第25話 ダンスでの修行は続く(挿絵有り)
ティアはこのゲームの世界のヒロインなだけあって、会っただけで心が洗われるようよ!
キラキラオーラでイライラが吹き飛ぶわ。
せっかくなので、2人でデザートを食べることにした。いつもティアと一緒のお付きのゼアは、親戚のおば様と踊っているらしい。
「ロザリー様。今日のドレスとっても素敵です!
今、流行りのデザイナーの作品ですね」
「え? そうなの?」
「はい。このドレス、リボンが可愛いんですけど背中が大胆にカットされていて、衝撃を受けたので覚えています。
中にブラウスを着て、広く開いた胸元と背中をカバーするなんて流石ロザリー様です!!」
「ほ……ほ、ほ、ほ(笑)
褒めてくれて、ありがとう」
笑ってなんとかごまかした。
人気のデザイナーって……。ヘンリー王子のプレゼント高そう……。
「ロザリー様、ここに来る前に街に寄りましたら、とても美味しそうなお茶がありました。フルーツのお茶だそうです」
「あら、それは美味しそ…………」
ん? “パーティーの前に街に寄った”?
確か〔最初のお休みの日に、街で3人目の攻略対象に出会う〕と、ゲームの説明書に書いてあった気がする。騎士団の人だったかな?
「ティア、もしかして街で“騎士団の人”に助けてもらったりした?」
「ロザリー様、よくご存知ですね。
そうなんです。
石に躓いて転げた所を、アイザック様に助けていただきました」
アイザック先生が3人目の攻略対象!!
どうりでカッコイイわけね。
しかし……、悪役令嬢の家庭教師が攻略対象って、ドロドロしそうな設定ね。「私の家庭教師なのに! キィ〜!!」とかありそう。
『フフフ。本当にドロドロしそうですわね。
当事者から見守る側になると、楽しいばかりですわ』
…………ロザリー。もはや他人事なのね。
確かパーティーでは、4人目の攻略対象に出会うはずだった気がする。
魔法学園の生徒会長だったかな?
「ティア、このパーティーで私以外に学園の人に会った?」
「えぇ。ちょっと変わった上級生の方にお会いしました。
何でも、学園に潜む悪魔を探していらっしゃるそうですよ?」
悪魔探し?
……4人目の攻略対象って危ない人なの?
それとも本当に、悪魔はいるの?
「やぁ。
あなた達も参加していたのですね」
声をかけてきたのは、ヨド先生だった。
別人!
先に声を聞いたから、ヨド先生ってわかったけど学園にいる時とイメージが違う!
『メガネが無いですわ!!』
ロザリーの言うとおりだわ!
今日はメガネが無い!!
メガネでこんなにイメージ変わるものなの?
『髪がセットしてありますわ!』
本当だわ!
目が隠れそうなほどの前髪がセットされて爽やかになっている!!
ゆっくり話す声とか長めの前髪とか、全てが大人の余裕というか、頼もしさを感じる!!
今日のヨド先生、とっても頼りになりそう!
『驚きですわね……』
うん。驚いた。
ロザリーと頭の中で会話している間に、ティアが、
「ロザリー様は魔法の修行のために、今日は参加したそうです」
と、ヨド先生に説明したらしく、気付いたらヨド先生と踊ることになっいて更に驚いた。
ヨド先生は、ダンスを踊れない私に合わせて歩幅を狭くしてくれたり、次の進行方向はどっちとかコソッと教えてくれたりした。
流石先生! 一緒に踊っているうちに何となくダンスがわかってきた気がする!
アイザック先生やヘンリー王子と踊った時は、わけもわからずただついていく感じだったのに、今はステップがわかってきた気がする!!
「お休みの日も、魔法の修行とは素晴らしい心掛けです」
ヨド先生の長めの前髪がフワッとなびいた。
カッコイイ!
あ!
今、気が付いた!!
ヨド先生、猫背じゃない!
いつもは軽い猫背。
でも今は背筋を伸ばして……、あれ? こういう場所が苦手なのかな? 控えめな笑顔……。でも、それがまたカッコイイ!
「先生。もしかして、こういう場所が……」
「……はい。苦手なんです。
主催者や周りの人に、失礼があってはいけないと気が張るんです。
ロザリーさんのおかげで、学園にはなれてきたのですけど……情けない先生です」
あ、いつもの先生だ。
ヨド先生がしょぼ〜んとなったので、いつもの先生だなと安心してクスクス笑ってしまった。
ただ気になるのは……私のおかげって、何が?
「ロザリーさんのおかげで、“一生懸命すぎるのも問題だから力を抜いてもいい”と思えるようになりました。
私の心が、とても軽くなったんです。
学園にいる間は何でも力になりますから、どんな事でも相談してくださいね。」
?
学園にいる間は...?
