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10.百倍ヤバい子

 翌朝、僕は医務室を訪ねたが、ルーナはまだ起きていなかったので、母さん達が借りている部屋を訪ねた。


「あらレイ、こんな朝早くに珍しいわね。どうしたの?」


「うん、ちょっと話があって。アルバートさんもいる?」


「まだいるわ。入って」


 アルバートさんは食卓で食事中だった。


「おはようレイ君、一緒にご飯を食べよう」


 僕は食卓についた。

 母さんが僕の分のオムレツを作ってくれた。


「さぁ出来た。話を聞かせて」


 僕はここ最近起こった出来事を手短に話した。


「リン、入っておいで」


 僕は外に待たせていたリンを招き入れ、リンとルーナと三人で旅に出る事を伝えた。


「騎士団……王都の隊は規律正しい素晴らしい隊だと聞いているが、地方の隊までは目が届いていないと言う事か……」


「ルーナさんも大変な目に遭っていたのね……そんな人たちの中で休みもなく働かされていたなんて、かわいそうに……」


「リン、僕のお母さんとお父さんなんだ。本当の姿を見せてあげて」


 そう言うとリンは本来の姿を見せてくれた。

 立ち上がっていると翼は天井に接触していた。


「フェンリル……」


 アルバートさんが絞り出すように言った。


「この子はリン。僕がピンチの時に限ってフェンリルが接近してきていたけど、それは全て僕を助ける為に来てくれていたんだ。子供の頃、子犬だったリンにご飯を運んでいたんだけど、その時の事を覚えていて、僕のピンチに駆けつけてくれていたんだ」


 母さんがリンを見ていた。


「母さんも撫でてあげて。僕の命を何度も救ってくれてるんだ」


「リンちゃんって言うの?レイを助けてくれて本当にありがとう。あなたがいなかったらレイはここにいなかった……本当にありがとう……」


「――レイ、助ける――」


 母さんとアルバートさんが絶句していた。


「リンは意思疎通が出来るんだ。魔物じゃないよ」


「驚いた……人と意思疎通が出来る……竜の中にはそういった個体も存在すると聞いた事があるが……おとぎ話の世界の話だと思っていた……」


「リンちゃん、これからもレイをよろしくお願いね」


 リンは母さんに撫でられながら目を細めていた。


 その後ウルフの姿に戻ったリンも含めて一緒に食事を取った。母さん達とはしばらく会えなくなる。必ず帰ってくる事を伝えて家を出た。


 母さんの家を出て屋台が並ぶ通りに出た。

 魔法の鞄にありったけの食料を詰めておこうと思ったからだ。時間停止があるから、出来立てを入れておけばいつでも出来立てを食べられる。屋台に並ぶ美味しそうな物を片っ端から買って収納していった。


 次は野営の準備。

 道中、調理器具があれば収納した食べ物を消費せずに済む。食べられる魔物などを収納しておいて自分で調理して食べる事も必要になる。あと、寝袋やテントなども必要だ。

 着替えなども幾つか買っておいた。全てルーナの分も買っていたが、服だけは少し迷った。けど余ったら鞄に入れておけば良いと考え、僕の好みで沢山買っておいた。

 僕は必要と思う物を次々買って収納していった。

 魔法の鞄はすごい。これは一億ギル払っても充分な価値がある。良い買い物をしたと思う。


 この際なので装備品も新調してしまおうと思い、武器屋さんと防具屋さんを周り、ちょうどいい軽さのショートソードと動きやすそうな革鎧、鉄で補強されたラウンドシールドを買った。

 一端の冒険者みたいだな。

 僕は自分の姿に満足していた。


 その時ルーナの所在地が動いた。

 起きたみたいだ!

 僕は急いでギルドへ戻った。


「ルーナ!気が付いたの?」


 僕は医務室に飛び込んだ。

 ちょうど着替え中だった。


「ごめん!」


 僕は飛び出した。


「何やってるの……」


 ソフィアさんが呆れた顔でコッチを見てきた。

 

