第45話 現地へ(挿絵有り)
モンスターが現れた!?
今朝「乙女の世界は平和な世界だよ☆」とか言ってなかった?
「ロザリーが、ティアに浄化をお願いした〔黄緑色のモヤ〕。あれはこの世界の管理システムなんだよ!
公式ストーリーから大きく外れないよう、異変があれば修復しようとする他に、この大陸に強力なモンスターが入らないよう壁のような役割もしていたんだよ!!」
「壁?」
「『きらめき☆魔法学園』の体験版の世界の〔アルムス大陸〕の上には、『ゴリゴリモンスター殺戮伝』っていう〔ホラーっぽいRPGの体験版〕の世界が広がっているんだよ」
……ご、『ゴリゴリモンスター殺戮伝』!?
“ホラーっぽい”っていうか、ホラーの予感しかしない!
ゴリゴリしたモンスターに殺戮されるのか、それを殺戮していくのかわかんないけど、どっちにしてもグロそう!!
そもそも〔ゴリゴリモンスター〕って何なの!? 〔ゴツゴツ〕じゃないの!?
とりあえず、強いモンスターがいっぱいいそう。
「何で強いモンスターしか現れそうにない世界が、アルムス大陸の上に広がってんのよ!」
「〔きらめき☆魔法学園〕と〔ゴリゴリモンスター殺戮伝〕は魔法の仕組みが同じなんだよ。
だから、一緒に作ればプログラミングが楽じゃん?」
それって、一緒に作っておいて、ゲームでは互いに大陸を行ったり来たり出来ないようにおけば、問題ないと思って作られたってことね。
そして、そのゲーム同士の世界を、あの〔黄緑色のモヤ〕が分断していたと……。
「それ!
もっと早く言ってよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『本当ですわ!
そうしたら、私達だって〔黄緑色のモヤ〕を消そうなんて思わなかったですもの!!』
私とロザリーは、思いっきり嘆いた。
(私の頭の中のロザリーの声が、妖精さんに聞こえているのかはわからないけどね)
「だって、どうせ夢の中で説明したって信じてくれなかったでしょ?」
妖精さんは「むす〜」っとした顔で答えた。
『今さら言っても、何も変わりませんわ。
それより、今、起きていることに対処しましょう。
こうしている間にも、次々とモンスターが大陸を渡って来るのでしょう?』
は!!
そうだね! 今が大事。
私達は、とりあえず現場に向かうことにした。目指すは、アルムス王国の北側の海岸!!
遠いので、ロザリーの馬で移動することにした。
……馬での移動…………。
ということは、私が馬に乗るのよね……?
少しの不安を抱きつつ、急いでブーツを履いて、厩舎に向かった。
『私の馬は左から三番目ですわ』
そう聞いて、左から三番目の馬を見た。
主人がわかるのか、私を一目すると、寝ていたのにその馬は静かに起きあがった。
鹿の毛のように黒みを帯びた茶色……たてがみや尻尾、四肢の先が黒いツヤツヤの鹿毛。額には傷痕のような白い模様が入ってる。
そして、160センチはありそうな体高。首の付根あたりまでが160センチって……。
デカい!
競走馬ですか!?
『ふふふ。
私の自慢の馬、〔ローリー〕ですわ』
世界の覇者になりたいだけあって、凄い馬を飼ってるね!
でも、ちょっと意外。
お姫様が乗るような白い馬車を持ってるぐらいだから、ロザリーが乗る馬も白いと思ってた。
『あら、〔白馬〕は王子が乗るイメージが強いですもの。
それに、私が馬が欲しいと思ったとき、一番賢くて足が早かったのがローリーですのよ』
そうなんだね。
ロザリーらしい相棒の選び方だね。
「これで、よし。と」
私はロザリーの話を聞きながら、厩舎の入口付近まで一度戻って、ハミを取って来てローリーにつけた。
『あなた。馬の手綱をつけられますのね。
私はいつも使用人に任せておりましたわ』
まぁ、素人なので時間はかかるけどね。
声優のお仕事がなかなか来ないから、『今度は何を努力したらいいんだろう?』って、一時期乗馬クラブに通っていたのよ。
外国映画で馬に乗るシーンが女性もあるから、体験しておこうと思って。でも、馬に乗るシーンがある役は来なかった。ムダな努力だったわ。
今、役に立ちそうだから、良かったけど。
ロザリーに返事をしながら、馬に鞍をのせる。
『あなた。鞍も自分でつけられますの?』
うん。少しきつめに締めても私の力は弱いから、馬に乗ったらもう一度締め直さないといけないけどね。
鞍はつけられるけど、こんな大きな馬には踏み台がないと乗れない。踏み台はきっとロザリー用のが外にあるだろうと、私は推測した。
とりあえずローリーを厩舎の外に出そうと手綱を引っぱると、ローリーがそれを拒んだ。
足を踏んばって、その場にとどまろうとしている。
『まぁ! 中身が私でないと気付いたのかしら?』
そうかもね。
中身が本物のロザリーじゃないと気付いたのかもね。
たとえそうじゃなくても、きっとこうなると予想していたけど。
『そうですの?』
だって、私は馬にこども扱いされやすいんだもの!!
