第68話 相変わらずのご様子
手のひらに収まるぐらいの〔三つの光〕。
〔古の妖精〕さんかな?
「千年ブリノ人間」
「ココに来タトイウコトハ、〔ルーチェ〕ノ体ガ目的カ?」
「何ノ用デ来タ?」
〔三つの光〕が不安そうに警戒しながら、クルクル飛び回ってる。そうだよね。大事に守ってきた“大好きな人”を奪われないか心配だよね。
〔ルーチェ〕という名が出てきたけど、それがこのエルフの名前なのかも。私は彼等を刺激しないように、ゆっくりお願いした。
「あの……。
私の友達にルーチェさんの体を貸してほしくて、ここに来たの」
「ワワワ!
コノ人間、〔ルーチェ〕を知ッテル!!」
「何故、何故、何故!?」
「ソレハ、サッキ、オ前ガ言ッタカラダ」
古の妖精さんが慌て始めた。
なんだか久しぶりの人間に冷静でいられないみたいだった。
「〔ルーチェ〕ハ我等ノ宝」
「〔ルーチェ〕ノ体ニ、違ウ魂」
「ソレハモウ、別人。〔ルーチェ〕ジャナイ」
「……デモ、コノ人間、甘イモノ持ッテル」
「妖精文字、読ンダ」
「妖精ニ、寄リ添ウ気持チハ、アリソウ」
私が黙ってても、次々に話が進んでいった。
「外ノ、大キナ魔法陣ト、同ジ」
「闇ノ属性ノ者ノ中ニモ、カスカニ魔法陣ト同ジ甘イモノ」
「甘イモノ、甘イモノ」
「「「イイダロウ、暫シ〔ルーチェ〕ノ体ヲ貸ソウ」」」
アルムス大陸に張った結界の魔法陣には、ロザロザの歌も微かに組み込まれていたみたい。三人の妖精さん達は、すぐに魔法でルーチェさんの体にロザロザの魂を移してくれた。
クリスタルが「スゥッ」と消えて、ルーチェさんの体が出てくる。その姿に、(シンデレラがキレイなエプロンをつけたみたいだな)と思った。
千年前の服装は、ボタンもチャックもフックもついてなさそうだった。首の所は紐を通す穴がついていて、紐で縛って首の後ろで結ぶタイプの上着に。ヒラヒラスカート。スカートも紐で縛るようになっているように見えた。
どちらも、汚れが目立たないような、くすんだ碧色をしている。生前のルーチェさんが、控えめで優しい性格だったのでは? と想像できる色だった。
「この髪型、気に入りませんわ」
「ロザロザ~!!」
抱きつこうと手を広げていたのに、思わず力が抜けて、その場に崩れ落ちてしまった。
開口一番それなの!?
まずは妖精さんに感謝よ!
良かったね。と言う思いと、ロザロザの失礼な態度に、私は口をパクパクして驚いた。古の妖精さんも驚いた。
「ギャァァッ! 目ツキガ、鋭イ!!」
「〔ルーチェ〕ジャナイ!!」
「我等ノ〔ルーチェ〕ハ、モット優シイ!!」
「当たり前でしょ?
私は〔ルーチェ〕ではなく〔ロザリー・バードック〕ですわ」
何か……、古の妖精さんをだましたみたいで、申し訳なく思えてきた。
「〔ロザリー〕ハ元気」
「元気ナ〔ルーチェ〕ノ姿」
「元気、元気」
〔ルーチェ〕と〔ロザリー〕は別人。
すぐにそのことを受け入れた〔古の妖精さん〕。偉そうなロザロザの姿を喜びだした。大好きな人の元気な姿が再び見れたのは、やっぱ嬉しいみたい。
〔古の妖精さん〕は、すぐにロザロザの髪型を大きな縦巻きロールにした。
帰ったらみんな、「ロザリー様が二人に!!」ってビックリするだろうねと、話しながら洞窟を出ると、ロザロザが言った。
「私、このまま旅に出ますわ」
それは、予想しない展開だった。
これから、楽しく一緒に過ごすものだと思っていた。
「一度殺されて思いましたの。
人はいつ死ぬかわかりませんから、やりたいことを後回しにしてはいけませんわ」
「……やりたいこと」
「前に言ったでしょ?
