〈第四夜〉 やたらと詳しい妖精さん(挿絵有り)
「やっほ〜! ロザリー!!
今日はモテモテだったね☆
誰と婚約するかもう決めた?」
踊るようにクルクル飛び回りながら、手のひらサイズの妖精さんが現れた。
「あ! いつも夢で出てくる妖精さん!!
ってことは、これは夢ね!
……でも、いつ眠ったのかな?
ベッドに入った記憶がない……」
『私もいるので、夢なのは間違いないですわ』
そう言って、ロザリーも現れた!
そうだね。
ロザリーもいるし、確かに夢だね。
私達は、魔法学園に通うために住んでいる〔バードック家の別荘〕の厩舎近くにあるテーブルについた。それは鉄で出来ていて曲線が多く、緑色に塗装されたオシャレなデザインだった。
テーブルには紅茶とクッキーが人数分置いてある。
「え〜っとぉ……。
今ロザリーがプロポーズされているのは、ヘンリー王子と、ヨド王子と、ゼア王子だね!」
「な……、なんで知ってるのよ、妖精さん!
っていうか、ヨド王子って……!?」
「ヨド先生はね、連合国に加盟している小さな国の第4王子なんだよ。
4番目の子だから家を継ぐことはないし、アルムス王国で教師をしながら魔法の研究をしているんだよ」
……何? この妖精。
何やら詳しい説明してるけど、本当なの?
『アルムス王国ではよくある話ですけれど、まさかヨド先生が王子とは驚きですわね』
あ、ロザリーは信じるのね。
アルムス王国の西側には小さな国がいくつもあって、アルムス王国みたいな大きな国と対等に交渉できるように、協力しあって〔連合国〕になっているんだって、ロザリーが説明してくれた。
アルムス王国の東側は海。西側の連合国の北の方に大きな国がいくつかあるみたい。
ゲームでは、アルムス王国しか出てこない感じだったけど、世界は他にも広がっていたのね。
『大きな国で働いて、その国への貢献度が高ければ色々と良いことがあるというのは本当のようですわね』
「ヨド先生の国はね、妖精ととても繋がりが深い国で、魔法が発達しているんだよ。その知識を提供する代わりに、海産物を祖国に融通してもらったり、災害時の人材派遣をお願いしたりしてるみたい」
『あら、あなた情報通なのね。もっと聞きたいわ』
ロザリーが妖精さんに興味を持った!
ロザリーは世界の覇者になりたいのだもね。
そういえば、生きていた頃は、パーティーに参加しても情報収集ばかりしてダンスは参加しなかったって前に言ってたね。
「ヨド先生と結婚すると、妖精のトラブルが舞い込んで不思議なファンタジー世界を堪能できるよ!」
『あら、ではゼア王子とは、どんな未来が待ってますの?』
ロザリーが、平静を装いながら妖精さんに質問した。
好きな人の事だものね。気になるよね。
って、夢の中だからロザリーは目の前にいるし、心の中で語りかけてもロザリーには聞こえないか。
「ん〜。
ゼア王子はね、深〜く愛してくれるよ」
『あ、愛っ!!』
顔を赤くして、思わず反応してしまうロザリーに、妖精さんはニコニコして答える。
「でね、ロザリーのやりたいことはなんでもさせてくれる」
『なんでも!』
妖精さんの一言一言に反応して、本当にロザリーかわいい!
って温かい目で見ていたら、妖精さんが今度は私の方を向いて言った。
「ヘンリー王子はね、甘々な感じで愛してくれるよ?」
あ……、甘々!!
ヘンリー王子は何かと距離が近いような気がするから、確かに、そうなのかも……。
ヤバイ。何だか私も顔が赤くなる。
「どの王子を選んでも、溺愛してくれるからロザリーは好きな人を選べば良いんだよ?
最初に会ったとき、お花あげたでしょ?
好きな人ができたら、あの花を渡してね☆
赤い糸で結ばれるから!」
もともとあった〔赤い糸〕を切ってリボン作って花に結んで、その花を渡したら〔赤い糸〕で結ばれる……って、何!? その無駄な作業!
引きつった私の顔に気付いた妖精さんが、ニコニコして話を続ける。
「糸ってね、細い繊維をより合わせて作られるんだよ。細長い線状の物が最初からあるわけじゃないんだよね」
「それは、なんとなくわかる」
「赤い糸も一緒。
毎日の行動で、ロザリーと気の合う人へと向かって細くて見えにくい繊維が伸びていってるんだよ。
それは、お互いに伸びあった時に糸になるのね。
しっかりした糸は1本でも、見えない赤い糸予備軍の糸は、いくつものびているんだよ。
その見えない赤い糸もぜ〜んぶ集めて、より強力な赤い糸効果が望める〔赤いリボン〕を作ったんだよ☆
すごくない?