「着替え中だとは思わなかったので……」


「女性がいる部屋に入る時はノックぐらいしないと」


 僕はしゅーんとなってしまった。

 しばらくしてルーナが出てきた。少し疲れた顔をしている。薬の効き目が強すぎたんだろう。


「レイ君、ソフィアさんから聞いたよ。ブレン達に薬を盛られて眠らされてたって……レイ君が助けてくれなかったらどうなってたかわからない……」


 ルーナは下を向いて黙ってしまった。

 僕は背中を撫でながら落ち着くのを待った。


 ソフィアさんの勧めで軽い食事を取る事にした。

 ミーティングなどに使う個室を用意して貰い、食事を取る事にした。


「ルーナさんは昨日付で退職手続きしてあるから。あなたは自由よ。レイと旅に出るんでしょう?色んな経験を積めると思うわ」


「はい、ありがとうございますソフィアさん……レイ君、これからよろしくね」


「こちらこそよろしく。僕は戦闘の役に立たないけど、ここにいるリンも一緒に行くからなんとかなるよ」


「リン……?リンってあの子犬?」


「そうだよ。あの時の子犬。それがこの子なんだ。後で詳しく説明するよ」


 実はルーナもあの洞穴で何度かリンと遊んだ事がある。覚えていたようだ。


「レイのパーティはなんでも探知出来るレイに勇者候補のルーナ、そしてリン。相当なパーティね。でも回復役がいない……そこで私がついて行けば最強パーティね!」


「えぇ、そんな!ソフィアさんにはギルドマスターの仕事があるじゃないですか」


 僕はチラリとアイリスさんを見たが、何故か引き留めない……。


「レイ、冗談っぽく言ったけど、これはロベルトからの提案なの。勇者候補の後見人としてついて行ってあげて欲しいとね」


「ギルドマスターが抜けるのは痛いですが、サブマスターも実績のある方なので充分務まります。大丈夫ですよ」


アイリスさんがにっこり笑った。


「レイ君。私も初めて聞いた時驚いたけど、私たちだけじゃ回復役がいないのも事実。ここは好意に甘えておきましょ」


ルーナはすでに聞いていたようだ。


「レイ、これからもよろしく頼むわね」


「物凄いパーティになりましたね……こちらこそよろしくお願いします!」


こうして僕たちのパーティは結成された。


「ねぇ、レイ。あなたのスキルの詳細を教えて。私の鑑定でもあなたのスキルの詳細は見えないの。おそらくユニークスキルね」


「自分ではユニークスキルかどうかわからないです……あっ!!!!」


僕が大きな声を出したからみんながこっちを見た。


「いつの間にかもう一つスキルが増えていました……」


「そうね。私は気付いてたわ。スキル名はブラウズ。それも踏まえてあなたのスキルの詳細を聞きたかったの。まさかスキルが増えている事に本人が気付いていなかったとはね」


僕はブラウズを使ってみようとした。

どうやら対象を選ぶ必要があるようだ。


「このスキルは対象を選ぶ必要があるようです。誰か対象にしてみても良いでしょうか?」


「良いわ。私を選んでみて」


「わかりました。ではソフィアさんを……」


ソフィアさんを対象に選んでみた。


ソフィア・クラウス

年齢   :158歳

職業   :聖女


「ソフィアさんのステータスが見れました……名前はソフィア・クラウス。年齢は……えっ?」


「ちょっと待って!見れたの??」


「はい……見れました」


「ダメ!やめて!見ないで!!」


ソフィアさんが両腕で身体を隠した。


「えぇ!!すみません!もう見てしまいました……」


「なんで見れるの……そのスキル……鑑定じゃないの……?」


「鑑定ならステータスが見れるんじゃないんですか?」


「相手の魔力が自分より高ければ普通はレジストされるのよ。私を鑑定出来る人間なんてほんのひと握りのはず。少なくともレイが私を鑑定出来る道理がない」


「そうだったんですね……普通に見れてしまいました」


「ちょっと待って……もしかしたら……レイは離れた所にいる物や人を探知出来るのよね?離れた所にいる物や人もブラウズ出来るの?」


「やってみます……」


僕はブレンをブラウズしてみた。


ブレン

年齢   :23歳

職業   :騎士

体力   :410

マナ   :250

攻撃力  :350

魔力   :160

物理防御 :260

魔法防御 :110

状態異常

発狂



「ブレンさんを見てみましたが普通に見れました。発狂しているみたいです……」


ソフィアさんがまじまじとこちらを見た。


「嘘でしょ……駐屯地までどれだけ距離があると思ってるの?そんな遠くまで……恐ろしいスキルだわ……」


アイリスさんがトンデモない事を言い出した。


「魔王のステータスとか見れたりするんでしょうか?」


「どうでしょうか……魔王って職業でしょうか?魔王でサーチすれば見つける事が出来そうな気がしますけど……」


ソフィアさんが目を見開き大きな声で制止した。


「ダメ!見ちゃダメ!もう少し検証してからでないと危険過ぎる!見ている事に気付かれたら魔力残滓を遡ってレイまで辿り着かれてしまう可能性がある。迂闊に魔王はブラウズしてはダメよ」


「そんな可能性があるんですね……わかりました。サーチも危険でしょうか?」


「それも含めて検証する必要がある。王都にいるケインを訪ねてみましょう。彼は私の元パーティメンバーで、今は魔力研究の第一人者。彼ならレイのサーチとブラウズが残滓を残すのかどうか検証出来るはずよ。残滓を残さないならとんでもないスキルだわ。まさに神の瞳……」


「そんなにすごいスキルだったんですね……」


「初めてレイを見た時、この子は普通じゃないなと思ったけど、想像していたより百倍ヤバい子だった……」




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