表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢にとりつかれました!  作者: 葉桜 笛
妖精現る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/92

第48話 マリーの過去(挿絵有り)

マリー目線のお話です。

 マリーはおさないころ、一つ年上のジョン・クネサム子爵ししゃく令息れいそくと、よくいかけっこをして遊んでいた。


 父親がおさめる領地りょうちに、小さな鉱山こうざんがある。

 宝石の加工でざいしていたジョンの父親が、ときどき石の買いけに来ていた。

 親同士が仕事の話をしている間、マリーとジョンは野山のやまで走り回っていた。



「あはははははは! まって~!」



 ただ、ジョンの後ろを追いかけるだけで、マリーは楽しかった。

 同じ年頃としごろのこどもが近くにおらず、いつも大人に遊んでもらっていた。だから、力いっぱい遊べてうれしかった。大人は普段ふだん仕事をしているせいか、すぐ「つかれた」という。

 元気に走り回る一つ年上のジョンは、最高の遊び相手だった。


 ジョンの方はジョンの方で、ワクワクしていた。

 家が王都おうとにあるため、田舎いなかの大自然がめずらしくてしょうがない。森や林には都会では見たことのない昆虫がいる。川に行けば魚が泳いでいる。バランスをとりながら、川の中から顔をのぞかせている石から石にびうつる遊びは、スリルがあって楽しかった。



 マリーが10歳になったころ

 ジョンの父親の方から「こどもたちを婚約させてはどうか」と持ちかけてきた。「こども同士、なかが良いから」というのが表向きの理由。本当のねらいは“商売のため”というのが見え見えだった。鉱山の石を独占したいようだった。

 それでもマリーの父親は、「娘とジョンは仲が良いし、ジョンの家はお金持ちだから幸せな結婚になりそうだ」と婚約の話を了承りょうしょうした。

 婚約してもマリーとジョンの関係は特に変わることなく、おたがいに“楽しい遊び相手”だった。



 マリーが12歳になったある日、ジョンが変わった。

 森や川を、走り回らなくなった。



「ジョン。どうしたの? 体調が悪いの?」



 本気で心配するマリーに、ジョンは言う。



紳士しんし野山のやまを走り回らないんだぜ」



 確かに、マリーとジョンの父親は、野山を走り回って遊ばない。ジョンは大人になろうとしているのだなと、マリーは思った。


 そして、ジョンは“紳士”にこだわるようになった。「紳士は乗馬をするんだ」といって馬に乗ったりした。これは、田舎いなか育ちのマリーの方が得意とくいだったため、マリーが教えてあげた。いつもジョンに教えてもらってばかりだったので、新鮮しんせんで楽しかった。


「紳士はポーカーをするんだ」といわれた時は、苦労した。

 なかなかルールをおぼえられない。

 しかも、マリーはすぐ感情が顔に出る。

 マリーは負けてばかりだった。



 そして、ある日。

 突然とつぜんジョンから、「婚約を白紙はくしもどそう」といわれた。

 12歳のマリーは、いまいち婚約というものを理解しきれていなかったため(私はポーカーが弱いから仕方しかたない)と思った。

 〔婚約〕を漠然ばくぜんとしか理解できていないマリーでも、ジョンに好きな人が出来たのはわかった。


 

(ジョンが変わったのは、ステキな女の子と出会ったから)



 顔も名前も知らないけれど、お上品じょうひんでキレイな子なのだろうと、想像できた。

 ジョンの話では、彼女の家もマリーの家と同じように鉱山こうざんを持っているらしい。しかも、向こうの方が広い。

 そして、ジョンより身分みぶんが上の[伯爵令嬢]。



「俺は、野生動物みたいなお前より、可憐かれんで品があるお嬢様と結婚する」



 村の人も街の人も、マリーを「お嬢様」と呼ぶ。

 マリーも一応いちおう貴族のはしくれ。



(私も“お嬢様”と呼ばれるのに、その子とは何がちがうんだろう?)



 よくわからないまま、ジョンとの関係は終わった。

 ジョンの父親も、石の買い付けには来なくなった。




 おどろいたのは、父親にくっついて参加したガーデンパーティーでのこと。

 父親が少し離れたとたん、同じ年頃としごろの子がよってきて「婚約者を取られたんだって?」と聞いてきた。



(とられた?)