どんなにダメだと言っても道端の草を食べ続けて馬場まで辿り着けないし、曲がるよう指示を出しても曲がってくれない! スピードを上げるよう指示を出しても、そのまま。
馬は私の言うことを聞いてくれないのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
『残念ですわね』
くっそぉぉぁぉぉおぉぉ!!!!
急がなければならないのに、これでは現場に向かえない!
私は厩舎の外へと、駆け出した。それを見て、妖精さんが慌てた。
「ちょっと、ロザリー!?
馬に乗れないからって走って行ける距離でもないよ!? この馬がダメなら、他の大人しそうな馬で行こうよ!!」
「私は諦めない――――――――!!!!」
私は走った。
こうなったらアレしかない!
厨房に行くと、ちょうど従業員の皆さんが食べた後の食器を片付ける所だった。
「これでいいわ。貰っていくわね」
「お嬢様。スイカの皮なんかどうするのですか?」
ニコッと笑顔を向けて、スイカの皮を二つ掴むと、私は厩舎へと再び向かった。
『スイカの皮をどうしますの?』
賄賂よ。
『賄賂?』
馬ってスイカの皮も食べるのよ。
スイカは季節限定で、珍しいから喜んで食べる。本当はリンゴをあげたかったけど、リンゴの旬は秋頃だからね。
掌にスイカの皮を乗せ、ローリーに差し出す。
このとき手は反り気味で、親指はしっかり掌につけるか反らすかしておかないと、指も食べられてしまうので細心の注意で。
「さ、ローリー。スイカの皮よ。
赤い部分もわりかし残っているわ。
後で赤い実の部分付きのスイカをあげるから、私を乗せてくれない?」
スイカの皮を食べたローリーは、静かに厩舎の外へと歩きだした。交渉は見事に成立したようだ。
ロザリー用と思われる踏み台を使ってローリーに乗り、鞍のベルトをキツく締め直した。
ここからも、問題がある。
『今度はなんですの?』
私、スピード出せない。
例えば、馬のスピードを四段階に別けたとする。
1、優雅に散歩する〔ゆら〜り、ゆら〜り〕
2、街中を警備しながら歩く〔パッカ、パッカ〕
3、駆け足。〔タッタカ、タッタカ〕
4、全力で走る。〔ダッダッダッダッ!〕
2、までは出来るけど、3.は無理だと思う。大きく揺れるから本気で泣きそうになるし、しがみつくのがやっと。落馬しそうになるんだもの。
『泣き言は許しませんわ!
今こそ頑張る時です!!
歌が苦手だったのに、私も頑張りました!
今度はあなたの番です!!』
ロザリー。
エナの魂と入れ替った時、歌の特訓させたのを根に持っているわね。
『ほらほら!
鐙に足を入れたら、しっかり踵を下げて!
手綱は短めに持つんですのよ!?』
ロザリーがビシビシ指導してくる。と、その時、ローリーが走り出した。
今までゆ〜らゆ〜ら揺れてただけだったのに、大きな揺れに変わり、私の体が鞍の上ではねる。
『ほら!
体が浮いてますわよ!!
“座る!! 座る!! 座る!! 座る!!”』
馬のリズムに合わせて、ロザリーが掛け声を上げる。
あれ?
ちょっと待って?
私、ヘルメットしてない。
このスピードで落馬したら、死ぬんじゃないかしら?
『何をド素人みたいなこと言ってますの?
この世界では、ヘルメットをつけるのは、こどもぐらいですわよ?』
そうなのよ!!
私は少し習ったことがあるだけの、〔ド素人〕なのよ!!!!
ここで、あることに気がついた。
揺れが大きいから慌てたけど、乗りやすい。
鞍の上で体は跳ねるけど、落ちそうな気がしない。
これ、ローリーが文字通り私を乗せている!!
落っこちないよう、私を背中でうまい具合に転がしながら走っているんだわ!!
なんて賢い馬なの!?
そして、スイカの力、凄いわね!!
ご褒美のスイカを楽しみに走るローリー。
そのワクワクがこっちにも伝わってきて、私まで楽しくなってきた。
すご〜い!
私、馬に乗って走ってる!!




