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悪役令嬢にとりつかれました!  作者: 葉桜 笛
恋の罠

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34/92

第30話 ウワサの後で……(挿絵有り)



 馬車にむらがり始めた生徒達を、クラスメイトがはらってくれたからとても助かった。

 私はヘンリー王子とティアとゼアと、それから、少し離れてヘンリー王子の護衛のジェイクとフォスターと6人で校舎こうしゃへと向かった。


 馬車がく所は半円になっていて、乗りりする姿は他の生徒から見えにくい。

 なのに、注目をびたっていうことは、皆がウワサの真相しんそうを知りたくてヘンリー王子の馬車を待ちかまえていたから……。

 こうなる事も見越みこして、ヘンリー王子は「一緒いっしょに学園に行こう」とさそいに来たのかな……?

 うたがいの目で見ていると、ヘンリー王子が口を開いた。





挿絵(By みてみん)






「ロザリー。

 いちおう説明しておくけど、僕の〔恋のわな〕は、君とパーティーに行けるように屋敷に手紙を書いた所までだからね?」



 えっ!?

 ヘンリー王子の教育係を取りまとめている人にパーティーで紹介したのも、今日一緒(いっしょ)に登校したのもワナだったんじゃないの?

 どうも信じられなくて、さらにヘンリー王子をジロジロ見た。



「ロザリーを紹介した彼は、最近おきさき候補の肖像画を僕に送ってくるんだ。

 だから、『僕には好きな人がいるからもう送って来ないように』という意思表示をしただけだよ」


「すっ……!!」



 “好きな人”って言った!

 思わず「好きな人!?」ってさけびそうになったのであわてて両手で口をおおう。

 それって私の事!?

 私は、自分の耳が熱を持ってきたのを感じた。



『あらぁ。

 ヘンリー王子は、“僕の好きな人です”って、あなたを紹介したんですのね。フフフフフフ』


 ロザリー!

 からかわないで!!

 ドキドキするのを止められなくなるでしょ?

 たぶん今の私、また顔が赤いからどこかにかくれたい……。



「だから、ロザリーを紹介した事はわなじゃない。

 僕のシャツに口紅がついてしまったのも、わなじゃない」


 「う……」



 確かに口紅は私のとっさの反応はんのうのせいでついただけ……。ヘンリー王子のせいではない。



「まして、『他国の王子が……』なんて僕にはどうしようもない」



 それを聞いて、今度は後ろを歩いているゼアが「う……」と、うなった。



「どんな内容かくわしくわからなかったけど、パーティーでうわさが立ち始めたみたいだったから、『うわさされるならロザリーとがいいな〜』『一緒に学園に行けばもしかして……』と心の底で少し期待きたいしただけだよ。うわさ操作そうさなんて、とてもとても……」



 そういって、ヘンリー王子が肩をすくめた。

 “一緒にうわさになれば良いな”と思いながら、「一緒に登校しよう」とさそった……。



「それって、つまりわななんじゃ……?」


「え〜。

 確信かくしんが持てなかったのに、わななのかな?

 それに、一緒に学園に行く1番の理由は、ロザリーが心配だからよ?」



 う〜ん。

 ニコニコ話す横顔よこがおがしらばっくれているように見えて、ヘンリー王子が腹黒はらぐろく思える。

 それに、“わなにはめられた”というのがくやしいのか、イライラする。

 私は右手のこぶしにぎりしめ、右隣みぎどなりを歩いているヘンリー王子の左脇ひだりわきこぶしをグリグリめこんで、抗議こうぎした。


『もっと、ねじむようにり出してはどうかしら?』


 それは名案めいあんね!!


 ロザリーも、ヘンリー王子のわなにハメられたのがくやしかったらしく、アドバイスを送ってきた。



 ふぅんおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!



 とこぶしちからを入れて、(さらにグリグリしてやる!)と私は力を入れた。

 だけど、どんなに頑張がんばっても私のちからは弱いらしく、ヘンリー王子はニコニコしていたから、くやしさがすだけだった。

 



 ―・・―・・―・・―・・―・・―・・―・・―・・―



 後ろでは……。


 ティアがボソッと、「フッ。ロザリー様が怒っていらっしゃいます」と微笑ほほえみ、ゼアが「……うらやましい」とつぶやいていた。

 そして、さらに後ろでジェイクとフォスターが「おぉ! ヘンリー王子がまたロザリー様といちゃついている!!」「良かったですね! 殿下でんか!!」と熱い視線を送っていた。





 ▷◇◁◇▷◇◁◇▷◇◁◇▷◇◁◇▷◇◁◇▷◇◁





 びっくりしたのは魔法の実技の授業。



「「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 


 ヨド先生がパーティーの時と同じように、さわやかな姿であらわれたので、女生徒から黄色い声援せいえんびることになった。

 いつもは長い前髪、メガネにマントで授業してたのに、顔がよく見えるようになっている!

