第44話 きらめき☆魔法学園の世界へようこそ!
「おっはよ〜ん!
〔きらめき☆魔法学園〕の世界にようこそ!!」
朝起きたら、いつも夢に出てくる妖精さんが目の前で飛んでいた。
手のひらサイズの大きさで、身体全体が光輝いている。
?
私、まだ夢から覚めてないの?
「あなたはこれから〔光の魔法の使い手〕として、ドキドキの魔法学園生活をおくるんだよ……って…………う、うぅ、う……うわぁぁぁぁぁぁ〜ん!」
妖精さんが自己紹介を始めたと思ったら、突然泣き出した。
いったいどうしたんだろう?
「魔法学園が始まって、もう一週間もたつんだよ!!
ドキドキの魔法学園生活どころか、ヘンリー王子と破局してるし!
破局するにしても、展開が早すぎなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そんなことを言われても、困る。
私だって、破局は避けたかった。
公式ストーリーでは、断罪された後に悪役令嬢はドラゴンに食べられるんだもの。
もうちょっと後なら魔法の授業も進んでいるだろうし、何か対策をとれたかもしれないのに、不安しかない。
そもそも、案内役の妖精さんとはこの世界に来たとき、初めに現れるものなのでは?
「妖精さん、何で今頃出てきたの?」
「光の魔法が使えて、光の精霊と話をしたことがないと〔光の妖精〕は見えないんだよ。
この間、闇の属性は入ってたけど〔光の魔法〕が使えたから、やっと会えると思ったのにエナと魂が入れ替わってるし!
元に戻っても、案内役の妖精との出会いは“朝”って決まっているから、こんなに遅くなったんだよ――――――!!」
布団をバシバシと拳で叩いて嘆く妖精さん。
ロザリーは私の頭の中で『まぁ! 妖精って本当にいましたのね』って、のんきに感想を言ってる。
「ねぇ。ゲームのナビゲーターの妖精って、ヒロインの元に現れるものでしょ?
何で私達の元に現れたの?」
悪役令嬢に光の妖精って、合わないよね?
この疑問にも妖精さんは嘆きながら説明してくれた。
「ゲームは人間がプレイするものなんだよ。
だから、悪役令嬢の中に入ろうと、一般市民の中に入ろうと、人間が動かす体が主人公なんだよね。
だから、今回ティアは〔普通のクラスメイト〕ってことになるんだよ」
ティアがヒロインじゃない!?
そんなことを言われても……と思う。
妖精さんは説明を続けた。
公式設定のヒロインのティアなら、初日から〔光の妖精に出会える条件〕を満たしているそうだ。
それに対して、私は悪役令嬢の体でスタートしたから〔光の魔法〕が使えるようになるまで、出てこられなかった……と。
「ゲームは人間のための世界だから、主人公はあくまでキミだね。
でも、気をつけて?
ゲームの世界とはいえ、魂は一つ。
リセットしたら今の性格のキャラクターたちに会えなくなるよ?」
妖精さんは説明を続けてくれた。
これって、重大なことを話してくれているのではないだろうか?
「学園初日。ティアは登校中に石に躓くでしょ? そして、そこからヘンリー王子と恋が始まる。
でも、1/4の確率で石に躓かないよね?
同じ環境で育つから、ほぼ同じ行動、同じような選択をする人物になるけど、全く同じ性格にはならないってこと。
1/4の確率で、石に躓かない程度の運動神経を手に入れてるか、少ししっかりした考えの人物になるんだよ。
ロザリーの両親も何か少し違ってたはずたよ?」
『そうですわね。
娘に甘いにしても、あそこまでニコニコしていたかしら? と、思いましたわ』
それを聞いて、私は血の気が引いた。
それって、ロザリーが知っている人は、時を超えてきたゼアだけってことじゃない!
「魂は一つ。死んだら終わり。
それって…………」
「悪役令嬢のロザリーは一度死んでいるから、もうロザリーの体は動かせないんだよ。
エナのときみたいに、誰か他の体でなら可能性はあるかもしれないけどね」
ロザリーは、この体で生き返れない。
どうやってやるのかわからないけど、リセットしたら今のヘンリー王子やティアとマリーとスピカと……皆にもう会えなくなる。
確かに、ロールプレイングゲームをリセットしたとき、次にプレイしたときは前回と全く同じじゃない。敵が出るタイミングや落とすアイテムが違ったりする。
「じゃぁ……、このあと、私達はドラゴンに食べられて終わるのね……」
「なんで?」
妖精さんが不思議そうな顔をした。
こっちが「なんで?」って聞きたい。
「悪役令嬢が婚約破棄されたあとは、ドラゴンに食べられるじゃない」
「あぁ!
公式設定ではそうだったね!!」
妖精さん、今、気付いたらしい。
人の命がかかっているのに、やけに明るい返事。そして、妖精さんは「にまぁ〜」っと笑った。
「この世界って、何だかウワサ好きの人が多いと思わなかった?」
確かに。
皆、噂が大好きだね。噂に尾ビレ背ビレと、色々と付け足すほどに。
「この恋愛シュミレーションゲームは、小学生や中学生向けなんだ〜。
だからね? 絵本のように『悪いことをしたら、悪いことがかえってきますよ〜?』っていうお話の作りになってるの。『自分のワガママで、人に迷惑かけてるとドラゴンに食べられちゃうよ?』っていう教訓だね!
でもさぁ、乙女のためのゲームの世界が残酷なワケないじゃん?」
って、ことはつまり……。
「実際のこの世界は平和だよ!」
妖精さんがいうには、全ては噂話のせい。
卒業の日。
ティアとの恋愛バトルで敗北した、悪役令嬢のロザリー。
でも、ロザリーにはすぐに婚約の話が舞い込んでくる。その相手が、遠い遠いメイス王国のゼア王子。
ゼア王子は、学園生活をおくる中で、従兄妹のティアに色々と声をかけるロザリーが、とてもいい人に見えたんだって。
そして、二人は異例の早さで結婚。
詳しいことを知らないアルムス王国の人達は、ロザリーを見なくなったから、ヘンリー王子に国外追放されたと勘違い。
そして、そこからさらに噂が歪む。その原因は、“ゼアはドラゴンと人間のハーフ”だから。
ドラゴンのいる国に行って帰って来ないから
「きっと食べられてしまったのだろう」という話になったそう。
「うわぁ。勘違いって怖い」
「アルムス王国で起きたことの一部分を切り取って、この『きらめき☆魔法学園』の世界が出来ているんだよ〜」
「そっか。
平和なら何よりだね」
悪役令嬢がドラゴンに食べられるのは、皆の噂話。ただそれだけ。
ドラゴンに食べられる心配がなくなって、安心した。
乙女ゲームの世界って、モンスターが出てきても小さくてかわいいもの。それをポコポコやっつけるぐらいの可愛らしい戦闘しかないものね。
安心。安心。
ヘンリー王子に婚約破棄された次の日なので、この日の魔法学園の教室はギスギスした雰囲気になったけど、何とか一日を終えることができた。
元々ヘンリー王子が、色々と話しかけて来てただけだったので、それがなくなると接点って無いのね。
同じクラスだけど、ヘンリー王子が遠い存在に感じた。
そりゃそうだよね。
だって王子様だもの。
〔ドラゴンに食べられる〕という悩み事が一つ減ったけれど、今日は精神的に疲れた。
今日も早めに寝ようとしていた所に、妖精さんが窓から飛び込んできた。
「大変だよロザリー!
モンスターが現れたんだよ!!」
えっ!?
乙女の世界は平和だったんじゃなかったの!?




