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悪役令嬢にとりつかれました!  作者: 葉桜 笛
恋の罠

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36/92

第32話 5人目(挿絵有り)




「ね、ロザリーの出す条件を全部()むと約束するよ。だから、二人で愛を探そうね」




 グハッ。

 キュン死にしそう。人を抱きしめて、耳元でなんてこというのかしら? 王子って恐ろしい生き物ね。

 ここで流されたら骨抜ほねぬきにされて、何も考えられなくなりそうだから、しっかりしなくちゃ!

 私はドキドキしてちからが入らない両手で、必死にヘンリー王子をし戻した。




「……王子。わ、私達は〔婚約〕はしても、こ、〔恋人〕になったわけではありません……。

 そ、それに……が……学園でベタベタするのはどうかと……思います」




 自分でも何を言ってるのかよくわからないのだけど、普通にしてくださいと必死に伝えた。




「そっか、僕達は複雑な関係なんだね……。

 うん。

 ()()()()ベタベタしない」




 そういって、離れてくれたけど…………なんで嬉しそうなの?




「学園から出たらベタベタしていいのか〜」


「え!? そんなこと、言ってない!!」


冗談じょうだんだよ」




 それから、私はヘンリー王子に「放課後ゼアにお断りの話をするので、それまではいつも通りにしてて」とお願いすると、静かにうなずいてくれた。


 話が終わって、少し離れた所にいたジェイクとフォスターをよんで、先にお手洗いに向かったティア達と合流すべく急いだ。






「では、女性用のお手洗いはこっちなので、また後で校庭に集合しましょう」




 校舎に入って、ヘンリー王子と別れた。

 結局けっきょくティア達とは合流できなかったので、多分トイレにもう入ってると思われる。

 この学園、男性用と女性用のトイレが離れているんだよね。


『うちの別荘もそうですわよ?』


 そうなの? 魔法学園に通うために、住んでいるあのお屋敷も?


『この世界の貴族の間では、トイレに出入りする所を見られるのは、ずかしいとされているのです』


 ふ〜ん。そうなんだね。

 でも、トイレが別々にあると、パーティーとかにおよばれしたときわからないんじゃ……?

 男性用トイレは見つけたけど、女性用がわからない場合、男性用に飛び込む人いるんじゃない?


『それは大丈夫ですわ。

 男女のお手洗いは対角線上に作るようになっておりますの。男性用トイレを見つけたら、ななめ前のはしの方に女性用トイレがありますわ』


 へぇ。「きらめき☆魔法学園」のゲームの世界では、トイレはそういう設定なんだんだね。


 トイレの豆知識を聞いていたら、男性の歌声が聞こえてきた。




 ♪あ〜〜!

 た〜い、よ〜〜うは〜、光輝く〜〜〜〜!!♪




 童話に出てくる王子様みたいな歌声。歌声の主は、この近くの階段を登って行ったみたい。

 貴族向けの学園にも、変わった人がいるんだなと思ったら、その人、つえを落として行った。




「あの! 杖を落としましたよ」




 声をけたけど、気付かない!

 魔法学園でつえを無くしたら大変じゃない? 授業受けられなくなるのでは? と思って、もう一回声をかけても、歌に夢中むちゅうで気付いてくれない。

 追いかけて階段を上がるけど、王子っぽい歌声の人は足が長くて追いつけない。はやい!





挿絵(By みてみん)







 ウェーブのかかった長い金髪をなびかせて、ななめ上に手をばし、まるでここが舞台の上のように優雅ゆうがに階段をのぼっていく。

 仕草しぐさも姿も、まさに〔ゴージャス〕な感じの人だった。


『あ、』


 あ〜!

 この人、5人目の攻略対象の人だ!!

 確か、歌が上手い先輩!

 ロザリーも反応はんのうしてたけど、知ってるの?


『彼、グイマツ王国の、ラーチ王子ですわ。

 もうすぐ彼の国で、夏をむかえるためのお祭りがありますの。その練習ですわね。

 王族が歌をおさめますのよ』


 ご、5人目の攻略対象も王子なの?

 ヘンリー王子と、ゼア王子と、ヨド先生と、ラーチ王子? ……この学園は王子が多いわね。


『近くの国の王族もかよいますからね』



 う〜ん。それにしても、このままでは追いつけないまま、お昼休憩が終わってしまう。何とかラーチ王子に気付いてもらわないと……。


 そこで私は考えた。

 こっちも、歌えばいいんじゃないかしら?


 気付いてもらえなかったら、すんごくずかしいし、自信ないけど……勇気を持って、歌ってみることにした。

 ミュージカルっぽく!




 ♪つえを、つ〜え〜を〜! 

 落、と、さ、れ、ま〜し〜たぁ〜よ〜〜♪




 あくまで“ミュージカルっぽい”だけで、音もリズムもメチャクチャだと思う。

 でも、他に良いあんを思いつかなかった。




 ♪つえがないと、授業を受、け、ら、れ、な、い、のではな〜い〜かし〜ら〜♪


「え? それ、僕のつえ!」





 気付いてもらえた!!




 ふぅ、これでティア達と合流できると思ったら、両手をガシッとつかまれた。




 ♪ど〜ぉぉ、もぉぉぉ〜、ありがと〜ぅ〜ぉぉお♪


「いや、歌わなくていいから、早くつえを受け取ってくれませんか?」




 さっき普通に話してたから、歌わずに普通に話してくれればいいのに。祭事さいじの練習とか関係なく、この人はただ歌が好きなのでは?

 う〜ん。どうしようと思っていると、




 ♪これは、“運命”の、出会い、だろうか?♪




 と、歌いだしたのであわてて否定ひていした。普通に話して聞いてくれるかあやしいので、歌って答えた。




 ♪いぃ〜い〜え〜。

 私には、こ、ここ……こん、婚約者がいるのぉ〜よぉぉぉ〜♪




 〔婚約者〕とかって、言いれてないからまっちゃった。

 ホントについさっき出来たばかりの婚約者ですけどね。ホントに婚約したのかな? とも思う。




「そうか。婚約者がいたのか。それは残念。

 でも、今日のこの出会いがステキな事にかわりはない。僕の話し方に合わせてくれたのは、君が初めてだ。君に出会えて良かった。

 僕は、〔ラーチ・グイマツ・スプ〕2年生だよ」


「私は、1年生の〔ロザリー・バードック〕です」


「〔ロザリー〕か……ステキな名前だね。

 また、会ったとき一緒いっしょに歌おう!!」




 ラーチ王子はっていった。

 マイペースな先輩だわ。

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