 マリーは考えた。

 ジョンとの婚約がなくなったのは、ジョンが他に好きな人ができたから。

 そのあと、ジョンとその子は婚約したらしいけど、これを取られたというのだろうか?

 

 一生懸命に考えていたら、「やっぱり取られたんだ」といってその子は他のこども達の所に走って行った。



(え? 私、何も言ってないけど……?)



 こども達は熱心に噂話うわさばなしに花をかせていた。

 どうやら、マリーがすぐに返事をしなかったから、取られたことになったらしい。

 この日から、何かのパーティーに参加するたびにウワサされるようになった。



「ほら、あの子よ」

「ジョンは、かっこ良くてお金持ちだから、良いえんだったのにね」

相手あいてがヨメナ様じゃ、取られても仕方しかたがないわ」

「ヨメナ様は、美しくて品があるもの」



 みんなかげでマリーのことを、「かわいそう」という。

 マリーははらがたった。



(あぁ! 腹がたつ!!

 み~んな聞こえてんのよ!

 言いたいことがあるなら直接ちょくせつ言ってくればいいのに!!)



 彼等かれらは、マリーに何か言いたいわけじゃない。

 人の恋愛話をうわさして、自分の好奇心を満たしているだけ。

 しかも、マリーの親がいない時をねらってうわさする。

 何か言い返されるのをけるためだ。

 では、マリーは言い返さないのかというと、そうでもなかった。



「ちょっと! なに人のことコソコソとウワサしてんのよ!!

 言いたいことがあるなら、ハッキリ言いなさいよ!」



 マリーに言いたいことがあるわけでもないので、その場がシーンとなる。

 


「もともと親同士が決めた婚約だったし、私は気にしてないんだから“カワイソウ”でも何でもないのよ!」



 言った所でムダだった。「すてられて、ヤケになってる」だの「強がってかわいそう」だのと言われる。

 それにしても、何故なぜこんなに自分が注目されるのか?

 ウワサしたいなら、ジョンとヨメナ様とやらの事だけウワサすればいいのにと、マリーは思った。そして、その原因げんいんがわかった。



 あるパーティーでのこと。

 


さきほどの方が、ヨメナ様の婚約者!」

「とてもカッコイイですわ!」

「しかも、クネサム家はお金持ち!」



 マリーの元婚約者のジョン・クネサムは美しい顔に薄紫うすむらさきの髪で、まるで妖精か精霊のような容姿ようしをしていた。

 なので、女の子はみんなジョンのことを知りたがった。

 そんな彼女達に、ヨメナは「いろいろとおくりものをしてくれたり、優しい人よ」と答えた。そして、話の途中とちゅうで「でも……」と顔をくもらせた。



「彼には、他に婚約者がいたのに……」



と、悲しそうにいう。

 それにあわてたまわりの子達が、「仕方がないですわ」「お二人はとてもお似合いです」となぐさめる。

 それでも、ヨメナが暗い顔をしているので「ヨメナ様の御実家ごじっかの方が、ジョン様の力になりますもの」と慰めて、仕方がないという雰囲気になっていた。

 ヨメナ様は悲劇のヒロイン。

 そういう雰囲気ふんいきだった。



「ちょっと!

 私は気にしてないから、“申し訳ない”なんて言ってないで普通に幸せになれば?」



 マリーがそう言うと、「はい。マリー様のぶんかならず」とヨメナが答えて話は終わった。

 なのに、別の所で「私のせいで、ヨメナ様がれてしまったの」とかいっている。すると「まぁ! おかわいそうに」「ヨメナ様もマリー様もかわいそう」という反応はんのうになっている。



(ダメだ。

 私が何を言おうと、ウワサはおさまらない)



 これでは、いつまでたってもマリーはれものあつかい。

 新たな婚約の話も当分とうぶん来ないだろう。

 マリーはパーティーに参加するのをやめた。






「はぁ……。ヨメナ様が聖女………………。

 “人の心をつか存在そんざい”という点では、そうかもねと思うけど……」



 放課後。

 今日はマリーのむかえの馬車が遅くなりそうとのことだった。

 学園のカフェにでも行こう。

 そう思って、マリーはひとごとを言いながら、中庭を歩いていた。



「……でも、そんなことあるかしら?」



 校舎の裏側の方から声が聞こえてきた。



(この声はヨメナ様?

