第28話 責任(挿絵有り)
え?
ティアが同じベッドで寝ている……何故?
ロザリーの部屋。ロザリーのベッド。
ティアは横向きでこちらを向いて眠っていた。「きらめき☆魔法学園」のヒロインだからか、〔光の魔法〕を使
『ま、良い決断ね』
そだね。
ティアに風邪をひかれては申し訳ないし、同じ学園の同じクラスの仲だものね。、いつも輝いて見えるティアは寝顔も輝いて見えて、とても綺麗だった。
ティアの寝顔に見入っていると、ふいにティアの瞼がパチパチと動いた。
まばたきさえも、カワイイ!!
これが、ヒロイン!!!!
朝から癒やされる!!
「ロザリー様! おはようございます」
「おはよう。ティア。
私、昨日の記憶が曖昧なの……。ゼアと話をした所までは覚えているのだけど、どうやって家に帰ったのかしら?
ティアと一緒に帰ったの?」
「まぁ!
ロザリー様、おかわいそうに……。
それもこれも全てゼアのせいですわ!」
ティアが私を本気で心配してくれている。
それがとても嬉しかった。……でも、ティアは私がゼアに何かされたから倒れたと、勘違いしてるみたい。
「ティア。ゼアは何も悪くないわ。
……け、結婚を申し込まれて……、そういうのなれてないから、ドキドキしすぎて倒れただけなの……」
……なんだろう。
説明するのも何だかはずかしい。
しかし、説明しないとゼアが勘違いされて、また迷惑をかけてしまう気がする。
「ドキドキしすぎたのですか!!」
ティアの怒った表情が、急に満面の笑みに変わった。
「ドキドキしすぎて倒れるなんて、とても可愛いです!
ロザリー様は、豪快で頼もしいというイメージがありましたから、結婚を申し込まれても動じないと思ってました。
何と言ったらいいのでしょう?
何だか前よりロザリー様と距離が近くなったような気がします!!」
そう言ってティアは私の両手を握りしめた。
話を聞いていると、どうやら倒れた私をティアが光の魔法で癒やして、このバードック家の別荘まで送ってくれたみたい。
そして、ティアが付きっきりで私を見守り続けるから、メイドさんが「このままではあなたが風邪をひくので、いっそのことお嬢様と一緒に寝てください」と、言ってお客様用のパジャマを出したそうだ。
「そうだったのね。
色々と心配してくれてありがとう。ティア」
「ロザリー様がご無事なら、何よりですわ。
それに、同じベッドで眠るなんて仲のいいお友達同士しかできない体験が出来て、とっても嬉しかったです!
“光の魔法”が使える私には恐れ多くて近づけないと、皆、距離を置くので、お友達が出来なかったものですから……」
「そっか……。
ねぇ、だったら提案なのだけど、私たち時々お互いの家に泊まりっこしましょう?
ティアの国の事とか光の魔法の事とか、たくさん話を聞きたいわ」
「まぁ! ロザリー様!! いいのですか!?
大歓迎です! たくさんお話します!!」
「えぇ! 約束よ!!」
“時々、お互いの家に泊まりに行く”という約束をしたところで、ロザリー付のメイドさんが入ってきた。
「ロザリー様。ティア様。
そらそろ学園に向かう支度をいたしましょう」
「そうね。
あ! 制服や鞄はどうしよう?」
「ロザリー様。ご心配には及びません。
ゼアに、私の制服などを持ってきてと伝えてあります」
ティア……。
従兄妹とはいえ、自分の国の王子を荷物運びに使うのね。すごいわこの子……。
「気になさらないでくださいね。
ロザリー様が倒れたのは、ゼアのせいだということに変わりはありませんから」
そう言ってティアは微笑んだ。
支度が終わって、馬車に乗るためティアと玄関に行くと、ゼアが待っていた。
「ゼア……。お、おはよう。
昨日はびっくりして倒れてごめんなさい。
ゆっくり考えて返事をするから、その……しばらく待ってね」
「……おはようロザリー。
前向きに考えてもらえると嬉しい」
ギクシャクと挨拶をかわし、3人でゼアが乗ってきた馬車に乗る流れになった時、ヘンリー王子が馬車に乗ってやって来た。
え? 何故ヘンリー王子が来たの!?
「ロザリー!
一緒に学園に行きませんか?」
突然のことに驚いていると、バードック家のメイドさん、執事さん、庭師の人、さらにコックさんまで「朝から王子様が!」とヘンリー王子(挨拶するためにバタバタと集まった。
「昨日ロザリーが倒れてしまったのは、僕のせいでもある。
ロザリーと片時も離れるべきではなかった。今日から僕が送り迎えをするよ」
ヘンリー王子が緩やかに花を舞わせながらそんな事をいうから、見送りに出てきたメイドさん達が「キャーキャー」と叫んだ。
ティアからきいたのだけど、きのう私が倒れた後、ヘンリー王子も駆けつけてくれたらしい。
それをティアが「こういう時は女性同士が良いです!」と言ってはねのけて、光の魔法を使って私を回復させたあと、別荘まで送ってくれたそうだ。
一緒に行った相手が倒れるなんて、責任感じてしまうよね……。ヘンリー王子にもちょっと申し訳なく思う。
「昨日はロザリーを癒す事を優先してゆずったが、もうゆずらないよ。僕がロザリーを守る!」
ヘンリー王子の、突然の「守る」という言葉にドキッとした。思わずヘンリー王子の顔を見ると、真面目な顔をしていた。
(ヘンリー王子。いったい何を考えているの!?)
