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悪役令嬢にとりつかれました!  作者: 葉桜 笛
恋の罠

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33/92

第29話 新たなウワサ(挿絵有り)




 “パーティーに同行どうこうするだけが、〔恋のわな〕じゃない”ってどういうこと?


『あなた。昨日パーティー会場にいて、ヘンリー王子とダンスホールに向かう途中、年配ねんぱいの男性に紹介されたでしょう?』


 うん。

 ヘンリー王子が私を、「大切な人です」って紹介したから、勘違かんちがいされたらいけないと思って「大切なクラスメイトです」って訂正ていせいしたあの件ね。




『きっと、あなたをあの年配の男性に紹介したことが、()()()〔恋のわな〕なのですわ!』




 え!?


『彼はヘンリー王子の教育係やもしれません。

 この国は〔教育係〕を取りまとめる人物が、おきさき候補を王子に紹介しょうかいしたりするのですが……』


 深刻しんこくに説明するロザリーの言葉に、私は息をのんだ。


『ヘンリー王子はあなたを紹介することで、“意中いちゅうの女性がいるから他の令嬢を紹介しないように”と意思表示をした可能性がありますわ』


 えっ!?


『もし、王子に恋人ができたら、()()()()()で教育係にも紹介するのがならわしなのに、異例いれいの行動。

 先にまわりから固めてことわりにくくする、腹黒い作戦の可能性がありますわね……』


 えぇぇぇぇぇ!?

 って、待って!!


 教育係の人に挨拶あいさつしただけで、【暗黒令嬢】と呼ばれてけられてた人が、「きゃあきゃあ」言われるようになる?


『……あら、そうですわね?』


 でしょ?



 と、ロザリーの推理に必死で対抗していたら、右の方から気になる言葉が聞こえてきた。





「ロザリー様が、()()口紅くちべにのお相手だったのですね!」




 “口紅のお相手?”




 あ、昨日ヘンリー王子から逃げる時に、ベストに口紅をつけてしまった事?

 馬車に乗る前、ヘンリー王子が「いやらしい事をしてたと勘違かんちがいされた」と話してたけど……。



「ロザリー様! 私、感動しました!!」



 今度は左の方にいた女生徒がそんなことを言う。

 ……感動?

 


「ヘンリー王子の胸のあたりにつけられた口紅!」

「あれは、〔王子の心は私のもの!〕という、強い意志表示ですね!?」

「ロザリー様の浮気防止対策!

 素晴らしいです!!」





挿絵(By みてみん)







 何いってんの!?

 この子達――――――――――――!?!?!?






『あははははははははははははは!

 あなた、私の知らない間にずいぶん積極的せっきょくてきになりましたわね!!

 いいですわよ! どんどんやりなさい!!』


 ……ロザリー大喜び。


 まってよ!

 ロザリーは私の頭の中でずっと一緒にいるのに、ロザリーの“知らない間”があるわけないでしょ!?


 ビックリしすぎて、開いた口がふさがらない。

 すると、ヘンリー王子がこっそりおしえてくれた。



「ロザリーは“いやらしいことをしていた”とうわさされたくないだろうと思って、テラスからダンスフロアに戻る前にベストをいだんだ。

 だけど、ベストでかくれていなかった部分にも口紅がついていたみたいで……」



 ヘンリー王子はこまった顔をしてみせたけど、なんか嬉しそうに見える!





 喜ぶな――――――――――!!





『まさか!

 うわさが広がっているのを知ってて、なおかつ、その効果を上げるために一緒に登校しようとさそいましたの!?

 ヘンリー王子。恐ろしい男ですわ!!』



 驚いたフリはしているけれど、ロザリーの言い方がわざとらしい。

 これはまた私をからかう気ね? 

 あんじょう、ロザリーの声はすぐにはずんだ声になった。



『ふふふふふ。

 あなた、もう逃げられませんわね』



 ロザリーも、喜ぶな――――――――!!



『あはははは!』


 笑う、ロザリー。

 その時、ゼアの大きな声が聞こえた。






もないうわさをするのはよくない!」






 あとから馬車をりたゼアが助け舟を出してくれた!

 ゼア! よく言ったわ!!

 だけど、今度はゼアに彼女達が言った。



「いいえ!

 そんなことありません!!」

「だって、ロザリー様はパーティーで他国の王子に求婚された時、『ヘンリー様といとげられないぐらいなら死にます!』と、命をとうとしたんですのよ!!」




 え!?

 私、そんなこと言ってない!




 野次馬やじうまの人達には、ゼアがらせた花園の中に倒れたのがそのように見えたのだろうか?