 昨日は気が付かなかった。

 メガネをかけず前髪をわけているヨド先生は、太陽の下で見るとダークブルーの瞳が神秘的!!


 ヨド先生の神秘的なカッコよさに、クラスの女子は目がハートマークになった。が、ヨド先生だとは気がついていないようだった。



新任しんにんの先生ですか?」

臨時りんじでいらしたのですか?」

「もしかして、今日は特別授業ですか?」

「アイザック様の代わりのかたですか?」



 女の子達がヨド先生にった。

 確かに、今日はロザリーの家庭教師のアイザック先生がいない。それは、今日の授業は“おさらい”だから。

 初めての魔法に挑戦ちょうせんするときに、私が何かやらかすのをふせぐために来るみたい。(申し訳ないやら、ありがたいやらだわ)



「皆、落ち着いて。彼はヨド先生だよ?」



 ヘンリー王子が説明すると、皆ビックリした。

 女の子達は「うそ〜!」「わかりませんでした!」と大興奮だいこうふんしながら、さらにヨド先生にった。

 その間に男子は、〔水の魔法〕を発動しやすくする〔かわいい声〕に挑戦ちょうせんした。

 女子がヨド先生に夢中むちゅうになっているから、可愛かわいく呪文をとなえるのも、失敗してしまうのもずかしくないみたい。


 マリーとスピカは〔水の精霊〕を安定的に呼び出せるように、皆から少し離れた所に広く場所をとって練習すると言っていた。

 出会った時はイジメっ子だと思ったけど、本当はマジメで優しい良い子たちなんだよね。


 そのうちクラスの女子もさけつかれて落ち着いてきたので、ヨド先生はおけに水を出す〔水の魔法〕の練習をする皆の様子ようすを見てまわった。

 私の所に来たとき、ヨド先生が声をかけてきた。



「そうだ。ロザリーさん」


「?」


うわさは聞きました。

 ヘンリー王子と大恋愛中だったのですね。

 でも、このさきもし気が変わったらいつでも僕の所にお嫁に来てくださいね」


「え!?」



 ヨド先生の言葉にビックリしたけど、すぐ気がついた。



「先生! 私のこと、からかってますね?」



 ヨド先生はニコニコしている。

 間違いない。

 私はからかわれている。



「ヨド先生! 大丈夫です。

 クラスメイトが協力してくれたので、もううわさを聞かなくなりました」


「そうですか。

 アルムス王国は大きいですから、その国の王子とのウワサはプレッシャーになるかと心配しました。

 気にならないなら、何よりです」



 さわやかに微笑ほほえむヨド先生に負けじと、ヘンリー王子も爽やかに微笑みながら話にって入ってきた。



「そうですよ、ヨド先生。心配ご無用です。

 それに僕がロザリーを離さないので、ヨド先生のお世話になることはありません」




 は、離さない!?




『まぁ!

 まだプロポーズの返事をしていないのに、もう婚約者扱いされてますわね。ふふふ』


 ……なんか、私が答えを出す前に、どんどん選択肢がなくなっていっている気がするのは気のせいかしら?


 考え事をしている間も、ヘンリー王子とヨド先生の会話は進んでいった。



「ヘンリー王子。

 しかし、人の心はわからないものです。

 いつ、何がきっかけで気が変わるかわかりませんよ?

 そもそも、ロザリーさんの方ではなく、あなたの方が心変こころがわりするかもしれない」


「……僕が?

 ヨド先生。それは()()ないですね」


「いいえ。ヘンリー王子。わかりませんよ?」



 すると、今度はゼアも会話に入ってきた。



「ロザリーはまだ返事をしてないのに、二人とも話を進めすぎだ」


「ゼアの言う通りです!

 ロザリー様はまだ答えを出しておりません」



 ティアまで!

 悪役令嬢の心配をするなんて、何ていい子なの!!



「あなた達、全員ふられるかもしれないのに、今からそんな話をしても不毛ふもうです!!」


「ティア嬢……言うね。

 君は〔光の魔法〕が使えるから〔聖女〕と呼ばれてもおかしくないのに、何故なぜそう呼ばれないのか、今わかった気がするよ」


「そぉですか?

 ヘンリー王子こそ、です!

 大国の王子だというのに、この歳になっても()()()()()()()

理由が、今わかった気がします」



 “この歳になっても婚約者がいない”という言葉は、ひそかにゼアにもさったみたいで「う”……」とゼアがうなっていた。

 ヨド先生が冷や汗をかいているように見えたけど…………ティア…………あなた、気付かぬうちに色んな人の心をえぐってそうよ?


 今日の魔法の実技の時間はとてもハラハラした。

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