 また取り巻きと何か話しているのね

 かくれているようで全然ぜんぜん隠れられていないこと、知ってるのかしら?

 それとも、わざと?)

 


「ヘンリー王子は本気で聖女をさがしているようです」

「金髪で髪がお尻より下なんてヨメナ様しかいませんわ」

「もしかしたら、寝ている間にヨメナ様の別人格べつじんかくか何かが、しんの力を発揮はっきしたのかもしれないですわ!」



 どうやら、取り巻きは何としてでもヨメナを聖女にしたいようだった。

 〔聖女の友人〕という肩書かたがきがしいのかもしれない。

 ヘンリー王子が聖女と結婚するなら、未来の王妃の友人になる。是非ぜひとも聖女になってほしいところだろう。



「もしも、もしもですよ?」

「ヘンリー王子に結婚をもうまれたら、どうなさいます?」



 興奮こうふん気味ぎみに質問する取り巻きに、ヨメナはこまったように答えた。



「……王子様からの申し出は……ことわるわけには、いかないわよね……」



 その返事に取り巻きが一斉いっせいに「わぁっ!」と声を上げ喜んだ。

 困った顔をしているけれど、どこか嬉しそうなヨメナ。



(ヘンリー王子を取る気だわ!)



 そのとき、マリーのとなりで青い顔をしている幼なじみに気付いた。

 何年ぶりかに会う幼なじみも、偶然ぐうぜんヨメナの話を聞いてしまったらしい。

 マリーは、ため息まじりに話しかけた。



「ジョン。あんた、あんなこと言われているわよ?」



 噂話うわさばなしをするにしても、もっと場所を考えてほしい。

 幼なじみと嫌なタイミングで再会したではないかと、マリーは彼女達をのろった。ひさしぶりに会った幼なじみは、青い顔のまま答えた。



挿絵(By みてみん)



「いいんだ。

 ヨメナが聖女なら、仕方しかたがない」



 意外だった。

 大恋愛をしてむすばれたように見えたのに、あっさりあきらめるという。



「それより、マリーの方は大丈夫なのか?」


「は? 何が?」



 何故なぜ久しぶりに会った元婚約者に心配されるのか、マリーにはわからなかった。



「〔暗黒令嬢〕だよ!

 お前、暗黒令嬢に人体実験じんたいじっけんされたんだろ?

 今はヨメナの〔聖女親衛隊〕のほうが〔暗黒令嬢派〕より勢力せいりょくをのばしてきてる。

 け出すなら今だぞ?」






「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 バカなの? ウワサばっかり信じて、バカ丸出し!

 ロザリー様は人体実験なんてしないわよ?」






「でも、マリーは暗黒令嬢に何かされたから、精霊を呼べるようになったんだろ?」


「ロザリー様のアドバイスをもとに、精霊の聞き取りやすい発声に力を入れただけよ!

 ヨド先生がおしえていることを、ロザリー様がさらに細かく教えてくれただけ!!」



 はらが立ったので、言いててマリーはその場から立ちった。

 たまに、「人体実験されたんだろう?」とか、聞かれることはある。そういうとき、思わせぶりに「ふふふん」と笑って流す。

 あまりのマリーの上達じょうたつぶりに、そう思わずにはいられない生徒を見て優越感ゆうえつかんひたれるからだ。

 でも、ジョンに言われると腹が立った。

 


(婚約者を取られそうな時に、なんで私の心配をするのよ!!)



 マリーはイライラした。



(もう!

 なんで私はこんなにイライラするのかしら?)



 イライラしすぎて、何かをなぐりたい気分だ。

 そして、しばらく歩いて、ふと思った。



結局けっきょくヨメナ様は〔光の魔法〕使えるの? 使えないの?

 外見がいけんが聖女と一致いっちしても、〔光の魔法〕が使えないと〔聖女〕でもなんでもないわよね?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