何だかひっかかりを感じる言い方だった。
先生はそういうものなんじゃないの?
「卒業したら僕のお嫁さんになりませんか?」
と、大人の余裕の微笑みで、サラッと言われた。
!!!!!!!!!!!
びっくりした!!
早くない?
出会って4日目ですよ!?
ゲームは2年間の学園生活なのに、まだ1週間もたってない!
まだ会ってない攻略対象も何人かいるのに出合って二日目でヘンリー王子から、四日目ではヨド先生からプロポーズされるの?
『良いのではないかしら?
それに、このプロポーズを受けたら、どんな波乱が待ち受けているか楽しみでしょうがないですわね。
ふふふふふ』
三角関係の予感にロザリー大喜び!
だけど、私の選んだ道は"逃げる!"だ。
相手が誰であろうと、ティアが“誰ルート”にいくかわからないんだもの。
〔断罪→追放→ドラゴンに食べられる〕この未来を避けるため、私は逃げる!!
「先生。 私には早いです。
結婚なんて、まだ考えられません」
と言ったところで、タイミングよく曲が終わったので、そのまま「す〜」っとヨド先生から逃げた。
そして、逃げた先で男性から声をかけられた。
「ヨド先生と親しそうに話されておりましたが、先生の知り合いの方ですか?」
透き通るような水色の髪に見とれて、
一瞬返事をするのを忘れてしまった。
「は、はい!
魔法学園で魔法を教えていただいています」
「あなたも魔法学園の生徒でしたか!
ぜひ、お話をお聞かせ下さい」
ん? あなたも?
「私は、サフラン・クロッカスと申します」
そう言いながらサフランさんが、左手をのばしてきた。何となく私も、右手をサフランさんの左手に置いた。
「ロザリー・バードックですわ」
「ロザリーさん。ヨド先生の教え方って、わかりやすいと思いませんか?
私は先生のおかげで、魔法が上達しました」
「私もです!
私なんて、ぜんっっっっぜんっ魔法が使えなかったのに、ヨド先生のアドバイスで見違えるようになりました!!」
そう……。ヨド先生のアドバイス通りにすると、校庭の木が焼け落ち、校庭は水に沈むほど……。
ヨド先生、すごい!
あ!
気がついたら、サフランさんとお話しながらダンスしてる!! サフランさんもリードが上手い! おかげで踊れない事をすっかり忘れてた!
「実は、魔法学園の学生で、ヨド先生の素晴らしさに気付いていない生徒って、とても多いんです。
だから、あなたに会えて良かった。
貴族のプライドなのか、心が弱いからなのか、“自分が魔法が使えないのはヨド先生の教え方が悪いからだ”って、みんな思うみたいで……」
「あぁ……、それはヨド先生がかわいそうですね」
「やはり、ロザリーさんもそう思いますか?」
どうやらサフランさんは、ヨド先生のことが大好きらしい。それにしても、ヨド先生の教え方が悪いから魔法が使えないなんてとんだ言いがかりだね!
そんなこと言う人がいるなんて知らなかった。
「ところで、ロザリーさん。
最近、妙な噂を聞くのですがご存知ですか?
魔法学園に"悪魔"が入学したそうなんです」
「悪魔……?」
「そうなんです。
一日目で、校庭の木を焼きつくしてクラスを恐怖に陥れ、二日目で校庭を毒の沼に変えた上にクラスメイトに怪しい妖術を使って人体実験をしたため、ヨド先生に焼き殺された人物です。
しかも、次の日には暗黒界から舞い戻り、クラスメイトを恐怖で従順な下僕にしてしまったそうなんです。
人は彼女を【暗黒令嬢】と呼ぶそうです」
『……あなたの事ですわね』
うっ…………!!
な、何も言い返せない……。
「更に恐ろしいのは、それだけの事をしておきながら無かったことになっているのです。
犯人を探そうとしましたが、無かったことなので犯人がわかりません。
特徴的な髪型をしているので、暗黒令嬢に会うとわかるそうですが、くれぐれも気を付けて下さい。
もしもの時は私に助けを求めて下さいね。
これでもいちおう生徒会長をしていますので、必ず助けに行きます」
「あ、ありがとうございます……。サフラン先輩」
『あなた狙われてますわね』
いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
上級生には【悪魔】って言われているの?!
そのうち【悪魔令嬢】とか言われだしたらどうしよう! もはや乙女ゲーム要素ないわよ!! ホラー・アクションゲームっぽいわよ!
『【暗黒令嬢】も充分、乙女ゲームから道を踏み外したあだ名ですわ。
今更そんな心配いりません』
ロザリー!
それ、フォローになってないよぉぉぉぉぉぉぉ!!
………………とりあえず、
今日はいつもの縦巻ロールでなくて良かった……。
メイドさん。今日は違う髪型をありがとう!