赤い糸を超える繋がりが持てるんだよ?
ぜ〜ったい両思いになれそうじゃない?」
「効果が凄そうなのはわかったけど、人の心を歪めるのはどうかと思う」
より強力な赤い糸効果はドキドキするけど、実際に使うのかと思うと躊躇ってしまう。
「ふふふん。
大丈夫!
夢の中でしか渡せないし、ロザリーに興味がないと夢の中にも出てこないよ?
もう気付いたんじゃない?
ヘンリー王子は、夢の世界で言ったことと同じことを言ってなかった?」
「!!!!」
そういえば、何か聞いたことあると思ったセリフがある。
――“優しくしないくても良い”といった――
ヘンリー王子のその言葉が頭の中をよぎった。
ロザリーと魔法少女になった時の夢で、お姫様抱っこされながら聞いた!
あと、パーティーに参加した時にバルコニーで……。
どっちを思い出しても顔が赤くなる。
「心当たりアリだね☆
この夢の世界はね、『ロザリーに会いたいな』って思いながら眠った人の精神を直接繋げてるんだよ」
「じゃ……、じゃあ……夢で言われたことって」
「潜在意識で思ってることの可能性が高いよ。本音だと思っていいと思う!」
本音!!!!
何だろう!?
どんどん体が熱くなる。
待って、私、今までに何を言われたかしら?
一生懸命思い出そうとするけど、頭がうまく回らない。ただただ体温が上がっていく。
1週間もたってないから、そんなに夢を見てないはず。何を! 何を言われたっけ!?
『……本音って……本当ですの!?』
私の頭がグルグルなってると、ロザリーも真っ赤な顔をして妖精さんに質問してた。
「うへへへへ〜」
にたぁっと妖精さんが笑った。
それはなんとも下品で(本当にこの妖精は〔光の妖精〕なのかな?)と思うほどだった。
「そうだよ〜。ロザリーはゼアにぎゅ〜ってされてたね。フッフッフ」
ロザリーの顔が真っ赤になった。
頭から湯気が出そうなぐらいふやふやになってる。
私は、身を乗り出し、斜め前に座るロザリーの手を両手で握った。
「ロザリー。ステキなロマンスね!
私、応援するわ!!」
さらに指先まで赤くなるロザリーが本当にかわいい。
『ありがとうございます。
では、お礼に私もあなたを応援しますわ』
そういってロザリーは立ち上がり、優雅に私の所まできて、私も立つようにうながした。
(なんなんだろう?)と思っていたら、ロザリーは私の向きをクルッと変えさせて、背中を押した。
『今夜もヘンリー王子が来ましたわよ?』
え?
ドンッと何かにぶつかったんだけど、痛くはなかった。何にぶつかったのかなと顔を上げると、ヘンリー王子の顔がそこにあった。
「……ロザリー」
そう優しく囁いてぎゅ〜っと抱きしめられた。
これは!
ロザリーが夢を操作したの!?
それとも、無意識に心の底でロザリーを羨ましいと思ったから、こんな夢をみているの!?
タイミングが良すぎない!?
大混乱に陥る私に、妖精さんがテーブルでクッキーを掲げながらいった。
「ロザリー!
さっきも説明したでしょ?
目の前にいるのは〔ヘンリー王子の潜在意識〕だよ!
何かヘンリー王子に聞いてみたいことがあったら、聞いてみたら?」
楽しそうに、クッキーを持って踊る妖精さん。
その間にも、ヘンリー王子の力が少しずつ強くなっていく。
き、聞いてみたいことと言われても、こんなに強く抱きしめられては、それどころじゃないわよ――――――!!
って心の中で叫んだ所で目が覚めた。
「なんて夢なの!?!?」
『ホホホホホホ。ステキな夢でしたわね』
「夢よ! 夢!!」
『まぁ……あの妖精は夢の中でしか出てきませんから、〔本当〕なのか〔夢〕なのか判断がつきませんわね。フフフ』
ロザリーとっても嬉しそう。
他人事だと思って……と視線を落としたら、サラサラの金髪が目にはいった。
え!?
なんでティアが私のベッドで一緒に眠っているの!?




