第24話 ヘンリー王子とダンス(挿絵有り)
会場ではもうパーティーが始まっていた。
楽団の演奏が聞こえ、きらびやかな雰囲気に胸が高まる。体験したことのない世界に興奮するわね!
馬車から降りると、ヘンリー王子は注目を一気に浴びた。
「王子?」
「今日は王子がいらっしゃるのか!」
「ヘンリー王子が女性を連れている!?」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ヘンリー王子に注がれていた視線が、急に私の方へ!!
ひょぇぇぇ! と驚く私の手を握ったまま、ヘンリー王子は何も気にせずニコニコしながらゆっくり会場の中へと歩いていく。
凄いわ。何て堂々としているのかしら?
私も見習わないといけない。
(大丈夫。見た目はロザリーだから、私は美しい。
そ、そうよ……、私は、美しい!!!!)
『そうです!
私は美しいのです!!』
(う、美しい!!)
『そう! 美しいのです!!』
私は心の中でロザリーと「私は美しい」と何度も自分に言い聞かせながら、ヘンリー王子についていった。
“この女性は何者?”という女性からの視線が痛い……。
会場内へと歩きながら、ヘンリー王子はいろんな人と軽く挨拶を交わしてしていた。
すごいなぁ。流石王族ねって思っていたら、ついに私の事を聞いてくる人が現れた。年配で、ほがらかだけど偉そうな人。
「おや。こちらの、お連れの方は?」
「魔法学園で出会った、私の大切な人です」
ヘンリー王子!
その言い方は誤解を生みかねない!
何となく質問をした紳士も『え!? 王子の結婚相手ですか?!!』と言わんばかりの形相で口をパクパクさせて驚いていたから、横から、
「そう! 大切なクラスメイトです!!」
と慌てて口出しをしてしまった。
「あ……、あぁ!
くらすめいと。大切なクラスメイトですか。
ははははは」
年配の紳士は、納得してくれた。
よかった。婚約したと思われては困るもの。
悪役令嬢が早くに婚約しても、学園の卒業式あたりで断罪されて、追放とか処刑になるのがオチよ?
今じゃない! 今じゃないのよ!!
婚約するなら卒業間近が良い! そしたら、そこから断罪ってされなさそう!!
人が必死になっているのに、私の頭の中のロザリーは『あはは! あはは!』と踊るように笑い、『ドキドキしますわね』と嬉しそうにしている。
「ヘンリー王子! 踊りましょう!!」
と、この場を立ち去るべく、今度は私がヤケクソ気味にヘンリー王子の手を引いた。
音楽の聞こえる方が会場よね?
誤解をされるような紹介を、また誰かにされては困る。
踊っていれば、他の人から話しかけられることもないし、魔法の修行にもなる。
「……ロザリー。
君を罠にはめたのに、僕と踊ってくれるの?」
「?
だって、今日は魔法の修行のために踊りに来たのですよ?」
「え?
パーティーで踊る事が魔法の修行になるの!?
僕はそんなの初めて聞いたよ……」
「アイザック先生に言われたんです!」
ヘンリー王子は衝撃を受けた顔をした。
「学園に来てた“宮廷魔法騎士”のことですか……」
かなりショックだったらしく、ヘンリー王子は独り言をいいだした。……だ、大丈夫かな?
「あの時は“気に入らない”と思ったけど、なかなか良いこと言うな……。おかげでロザリーとダンスが出来……」
「ヘンリー王子、何をブツブツ言っているんですか?! 魔法の修行に協力してくれるんですか? くれないんですか?!」
アイザック先生にいわれたからパーティーに参加したのに……。
ヘンリー王子が踊ってくれないなら誰と踊ろうか考えようと思ったら、前のめりに返事がきた。
「する! 協力する!!
なんたってロザリーの魔法の修行のためだからね!
毎日だって、協力するよ!!」
「毎日?!
毎日こんなパーティーに参加なんかできません!
ヘンリー王子、私のことをからかってませんか?」
ヘンリー王子は何か嬉しそう。私はちょっと不機嫌になった。
本当なのに! 魔法の修行だって信じてくれてないんじゃないの?
イラッとしたけど、ヘンリー王子のダンスのリードは素晴らしかった。「こちらへどうぞ」と紳士的に道を導いてくれるようなダンスだった。
凄い! 私、踊れる!! 踊れているわ!
『王族ですものね。
今まで何人もの女性と踊って、女性を立てる踊り方を身につけたのでしょうね』
えっ! 今までなんにんも?
ロザリーの聞いて、何だか胸の奥がモヤッとした。
なんでかイライラする。
自分ではこのイライラをどうしようもできなくて、一曲終わった後、顔を引きつらせながら、
「王子。
ありがとうございました。
今まで何人もの女性と踊ってこられただけあって、ヘタクソの私でもとても上手に踊れました」
嫌味混じりのお礼をいってしまった。
どうも自分を抑えられない。
ロザリーの姿で魔法学園に通っているせいなのか、毎日(といっても、まだ3日だけど)鏡でロザリーの姿の自分を見ているせいか、心が15歳に若返ってる気がする。
私は、今、反抗期になっている!?
もう過ぎ去ったはずの反抗期。
本当の私はもっと大人で、イライラしてもある程度抑えることが出来るのに!!
今の私は全てのことにイライラしてしまう!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少し離れた所で――――――――――――――。
ヘンリー王子の護衛のジェイクとフォスターが、二人の様子を窺っていた。
「おい! フォスター!!
ヘンリー王子がイチャイチャしている!!」
「あぁ!
しかもロザリー様は、あんなにも怒りの感情をあらわにして!」
「王子! 魔法学園で、王子相手でも普通に接してくれる令嬢に出会えて本当に良かったですね!!」
「見ろ! 嬉しすぎて、ヘンリー王子のニヤケ顔が止まらないぞ!!」
「流石です! ロザリー様!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
曲が終わって、 ヘンリー王子と踊りたい令嬢が集まってきたのにもイラッとする。
これは良くない。
ちょっと自分の心を落ち着かせるために、ヘンリー王子から離れなければ!
「ヘンリー王子。
修行のご協力ありがとうございました!
では! 私は修行ため、他の方とも踊ってみようと思います!!」
といって、この場からス〜ッと立ち去った。
幸い、ヘンリー王子と踊りたい令嬢が集まってきていたので、人混みに紛れて逃げるのは簡単だった。
ヘンリー王子には、ああ言ったけど少し休もう。
デザートが沢山置いてある所に行くと、ティアがいた!
「ロザリー様!
お休みの日にもお会い出来て、とても嬉しいです。」
「私も嬉しいわ!! ティア!」