 ロザリーのドキドキにつられて、気を失っただけだけなのに……。


 ふとゼアを見ると、ゼアは言葉をうしなって「どよ〜ん」としていた。

 彼女達は、その“他国の王子”がゼアだとは気付いてないみたいだった。



「最初はヘンリー王子のお相手が誰なのか、わかりませんでした。

 けれど!」

「昨夜、パーティーでの挨拶あいさつを目撃した人物から、“王子のお相手は魔法学園にかよう令嬢”と聞いて、『もしや!』と私達は思いました!!」

「パーティーで、ヘンリー王子のシャツに口紅をつける大胆だいたんさをお持ちなのは、ロザリー様しか思いつきません!」

「そして! 今!!

 殿下の馬車からロザリー様が一緒にりてきたので、やはりおうわさのお相手はロザリー様!!」

「もし、口紅をつけただけでしたら『魔法でヘンリー王子を洗脳したのかも』と思う所でした……」

「ですが! 昨夜ロザリー様は〔愛〕をつらぬこうとされたのです!!」

げんに、ロザリー様の顔はっ赤でいらっしゃいますもの!」



 そう言われて気がついた。

 さっきから顔が熱いと思ったら、顔がだからか!

 あわてて両手で顔をかくしたけど、ときはすでに遅し。

 ふたたび「きゃあきゃあ」言われて、はずかしいと思っていると、今度は前方から声がした。




「ロザリー様をからかうのはやめたまえ!!」




 それから、やけに落ち着いた声で複数の男女の声がした。



「【暗黒令嬢】ロザリー様は、絶大な力の持ち主です。その強さに引かれるのは、ごく自然な事です」

「【暗黒令嬢】ロザリー様は仁義を通すおかた

 あなた達が感銘かんめいを受けるのもわかります」


「「「「「しかし! あまりにもおろかな事を言っていると、【暗黒令嬢】ロザリー様に〔人体実験〕の道具にされますよ!!」」」」」



 

 し〜ん……。




 前方の校舎の方からあらわれた生徒の言葉に、私のまわりに集まっていた女生徒達が、先週広がった“【暗黒令嬢】は〔人体実験〕をする”というウワサを思い出し、青い顔をして離れていった。

 めずらしく【暗黒令嬢】のあだ名が役に立った。



「「「【暗黒令嬢】ロザリー様! おはようございます!!」」」



 正面からあらわれた10人ぐらいの生徒が、横一列に並んでビシッとお辞儀じぎして、挨拶あいさつをしてきた。


 何? なんなの!? この組織!!


『落ち着きなさい。クラスメイトですわ。

 休みの前に、配下に加わったでしょう?』


 そうだった! 

 ロザリーに言われて気がついた。

 よく見るとクラスメイトだね。



「皆……。かしこまった挨拶あいさつはいいから、普通にして?」


「ありがたきお言葉!」

「さすが【暗黒令嬢】ロザリー様です!」

「たとえ暗黒の道を進もうとも、一般人に気を使ってくださるなんて何という心の広さ!」

「しかも、昨夜の愛をつらぬこうとする行動!

 我々はあなたをほこりりに思います!!」


すべ誤解ごかいだから、忘れて普通にしてて……」



 そう言ってはみたけど、最早もはや彼らに言葉は通じない。

 皆の中で、私はどんどんすごい人になっていく……。

 私は、頭をかかえた。



「はっ!

【暗黒令嬢】ロザリー様のめいしたがい、昨日のことは忘れます!

 先程さきほどおろかな者たちにも、言い聞かせておきます!!」



 そう言って、目の前にいたクラスメイトが、蜘蛛くもの子をらすようにりにっていった。


 昨日だけじゃなくて、()()()忘れてほしい……。


『ほほほほほほほほほ!

 悪の組織のようで面白いですわね』


 笑い話じゃないよ。

 ヘンリー王子は、ヘンリー王子で、



「ロザリーは人気者だね☆」



 って、喜んでる……。

 はぁ……。

 朝から疲れた……。

 本当に、この国の人達は想像力(ゆた)かだね。






 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 昨日のパーティーのうわさは、生徒会の耳にも届いていた。



「大変です! 生徒会長!!

 ついに暗黒令嬢が、姑息こそく卑猥ひわいな手段で、我が国の王子をたぶらかしました!!」


「何だと!? 王子を!

 王子には護衛が付いているのに、それをかいくぐったのか!

 これは未来のアルムス王国のピンチだ!

 我々、生徒会が全力を持って、その悪行あくぎょう阻止そしするんだ!!」




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