〈第七夜〉海辺(挿絵有り)
夕方の浜辺に座り込んで海を見ていた。隣にはヘンリー王子がいる。
婚約破棄したヘンリー王子が隣にいるなんて、これは夢ね――――。
「……ごめん。ロザリー」
突然謝られた。
そういえば、ヘンリー王子が立ち去るときも謝っていた気がする。
ヘンリー王子は私を見限ったのだと思ったけれど、違うのかな……。
「夢の中なら、ロザリーが何人いても誰が僕の好きなロザリーかすぐわかるのに、現実ではわからなかった。
ロザリーが他の誰かと魂が入れ替わってもすぐに気付けなかったし、元に戻っても全然わからなかった」
「気にしてないよ?
もしヘンリー王子が誰かと魂が入れ替わったとして、私は気付く自信がないもの」
「でも!
ゼア王子は、すぐに気が付いたんだ!!」
ゼアは魂の入れ替わりにすぐ気が付いたのに、ヘンリー王子は気付けなかったことを気にしていたんだね。
ゼアはロザリーを追いかけて時を超えたぐらいだから、ゼアとくらべないでほしい。
時を超えるときに、何か特殊な能力が目覚めた可能性もある。
私はロザリーに呼ばれて違う世界から来たこと、この体の中に私とロザリーの二つの魂があること、ゼアはロザリーを追いかけて時を超えたことを説明した。
「だからね?
ゼアとくらべることなんてないよ?」
「たとえそうだとしても、ゼア王子はわかったんだ。
特別な事情であろうと、わかるヤツがいるのに僕はわからないなんてイヤなんだ!
……婚約の話をしたとき、君が“恋が冷めたときが怖い”と言った理由がわかったよ。
ロザリーのことが大好きだったはずなのに、婚約破棄しても抱きついてくるのか……って、君に嫌悪感を抱いた自分に驚いた。
自分が好きだった人に、こんなに冷たくなれるなんて知りたくなかった……」
その言葉に胸が痛くなった。エナと入れ替わっていたのだから仕方ないと思う。
でも……。
妖精さんいないし、私に都合のいい夢を見てるだけなのかもしれない。それとも、前に妖精さんが言ってたように、会いたいと思ってくれたからヘンリー王子が夢に出てきてくれているのか、私にはわからなくなった。
どちらにしても、「気にしてない」と言ってもヘンリー王子には届きそうにない。夢の中であっても話をするには時間が必要なんだろうなと思った。
時間があっても、又いつ魂が入れ替わるかわからない人間とつきあうのは疲れるだけかもしれない。
「もう、遅いんだろうけれど……」
私は、この世界に来て一日目の夜に、夢の中で妖精さんから貰った花を、ヘンリー王子に渡した。
私の赤い糸で作られた、リボン付きの花。
「すぐ気付けなかったことを気にしてるけど、ヘンリー王子は、私の魂が入れ替わったこと、元に戻れたことにちゃんと気付いてくれて、嬉しかった。
大事に思ってくれてありがとう。
私、ヘンリー王子のことが大好きよ」
言い終わったところで目が覚めた。
あれ? 今日はロザリー出てこなかった。
『あなたが見てたのは悪夢じゃないでしょう?
二人きりにさせてあげたのですわ。
私は、海でゼア王子と妖精と三人で遊んでおりました。海のデートもいいですわね』
ロザリーは楽しそうで何よりだよ。
顔を上げると、いつも夢の中に出てくる妖精さんが、目の前で元気に羽ばたいていた。
「おっはよ〜ん!
〔きらめき☆魔法学園〕の世界にようこそ!!」
え?
私、まだ夢から覚めてないの?




