〈第五夜〉出現! 【暗黒恐竜】ロザリザウルス!!(挿絵あり)
夜の魔法学園で、校舎の近くを歩いていた。
細い三日月が夜空に浮かび上がっている。少し暗いぶん、星がハッキリ見える。手をのばせば、星に手が届きそうに感じた。
すご〜い! 星に手が届きそうだなんて!!
感動して手を空にのばそうとしたとき、夜風が吹いて、くしゃみが出た。
「ぐ……、ぐわっ、グワッブション!!」
あまりのくしゃみの大きさに、自分でもびっくりした。まるで怪獣みたいなくしゃみ。はずかしい……。
自分のくしゃみにびっくりして閉じた目を開けて、更にびっくり!
目の前の山が〔紫の炎〕で燃えていた。
え〜!! 私のせい!?
『なかなか豪快なことをしますのね』
私の疑問に答えてくれたのはロザリーだった。探検隊のような服を着て校舎の屋根に立ち、こちらを見ている。
「がぅわわわぉわぐぉん!」
何この声!?
私、普通に喋れない!! 「ガー!」って恐竜みたいな声が出る!!!!
慌てて自分の手足を確認した。
鋭い爪、爬虫類のような焦げ茶色の皮膚。たくましい太モモ……。
私、恐竜になってる!!!!
いやぁぁぁぁぁぁぁ!
校舎の窓に映る自分の姿を見ても、恐竜にしか見えない。
ファンタジーの世界よ!?
ここはドラゴンとか、そういうのじゃないの!? 恐竜なの!?!?
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「【暗黒恐竜】ロザリザウルスが現れた!」
「俺たちを焼いて食う気だ!!」
「逃げろ! 逃げるんだ!!」
……学園から少し離れた山道から、避難している住民の声が聞こえた。
あ、【暗黒恐竜】!? なによそれ!
「ぐわぁァァァァオォン!!」
誤解を解こうとしても、しゃべれない!!
『……まさか、あなた捕らえなければならない日が来るなんて、思いませんでしたわ!!』
ロザリー!
嘆いているように見えるけど、ちゃっかり大きな網を構えて、やる気満々だね!?
「あれぇ?
今日はヘンリー王子いないねぇ?」
どこからか、いつも夢に出てくる妖精さんが現れた。
そういわれてみると、確かにヘンリー王子がいない。いつも夢に出てくるのに……。
『いますわよ? そこに……』
そう言ったロザリーの視線の先は、私の足元で……。
次の瞬間、私の体がほんの少し浮いた気がした。
……え?
まさか、まさか――――――――――!!
あぁっ!
ヘンリー王子が、巨大な恐竜になった私を〔お姫様抱っこ〕しようとしてる!!!!
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!
無理はしないで――――――――!!
“無理しないで”と叫んでも、恐竜の姿の私は「グァ〜!」とか「ガ〜!」しか言えない。
慌てる私と違い、ロザリーは冷静だった。
『ヘンリー王子って、お姫様抱っこするの好きですわよね』
「恐竜になってもお姫様抱っこしてくれるんだね☆」
ロザリーは妖精さんと、ヘンリー王子の分析をしている。
分析なんかしてないで、ヘンリー王子を止めてよ! 恐竜なんかをお姫様抱っこしたら、腰が砕け散るわよ!!
無理しないでほしくて抵抗していると、ヘンリー王子が静かに言った。
「ロザリー。愛してる」
体格の差で、恐竜になってしまった私の耳から、足元のヘンリー王子まで3メートルはあると思う。なのに、耳元で言われたみたいに、はっきりとヘンリー王子の言葉が耳に飛び込んできた。
驚いた。
この距離ではっきり聞こえた事に驚いているのか、「愛してる」と言われたことに驚いているのか自分でもよくわからない。ただただ驚いていたら、巨大な恐竜になった私の体がロザリーの姿に戻った。
人間の姿になった私は「ストンッ」と、ヘンリー王子の腕の中におさまり、お姫様抱っこされた状態になった。
いつもなら、恥ずかしくて逃げ出したくなるのにそんなことはなくて、王子の腕の中は居心地がいいなと思ったところで、目が覚めた。
「フフフフフ。
昨日は天国から地獄に突き落とされたような日でしたけれど……、いい夢が見れましたわ!!」
いゃぁぁぁぁ! 恥ずかしい!!
夢を思い出さないで!
「オーッホッホッホ! ステキな夢でした!!
元気がみなぎってきます!!
さぁ!
体を取り戻すためにがんばりましょう!」
こんな夢をみるなんて、ロザリーがゼアに「愛してる」と言われていたことや、エナがヘンリー王子にお姫様抱っこされてたのが、羨ましかったのだろうか?
恥ずかしい! 恥ずかしすぎる!
でも、何か忘れている気がする。妖精さんが前に、何か言ってなかったっけ?
一生懸命に思い出そうとしたけれど、頭の中がパニックで思い出せなかった。
――――――――この夢の世界はね、『ロザリーに会いたいな』って思いながら眠った人の精神を直接繋げてるんだよ。