「いいえ!
すっごく、す〜っごく貴重な〔光の魔法〕を使える私が側にいたほうが、いざというときロザリー様の力になります!!」
ティアがヘンリー王子に対抗する。
なぜ……ゲームの公式シナリオでカップルになる二人が喧嘩してるのかしら?
喧嘩して仲良くなるシナリオなの? と考えていると、ゼアまで二人の喧嘩に割って入ってきた。
「ロザリーは俺の馬車で送る!
何故なら、俺はロザリーに対して責任を取らなければならない義務があるからだ!!」
えぇ――――――――――――――!!??!?
昨日、ゲストルームで私が倒れてしまったことに責任を感じているのだろうけれど、ちょっと誤解をうみかねない言い方ではないですかね!?
ゼアの言葉にびっくりしていると、ヘンリー王子が言い返してきた。
「ならば!!
僕はロザリーに責任をとってもらおう!!!!」
堂々と何を言っているの!?!?
この人は――――――――――!?
この場にいる皆が、ヘンリー王子の言葉に驚いた。
ヘンリー王子はしんみりと説明を始める。
「ロザリーが走り去った後、大変でした……。
僕のベストに、ロザリーの口紅が縦一直線にべったりとついたので『何かいやらしいことをしたのでは?』と好奇の目に晒されたのです。
もう僕のところにお嫁さんは来ないでしょう。
ロザリー!
責任を取ってください!!」
ムチャクチャだ――――――――――――!!
頭の中のロザリーは『あはは! あはは!』と笑い転げている。
「そ、それは近付きすぎたヘンリー王子が悪いのでしょう!?
それに、『ちょっと女性と勢いよくぶつかった』とか言えば誤魔化せるじゃないですか!!」
慌てて反論したが、ヘンリー王子は「はぁ」とため息をついた。
「この国の人々の想像力の豊かさは、君も知っているだろう?」
「う……」
確かに。
そうだなと思う。
皆の想像力のせいで、私は【暗黒令嬢】と呼ばれるようになった……。
『あら、ヘンリー王子なら、たとえ変な噂が流れても、お嫁に来たがる令嬢はたくさんいますわ』
そうだよね!
カッコいいし、すっごく魔法を使いこなしているし、優しいものね!!
『ふふふ。べた褒めですわね。
でも、そうですわ!
ヘンリー王子と結婚したい令嬢はたくさんいます!!』
そういってロザリーは更に笑った。
『ほほほほほ!
学園に入るまでは絵に描いたような立派な王子だったのに、女性に“責任を取ってくれ”と迫るヘンリー王子のこの変わりよう……。
正に〔恋の病〕ですわ!!
恋はここまで人を変えてしまうのですわね!
ほほほほほほほほほ!!」
他人ごとだと思って!!
この体は、あなたの体なのよ!?
『あら、でも私は一度死んでますし、この体はあなたのものですわよ?』
ロザリーと頭の中で言い合いをしていると、いつの間にか皆でヘンリー王子の馬車に乗って学園へ行くことになった。
理由は単純。
ヘンリー王子の馬車が1番広いから。
まぁ、同じ道を走るものだし、馬車の形にそんなに違いはないのだけど、ヘンリー王子の馬車の方が気持ちゆったり座れる。
病み上がりの(病んでないけど)私には、少しでもゆったりと過ごしてほしいとの事で話がまとまったみたい。
みんな過保護で優しい人たちだわ。
馬車に乗って、ティアが何気なくヘンリー王子に話を投げかけた。
「ヘンリー様。
昨日、ロザリー様が倒れたとき、駆けつけたヘンリー様はベストを着てなかった気がするのですが……」
ティアの目がキラリと光った。
「そうだったかな……?」
ヘンリー王子はそう言って微笑んだ。
何? この会話。何だか怖い……。
学園に着いて、先にヘンリー王子が馬車から降りた。
すると、「きゃぁ! ヘンリー殿下よ!!」と女生徒からの黄色い歓声がチラホラ聞こえた。
(やっぱりモテモテじゃない!
でも、ヘンリー王子って、今までこんなに黄色い歓声あびてたっけ?)
「ロザリー」
そう言ってヘンリー王子は、次に馬車から降りようとした私に手をさしのべた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ! ロザリー様よ!!!!」
え!?
何? この歓声??
「お噂は本当だったのですわ!!」
「ロマンス! ロマンスですわ!!」
「なんてステキなのでしょう!!」
いつもは恐怖におののいたヒソヒソ噂話しかされないのに、ヘンリー王子より黄色い歓声を私が浴びるとは、いったい何が起きてるの!?
『!!』
ふいに頭の中のロザリーが何かに気が付いた。
『やられましたわ!
これが、ヘンリー王子の罠ですわ!!』
え!? 罠!?
『パーティーに同行するだけが、〔恋の罠〕というわけではなかったということです』




