表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢にとりつかれました!  作者: 葉桜 笛
妖精現る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/92

第52話 歌います! (挿絵有り)


「行こう! ロザリー!!

 今夜は大きい結界けっかいを作るから、ゴリゴリモンスターが出現しゅつげんする前に出発するよ!」




 夜。

 妖精さんに言われ、バードック家の別荘べっそうび出した。

 ローリーはスイカを気に入ってくれたので、出発前しゅっぱつまえと帰ってからとでスイカをあげればこころよく私を乗せてくれる。

 だから、ドレスを着ていても乗りやすい。


 そう!

 今夜の私は寝間着ねまきではない。

 ドレスを着ている!!

 しかも、目立めだちにくい紺色こんいろ

 着替きがえやすそうなのをあらかじめ用意よういしておいた。

 夜にまぎれやすいし、これならヘンリー王子に「寝間着は危ない」と、心配されることなくコッソリ歌ってコッソリ帰れる。

 

 大きな結界けっかいれたら、夜に出かけるのも今夜で最後。そうしたら、聖女(さわ)ぎもおさまるにちがいない。そのあとは……少しずつヘンリー王子と心の距離をちぢめていけるよう頑張がんばる。うん。


 それにしても……気になることが一つある。

 私はローリーのおかげで馬を乗りこなしている気分にひたりながらも、妖精さんに聞いてみた。



「妖精さんって、ずっとそばにいてくれるものだと思ってたけど、学園にころにはいつも何処どこかに行っているよね?

 昼間は何処どこに行ってるの?」


「ロザリーの近くにいてもあま~い恋や愛の感情を食べられそうにないから、愛をダダれさせている人をさがしに行ってる☆」


「……へぇ」



 妖精って大食いなのかしら?

 なんか、いつも食べ物の話になるのね。



「でね?

 学園を飛び回ってて気付いたんだけど、ヨメナって子はあたしのこと見えてないよ?

 結界を張れるなら〔光の妖精〕のこと見えるはずなのに。

 あの子が聖女っていうのはあやしいね」


「え!?

 ヨメナ様も結界けっかいっているんだと思ってたけど、違うかもしれないの?」



 じゃあ、昨夜さくやはどうして聖女っぽい格好かっこうでモンスターのあらわれる場所にいたんだろう?


『決まっているでしょ?

 あなたの手柄てがら横取よこどりするためですわよ?』



 ロザリーにそう言われても、怒りの感情はわいてこなかった。ヨメナ様のおかげで、注目ちゅうもくされずにすんでいるから助かっているんだもの。



『手柄どころか、ヘンリー王子までとられますわよ?』



 胸のおく一瞬いっしゅん痛みを感じたけど、何も考えられなくなった。

 ダメダメダメ。

 とりあえずは結界けっかいをはることを考えないと!








 今夜は海岸ではなく、大陸の中心に近い街に来た。

 オシャレな街並まちなみも、誰もいないととても寒々(さむざむ)しい。

 ポツンポツンと等間隔とうかんかく設置せっちされた街灯がいとうだけが、わずかにあたたかさを感じさせてくれる。


 本当に大陸をおおうほどの結界をれるかな?

 まぁ、私は歌うだけで、魔法を使うのは光の妖精さんだから、妖精さんが出来ると言うなら出来るんだろうけど不安になる。



「ここの舞台ぶたいがね、とっても良いんだよ☆」



 ノリノリで妖精さんがゆびをさしたのは、広場の舞台。

 とても大きくて、ひんがあって立派りっぱ


『あら、ここって……』


 ロザリーがなつかしそうに言う。

 この舞台は見たことがある。

 ラーチ先輩が〔夏を呼ぶ式典〕で歌を歌った舞台!!

 


「え?

 ここグイマツ王国!?

 いつのまに国境こっきょうこえたの?」


「すぐとなりの国だし、森から行けば警備が手薄てうすなところもあるんだよ☆

 いつもまわっている妖精の情報量を見くびらないでほしい。えっへん!」



 得意とくいげな妖精さん。

 そっか。妖精はすごい早さで飛べるらしいもんね。



「大自然や神にいのりをささげるために作ったこの舞台は、歌声が広く広く遠くにひびきやすいように設計せっけいされているんだよぉ。

 きっと大きな結界を張れると思うんだ☆」



 そう言われて、舞台をよく見てみると、大きな音響反射板おんきょうはんしゃばんを二枚見つけた。

 オシャレなデザインだと思ってたソレは、楽器の演奏をより観客かんきゃくとどけられるように、うたの声はもっと鮮明せんめいに届くように、音を反射はんしゃしやすそうな長方形の形をしていた。こんなに大きいのに、存在そんざいひそませて設置せっちしてあるってすごい。

 そして、さらに、空にも音がひびかせられるようにと、舞台のかべにも工夫くふうがしてあるようだった。


 ぱっと、カクカクした斬新ざんしんなデザインかべだなとしか、思わなかったけどすごいわね。この舞台。

 これなら、この舞台が、私の力を底上そこあげしてくれそう!

 歌は得意とくいじゃないけど、力不足ちからぶそくな所はこの舞台がおぎなってくれそうな気がする!!

 なんてたのもしい舞台なの!

 何だかやれそうな気がしてきた。



 妖精さんがキリッとした目で私を見る。

 私は深くうなずいた。



「じゃ、いくよ! ロザリー!!」


「うん!」



 妖精さんが光るチョーカーになって、私のくびきつく。

 すると私の髪は金色に変わり、持っていた魔法のつえびてスタンドマイクわりになった。

 私はしずかにいきった。



――――せばいのか、引けば良いのか、恋はよくわからない



 すご~い、すご~い!

 歌ってみて、この舞台の凄さがとてもよくわかる。

 今まで海岸かいがんで歌ってたときと全然ぜんぜんちがう!!

