドはしばらく沈黙していたが、意を決したように語り始めた。


「私は努力と研鑽の末、昨日ついに千里眼を得る事に成功致しました。私は早速千里眼でソフィア様のお姿を拝見しました。千里眼を使えば至近距離から見ているような錯覚に襲われるのです……遠くから見ていただけのソフィア様が至近距離にいるかのような錯覚に……私の欲望はエスカレートしてしまいました……ソフィア様が魔法を詠唱しているお姿を見たいという衝動に駆られてしまったのです……」


 みんなが一気に引いたのがわかる……。


「この男の言葉に嘘はない……呆れた男だ……」


「何故夜中に?」


 ソフィアさんが問い詰めた。


「あわよくば薄着のソフィア様が見れるかと……」


 全員ドン引きだ。

 めっちゃ美形なのに残念過ぎる!!


「ハーバルを襲う意図はなく、私の魔法を見たかった。そういう事?」


「大変な騒ぎを起こしてしまって申し訳ありませんでした。ハーバル村の方々にご迷惑をかける意図はありませんでした……全て私の精神の弱さが引き起こした物です……」


 ソフィアさんが大きなため息をついた。


「ハーバルに実害はなかった。昨夜の出来事は事故、一人の男の欲求が騒ぎを起こしてしまった。男の身柄はソフィアが預かる。そう報告しておいて」


 ロベルトさんが驚いていた。


「ソフィア、その男の同行を許すのか……?」


「男というのはそういう生き物なのよ。あのケインですらそうだったもの」


「ケイン?何の話だ?聞かせてもらえないか?」


「ケインの名誉に関わる事だからロベルトであっても言えないわ。誰でも男の(さが)に逆らえない瞬間がある。このロンドは昨日千里眼に開眼して気持ちが昂ってしまった。でも本来のこの子はそうじゃない。理知的で非常に努力型の死霊魔導士ロンド。同行を許すわ」


 ソフィアさん……さすが聖女だ……名裁き……。

 ロンドは下を向き涙を流していた。


「私はソフィア様に救われてばかりです……必ずお役に立てるよう邁進致します……」


 こうして死霊魔導士ロンドがパーティに加わる事となった。



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