13.スポナー
洞窟の中に入ると真っ暗だった。
ソフィアさんが光の矢を天井へ撃ち込んだ。
その後等間隔に突き当たりまで照明のように撃ち込んでいった。洞窟の中が明るく照らされた。
「何もいないわね。でもいつグラスドレイクがリスポーンするか分からないから気を付けて」
洞窟はそれ程深くない。僕たちはオリハルコンの反応がある場所まで来た。
「この壁の向こうにオリハルコンがあります。あと、グラスドレイクスポナー?と言う物もあるみたいです」
「やっぱりスポナーがあったのね……そうじゃないかと言われてたけど、結局見つけられなかったのよ。さすがレイね」
「ソフィアさん、僕はスポナーと言う物を見た事がありません。どんな物なんですか?」
「あまり一般人の目に触れる物じゃないからね。でも長く冒険者をやっているとごく稀に洞窟の中で偶然発見する事があるの。スポナーは人の頭ぐらいの大きさで形は決まっていない。水晶の塊のような物よ。その内部にスポーンさせる魔物が小さくなって封入されているの。そのスポナーに魔力を供給する事でその魔物をスポーンさせる事が出来るから、戦闘訓練の対象としたり、良い素材が採れる魔物のスポナーなら素材を安定して供給出来たりと、非常に使い道がある物よ。すぐ近くにオリハルコンの鉱石があったから魔力が供給され続けてスポーンしているのね」
なるほど……スポナーか。
軽くサーチしてみると近くにもいくらでもある。
案外この世界の魔物は全てスポナーからスポーンしているのかも知れない……そう感じるぐらいある。
でも大体が地中にある雰囲気なので手がかりなしに見つけるのは非常に難しいだろう。
「リンちゃん、穴掘りは出来る?」
ソフィアさんがリンに尋ねた。
「リン、掘るの得意」
リンが挙手をした。
「じゃお願いして良いかしら?」
リンは一気に掘っていった。
女の子の格好で爪を使ってガリガリと掘っていく様はとても違和感があった……。
「リン、そろそろだよ。少しゆっくり掘ってみて」
「わかった」
丁寧に掘っていき、まずスポナーが出てきた。
「間違いない。グラスドレイクのスポナーね。これは値打ちがあるわよ」
さらに掘ると硬い岩に当たった。
オリハルコンの鉱脈だろうか。
リンの爪でも簡単には崩せないようだ。
リンが頑張って力を入れてしばらく掘るとうっすら光る岩が出てきた。
「出たわね、オリハルコン!この光り方……間違いないわ。信じられない!オリハルコンを掘りだすなんて……」
「レイ君すごい!本当に出た!」
「僕だけじゃグラスドレイクが倒せないので、みんながいたから取れたオリハルコンですよ!」
「レイが浮力石を持ち込んできた時に感じた直感は間違ってなかった。オリハルコンを狙って採れる者なんてこの世にいないわ」
リンが丁寧に光る部分を残して周りを掘って、最後に光る部分を含む大きな塊を削り出した。
「この鉱石にどの範囲までオリハルコンが含まれているか分からないからこうやって大きめに取っておくの。一応掘り出した周りの瓦礫も回収しておいて。オリハルコンの魔力を多く含む瓦礫だから使い道があるかも知れない」
僕は周りの瓦礫も全て鞄に収納した。
魔法の鞄は偉大だ!
その後、洞窟を出て馬車へ戻った。
ハーバル村に到着した時にはもう真っ暗になっていた。少し寄り道が長過ぎたようだ。
「御者、明日も朝一番に出発するからよろしくね。今日は寄り道したからこれ、少ないけど取っておいて」
ソフィアさんが御者さんにチップを渡していた。
「さて、明日も早いから早く食事を済ませて休みましょう」
その日は早く眠った。
明日はいよいよ王都だ。昼過ぎには到着すると言う。
子供の頃から憧れていた王都に期待感を募らせていた。
◇
「食い止めろ!村に入れるな!」
「くそっ!なんだってこんな時間に!」
「無駄口叩いてないでお前もゲートへ向かえ!突破されるぞ!」
なんだか外が騒がしい。
僕はサーチで異変がないか調べた。
村の外100m程離れた所にそいつらはいた。
ーートロルーー
ーートロルーー
ーートロルーー
ーートロルーー
ーートロルーー
トロルだ!トロルなら僕でも知っている。
とても有名な魔物で再生能力があり力も強い。
一般的にトロルは強敵だと言われている。
そのトロルが五体いる。
ただごとじゃない!
僕はソフィアさんの部屋のドアを叩いた。
「ソフィアさん、起きてますか?トロルが五体村の外に迫ってきています!」
「待って、服を着てないの。すぐに用意するからルーナさんにも声をかけて」
ソフィアさん、寝る時もちゃんと服を着てください。
僕は心の中で呟きながらルーナとリンが寝ている部屋のドアを叩いた。
「ルーナ、起きてる?トロルが出たみたいだ。五体もいる。村の守衛さんだけでは厳しそうだから協力しに行こう!」
「リンが起こしてくれたから起きてるよ。トロルが来てるの?」
ルーナが飛び出してきた。
もう鎧も着て準備が出来ていた。
リンも臨戦態勢だ。
「ソフィアさん、先に行ってます!」
「行ってて!すぐに追いかけるから!」
僕たちは村の入り口まで来た。
すでに数人の冒険者が集まっていた。
入り口はゲートが閉じられており、ゲートの上から警備の兵士の方が僕たちに向かって言った。
「皆さん、トロルが出ました。この村は年に数度トロルの襲撃があるのですが、こんな夜中に来るのは初めてです。夜間の為、人員が最小限しか配置されておらず、戦力が足りません。力を貸して貰えないでしょうか」
「おうよ!相手はトロル!みんな心してかかれ!」
先に来ていた冒険者さん達はパーティだったようだ。
トロルと聞いても怯んだ様子はない。
冒険者レベルの高い人達かも知れない。
「僕たちも援護します」
その冒険者さん達に声をかけた。
「ありがたい申し出だがやめとけ。トロルは単純に強い。再生能力を超えた攻撃を入れないとダメージとして通らない。お前らがどの程度使えるか知らんが危険だ。どうしてもと言うなら自己責任でやるんだ。俺たちは助けねぇ。いいか?」
「はい、それで大丈夫です。ルーナ、リン、トロルは大丈夫?」
「たぶん」
「楽勝」
リンさん、楽勝ですか……。
ソフィアさんが追いついてきた。
ゲートへ登り、確認をしている。
「確かにトロルね。でも少し色が違う。レイ、ブラウズしてみて」
僕は言われるままトロルをブラウズした。
するとあることに気がついた。
「ソフィアさん、あのトロル達……死んでいます!アンデッド化しているようです!」
「アンデッド……」
ソフィアさんが呟いた。
「おいお前!あんな遠くを鑑定出来んのか!すげぇやつだな!トロルのアンデッドか。やった事はないがどうにかなるだろ!お前ら、相手はアンデッドだ。火を使え」
「待って。ここから処理するわ」
ソフィアさんがゲートの上で魔法を詠唱し始めた。
ソフィアさんの体を聖なるオーラが包み込んだ。
「お、おい、ありゃ……」
冒険者さんが皆目を丸くして見ている。
「ターンアンデッド!」
ゲートの隙間から光に包まれたトロルが見える。
その後バタバタと倒れて動かなくなった。
「おぉ……光属性どころかありゃ神聖魔法……すげぇ……あのねーちゃん神官か?」
「ソフィアさんは聖女ですよ」
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