 少し声を出しただけで、すっごくひびくから、自分の声がしっかり聞こえる!

 これなら余計よけいな力が入ったりしない!!



――――女の子らしさって、いったいどうしたら良いの?



 妖精さんの魔法で、歌声は〔光の線〕になって空にがっていく。

 その光の線に、他の妖精さんが集まってきているのか、いくつか花びらがいだした。



――――昨日きのうもやらかし、今日もやらかし、失敗しっぱいばかり



 妖精さんが好きなのは、〔愛〕や〔恋〕の感情。

 お姫様()っこは毎回ビックリするなぁとか、気がつくといつも近くにいたなとか、ヘンリー王子のことを思い出しながら歌ってみた。

 思い出すだけで、ワクワクするようなキラキラするようなこの感情がきっと妖精さんの好物こうぶつなんだよね。



――――でもね。でもね。きっと大丈夫。



 キラキラと夜空にえがかれていく魔法陣を見上みあげながら、ヘンリー王子と一緒いっしょにこの景色けしきを見れたらよかったのになと思った。

 だって、とってもキレイなんだもの。

 そんなことをかんがえていたら…………次の歌詞かし忘れた!






 あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!!!

 想いをめることに夢中むちゅうになりすぎた!!


 あわあわあわあわあわあわあわあわあわあわ。

 どうしよう!?






 やっぱり夢の中で歌詞をおぼえるとか無理だったのよ!

 あせがダラダラと出てきた。

 ドレスは汗をいにくい素材そざいだから、生地きじはだりついてきて気持ち悪い。


 首にいている妖精さんも、さすがに私の異変いへんに気がついた。


「ロザリー?

 とりあえず、いて歌詞を思い出すんだよ!」



 そんなこと言われたって、頭の中はパニック状態じょうたい

 一生懸命に思いだそうとするけど、何にも……そう! 何にも思い出せない!!



――――――他のみんなと同じように出来なくていい。あなたは、あなたなのよ?



 どこからか歌声が聞こえてきた。

 これ、歌の続きだわ。

 おかげで、歌い続けられる。



――――人にはこのみがあるのよ(人それぞれよ)



 私の歌にハモリを入れてきた!

 このたのもしい歌声は…………頭の中のロザリー!?


『オ~ホッホッホッホ!

 わたくしも夢の中であなたと歌っておりましたのよ?

 歌詞もメロディーもハモりだってバッチリですわ!!』


 ロザリーが一緒いっしょに歌ってくれる!

 なんてたのもしいの!?


わたくしは体を動かせませんから、わたくしの歌声はきっとあなただけにしか聞こえないのでしょうけれど、気分がちょっと変わるでしょ?』


 うんうんうん!

 全然ぜんぜんちがう!!

 とっても心強い!!!!



――――ステキな出会いがきっとある



 ロザリーのおかげでなんとか持ち直し、私達は二人で「きらめき☆魔法学園」のテーマソングを歌った。

 こころなしか、さっきより光の線がふとく、花びらはさっきより多くなってきた気がする。きっと、これが“心強こころづよい”ってやつね。一人で歌ってたときより世界が違って見える。



――――恋の魔法もおしえてくれればいいのに



挿絵(By みてみん)



 まるでロザリーがすぐとなりにいるように感じる。

 ううん。 

 それよりもっと近く。

 体がほぼかさなっていると感じるぐらい近い――――――。



――――きらめきの魔法学園 Doki Doki☆






*******************




 ロザリーが歌い始めるほんの少し前。

 ヘンリー王子は、未知みちのモンスターが次にあらわれると予測よそくされる海岸かいがんに向かうべく、護衛ごえいのジェイクとフォスターをれて馬を走らせていた。

 貴族の別荘地から町に出る山道やまみちを下っているとき、白い馬車が町中まちなかを走って行くのを見た。


(あれは、ヨメナ嬢の馬車?)


 ヨメナ・ストークス伯爵令嬢が乗っていると思われる馬車が走りったあと、たまたま居合いあわせた町の人が「あ、聖女様!」「聖女様がんばってください!」と激励げきれいの声を上げていた。

 もしかしたら、たまたまではないかもしれない。

 最近は毎晩まいばん聖女があらわれるので、聖女見たさに夜に出歩であるく人がえている。

 そんなことを思っていたら、どこからともなく歌声が聞こえてきた。



―――――――・・・・・・・・・・・・き。



(…………まただ……)


 この歌声を聞くと、何かが流れ込んできて胸が熱くなる。

 はっきり聞こえないけれど、なぞの聖女の歌声だ。

 とても遠くから聞こえる。

 今日は、そら全体からそそぐように聞こえるから、どの方角ほうがくにいるのか見当けんとうがつかない。

 見上げれば、夜空に光の線でえんえがかれ始めていた。


(大陸をおおうほどの魔法陣を描こうというのか?)



――――――好き

 


(え?)



――――――――大好き



 歌は、かすかにしか聞こえないのに、それとは別に、聖女の言葉がハッキリ聞こえた。

 おどろいてあたりを見回みまわすと、ジェイクとフォスターが不思議そうにこっちを見る。



「声が……」

「そうですね。殿下でんか

 どこからか歌声がします」

「遠くてハッキリわかりませんね」



 どうやら聖女の言葉は自分にしか聞こえないらしい。



――――――ヘンリー王子のことが大好き



 すぐに彼女のもとへけ出したい衝動しょうどうにかられた。が、今回の魔法陣は大きすぎて聖女がどこにいるのか見当けんとうがつかない。

 とりあえず、手がかりは町の人が“聖女様の馬車”と認識にんしきしていた馬車だけ。

 ヘンリー王子は、さっき走りった()()()()()()あとうことにした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