私、“世界の覇者”になりたいんですの」
「え゛ぇ゛っ!?」
私に取り憑いている間に、魔法に対する自信がついたと言うロザロザ。
体のどこに意識を向けながら呪文を唱えているかとか、覚えたらしい。昔は〔ロウソクの炎〕しか出せなかったけど、今なら〔炎の壁〕が出せると胸をはっている。ロザロザ……なんて恐ろしい子。
「“世界征服”じゃなくて“世界の覇者”ですから、安心なさい」
そう言って、ロザロザは空を見上げた。
「ゼア!!
私がわかるでしょう?
迎えに来なさい」
そう叫ぶと、ロザロザの周りに風が舞った。
ゼア?
ゼアが来るの?
ここ、国外ですよ?
混乱していると、空から〔銀色のドラゴン〕が現れた。
〔赤いドラゴン〕の両親より二回り小さいけれど、人間より明らかに大きい。
「さぁ、行きましょう」
そう言って、ロザロザが〔銀色のドラゴン〕に抱きつくと、ドラゴンは羽ばたいていった。
「え? え? え?
今の、ゼアなの!?」
「そうだよ☆
ゼアは〔ドラゴン〕と〔人間〕のハーフだって、前におしえたでしょ?」
妖精さん!!
いつのまにか「ふ~っ」と飛んできて、得意げに語り始めた。
「ティアが〔ドラゴンのこども〕に好かれたのも、ドラゴンの両親が火を吹いている最中に突然空中で止まったのも、ゼアの影響だよ☆」
「え?」
「ゼアは〔ドラゴンの王族〕でもあるんだよ」
妖精さんが言うには、ゼアのお母さんがドラゴンの王族だとのこと。
ゼアは自らの存在を薄くするスキルを持っているので、ドラゴンの親子には“無視できない何かがいる”としか感じ取れなかったんだって。
で、ゼアといつも一緒にいるティアから、ドラゴンの匂いか微かに移っている。だから、微かだけれど“ドラゴンの匂い”がするティアの側が、〔ドラゴンのこども〕には安心できたと……。私が抱っこしても嫌がらなかったのも、学園でよく同じグループで過ごすから。…………ちゃんと、理由があったのね。
「待テ~~~~!!」
「〔ルーチェ〕ノ体。見張ル」
「変ナコトシタラ、魂ヲ、引キ剥ガスカラナ!」
三人の〔古の妖精さん〕は、ルーチェさんの体が心配みたい。ロザロザとゼアを追いかけて、空に飛んでいった。
――――――その後、他国でロザロザの物騒なウワサがたつ。それを私が知るのは、そんなに遠くない未来だったりする。
×××××
その頃、アルムス大陸の西側では――――――。
「“ドラゴン殺しの死霊使い〔暗黒聖女ロザリー〕”だと?」
「はっ。
今、〔魔法学園〕に通う貴族の間で、密かにウワサになっております!」
部下からの報告を聞いて、〔赤い髪の男〕が不機嫌になった。
端正な顔だちのその男は、アルムス王国の西にある小国が集まって作った〔連合軍〕を取り仕切る男だった。
「こんなことになる前にどうにかするべく、お前達をアルムス王国に派遣したのに、役立たずどもめ!!」
「申し訳ありません!!
あのときは、一般市民の使う低級魔法で喜ぶだけの、ごく普通の貴族令嬢にしか見えませんでした!!!!」
心から反省する部下に苛立ちながら、〔赤い髪の男〕は言った。
「こうなったら、俺が直接行く!!!!」




