第47話 新たな[光の魔法使い](挿絵有り)
今日はよく寝た。
9時ぐらいまで寝たんじゃないのかな?
魔法学園が基本3時間授業で助かった。
"貴族は何かと時間がかかるから”って理由で、授業は11時に始まって14時40分には終わる。
基本的な勉強は、こどもの頃から家庭教師に教えてもらっているから、この時間割でいいみたい。
魔法学園で習うのは、魔法に関することだけ。
魔法が使えなかったり、魔法に興味がなけば通わなくても良いぐらい。中にはサフラン生徒会長みたいに、魔法騎士になりたい人もいるけどね。
今朝はティアとゼアが馬車で迎えに来てくれた。
馬車での会話は、未知のモンスターの話。
「足が……とても奇妙な形をしたモンスターなんです」
ティアは、ゴリゴリモンスターを見たらしい。
もしかして、寝間着姿で歌を歌った私のことも見たのだろうか……。
夢遊病だと思われるかな?
あ! でも、ティアは光の魔法を使えるから、歌で結界を作ることを知っているかも!
あれこれ考えながら、ティアの次の言葉を私は待った。
「またいつ現れるかわかりませんから、しばらく夜の外出はひかえてください」
「え? うん。そうね。そうする。危ないものね」
よかった!
見られてない。見られてないわ!
魔法学園についたら、ティアが学園の生徒に囲まれた。
みんなキラキラした目でティアを見ている。
これこそ、あるべき聖女の姿よね(なぜかまだ聖女認定されてないけど)。
「ティア様! お噂は聞きました!!」
「未知のモンスターが現れたそうですね!」
「金色の髪の女性が、結界をはったと聞きました!」
「それって、ティア様ですよね?」
「「「「「昨夜はアルムス王国のためにご尽力いただき、ありがとうございます!!」」」」」
みんなもゴリゴリモンスターが現れたことを知っているの!?
いつもいつも、ウワサが広まるの早いわね。
『魔法学園の始業時間が遅いからですわ。
ただでさえ、退屈を持て余す貴族社会。
この世界では、退屈しのぎに10時の“おやつの時間”に、お茶会を開く者もおりますのよ』
そうなの!?
おやつの時間、あなどれないわね。
「あの~。
人違いだと思います」
みんなが「ティア様ティア様」と盛り上がる中、ティアはそれは自分じゃないと言い出した。
「確かに私は昨夜、結界をはりました。
でも、それは[連合国側]です。
メイス王国は連合国に入っているので……」
申し訳なさそうに説明するティア。
みんなは「あぁ、そうだよね」「連合国優先になるよね」とがっかりした。
でも、そうなると「金髪の女性とは?」という話に。
[光の魔法]でないと結界ははれないそうなので、ティアの他に誰かが[光の魔法]を使えるようになったのかとあちこちで推理合戦が始まった。
それにしても、昨夜は私も結界をはったけど他にもはれる人いるなら、もっと早く来てくれれば良かったのに。そうしたら、寝間着姿で夜に外に出ることにならなかったのにね。
とりあえず私は見られてなさそうだったので、いっか。
ゼアはウワサに興味はなさそうだった。
こそっと「ロザリーは今日も元気か?」と聞いてきただけ。
私の中のロザリーは元気ですよと伝えると、満足そうにほほえんだ。
二人がラブラブしていると、また私がドキドキしすぎてロザリーごと他の誰かの体に入る可能性があるから、しばらくは生存確認だけにしておくんだって。
私もあれはもうこりごりだけど、ちょっと申し訳なく思う。
この日は、“新たな光の魔法使いは誰なのか!?”というウワサで持ちきりだった。
マリーとスピカも噂話が気になるらしく、人がウワサしているのを盗み聞きしてはおしえに来てくれた。
「ロザリー様。どうやら髪はかなり長いそうです」
「お尻より下と聞いたので、スピカより長いかもしれません」
「聖女は白いドレスを身に纏っているようです」
「夜に白いドレスを着てたら目立ちますね」
ウワサが広がる間に“新たな光の魔法使い”から“聖女”に呼び方が変わっていった。
長いから言いやすくしただけだろうけど、イラッとした。ティアの肩書きを、知らない誰かに取られた気分になる。
[きらめき☆魔法学園]の世界では、ティアが聖女なのに!
ウワサ話を聞くとイライラするけど、おしえてくれるマリーとスピカの存在にはとても助かった。
私が近づくと、ほとんどの生徒は逃げるか「暗黒令嬢ロザリー様!」といって端に避けてお辞儀をするものだから、ウワサの盗み聞きさえ難しい。もし聞けても、私に対するヒソヒソ話ぐらいだもの。
でも、最初は楽しそうにおしえてくれていたマリーとスピカの顔色が悪くなってきた。
どうしたんだろう。特にマリーの方が苦しそうに見えた。
先に口を開いたのは、スピカだった。
「……ヘンリー王子が、聖女を、……探しているそうです」
「そうなの?
まぁ、聖女はいったい誰なのか気になるわよね」
「ロザリー様!
そういう問題ではありません!!
“聖女を探し出して、結婚を申し込むのではないか”っていうウワサです!」
「会ったこともないのに、見つけたらすぐ結婚を申し込むの!?」
「はい。ウワサでは、そうなっております」
昨日の今日で、もう、結婚を申し込む……。
しかも、会ったことのない相手に!
スピカは私のことを思って悲しんでくれてるみたいだけど、私には実感がわかなかった。「……私にはどうしようもできないから、見守るしかないかな……?」そうとしか言えなかった。
「……その、聖女候補が……ヨメナ・ストークス伯爵令嬢ではないかと、ウワサされています」
マリーが、言いにくそうにおしえてくれた。
「私の、婚約者を……奪い取った女です」
これには驚いた。
マリーの婚約者を奪った人……。
それは確かに言いづらい。
「なら、もう婚約者がいるってことじゃない」
表情が明るくなるスピカに、「そういう問題じゃないのよ」とマリーはいった。
「ロザリー様……。
上手く言えないんですけど、気をつけた方がいいです……」
「そうは言っても、私は別に聖女を探してないし、接っする機会が無いわ」
「……確かにヨメナ様は学年が上ですから、会う機会はほとんどありません。
でも、気をつけてください」
「……うん。マリーがそこまで言うなら……気をつける」
わけがわからないままマリーに約束したとき、教室にヘンリー王子が入ってきた。
クラスメイトが素早く王子を囲み、新たなウワサの真相を確かめようと質問を投げかけた。
「殿下!
聖女を見つけたら、結婚を申し込むって本当ですか!?」
正直、本人によく聞けたなと思う。
そのぐらいみんなウワサにのめり込んでいるのだろうけど……。
と、いっても、私もこの質問は気になる。
聞き耳を立てて見守っていると、ヘンリー王子と目が合った。
王子はそのまま言う。
「未知のモンスターへの対抗策を持っている相手だ。
国としては、彼女からいろいろと話を聞きたい。それだけだ」
……どうして、私と目を合わせたまま、そんなことを言うのだろう?
目をそらそうにも、何かそらしてはいけない感じがする。
話が終わっても目を合わせたままなんて、ヘンリー王子はいったい何を考えているのだろう…………?




