〈第八夜〉 暗黒歌姫★ロザリ・ロザリー(挿絵有り)
夜の野外ステージに立ち、いくつものスポットライトに照らされ、私はマイクを握っていた。
不思議と言葉が出てくる。
「みんな~! 今日は来てくれてありがと――――!!」
息を切らしながらステージから声をかければ、「わぁぁぁぁぁぁ!」と歓声があがった。観客は500人ぐらい。公民館とかのホールに入る人数よりちょっと多いぐらいかな?
どうやら何曲か歌を歌って、盛り上がっているところらしい。
私は歌に自信が無いのに、こんなことになってるなんて……。
これは夢ね!?
よく見れば観客の中に、宮廷魔法騎士なのに家庭教師をしてくれているアイザック先生と、魔法学園で魔法の実技を担当しているヨド先生もいる。生徒思いの良い先生だわ。………………もしかして、そう見せかけたアイザック先生とヨド先生のコンサートデート?
『あなた……夢の中でも、想像が止まりませんのね?』
「ロザリー!!」
ロザリーが私の隣に現れたということは、やっぱり夢なのね。
観客席の最前列にはゼアがいて、〔ロザリー〕と書かれたウチワを振っていた。本当に愛されているわね。
ヘンリー王子はいないんだなと思ったら、……いた! 左端の方に! サングラスに黒い服で、腕を組んでいる。
音楽関係の人が、〔これから売れそうな歌手がいないか、ちょっと探りに来ました〕的な雰囲気を出して、冷静に舞台を眺めてる!!
今回はそういう設定なの?
「「「「「ロ・ザ・リー! ロ・ザ・リー!」」」」」
突然、観客の皆さんからコールが沸き起こった。 なんだか胸が熱くなってくる。
「「「「「暗・黒・歌・姫、ロ・ザ・リー!!」」」」」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
なんで〔暗黒歌姫〕なのよ!!
「ちょっと!? 今日、結界を張るために歌ったけれど、魔方陣は紫色にならなかったわよ!?」
私は力いっぱい抗議した。
すると、どこからかいつもの妖精さんが飛んできた。
「それはねぇ。
あの時は〔光の妖精〕のあたしが、魔法を使ったからだよ☆」
今日、他のゲームの世界のモンスターが上陸して来たとき、私の歌声を魔法陣に編み込んで結界を張ったのは妖精さん。
あ、そっか。
いつもは〔精霊〕に「この魔法が使いたい」って、呪文を唱えるけど、あの時は〔妖精さん〕に歌を歌った。〔闇の精霊〕は関係ないのね。
「じゃあ、夢で歌ったって問題ないんじゃないの?」
『ほほほほほ。歌ってみればわかりますわ』
そう言って、ロザリーが指をパチンと鳴らすと、〔きらめき☆魔法学園〕のオープニングの前奏が流れてきた。
私、盛り上がりしか知らないわよ!?
観客の皆さんはキラキラした目で、これから歌われるであろう歌を、とっても期待している。どうしようどうしようと慌てていたのに、何故かスッと歌を歌えた。
しかも、振り付きで。ロザリーと二人で歌った。
さすが夢の中!!
なんで私達が〔暗黒歌姫〕なのか、気になりながら歌い終えると、
ボンッッ!!!!!!!!!!
会場が爆発した。
演出でステージの前の方か横の方で、勢いよく煙が縦に上がるのは見たことある。
でも! 今回はステージそのものが爆発した。
紫の煙に突き上げられて、私もロザリーも観客の皆さんも空高く舞い上がっている。遙か遠くには、お城が見えた。エナの家も見えた。地平線も水平線も見えた。私達はビルの30階ぐらいの高さまで飛ばされた。
真下を見れば紫の煙がモクモクとしすぎて、雲の上の世界に来たようだった。
ウソでしょ!?
涙がちょちょぎれそうな私とは別に、観客の皆さんはとても喜んでいた。
「おぉ~!! 空を飛んでいるようだ!」
「まぁ! うちの屋敷が見えますわ」
「うちも見えますわ」
「鳥はこんな気分を味わっているのか!」
今までは、夢の中でも恐れられていたのに、今回は全然そんなことない!
このあと、空から落ちる恐怖も忘れ、私まで嬉しくなってきた。
「「「「「これで、今夜はよく眠れる」」」」」
え?
空に舞い上がりながら、歓喜の声を上げる観客の皆さんの声を聞いて、目が覚めた。
「確かに、前に授業で『闇の魔法でよく眠れます』みたいなことを聞いたけれども……」
『夢は夢ですわ。深く考えたって、ムダですわよ』
ロザリーが冷静にツッコミを入れてくる。
そうだね。夢は夢だよね。
このあと、私は何日か同じ夢を見るようになる。




