〈第二夜〉 悪役魔法少女★ロザリー•ロザリー(挿絵有り)
夜。
魔法学園と小さな町の間にある森に、巨大なモンスターがあらわれた。
私は走った。
「ロザリー! 急いで!!」
掌サイズの妖精がとんできて、私をせかす。
この妖精……なんか、見たことある……。
そうだ!!
「きのう夢の中であった妖精さん!!!!」
「おぼえていてくれたの? えへへ。
あ、いけない。
そんなことより、ロザリー!
森にモンスターがあらわれたんだよ!」
「知ってる! だから走っているのよ!!」
あれ?
走っていったところで、私に何か出来るのかな?
現地につけば、3人の男性がモンスターと戦っていた。
白いタキシードに、白いマント、そして、顔の半分が隠れるほど大きく派手な仮面。
仮面舞踏会に参加するような服装だった。
「何?! あの派手な人達……」
「仮面戦士、“ヘンリー仮面”と“アイザック仮面”と“ヨド仮面”だよ!!
正体不明の正義の味方だよ!」
いや……。
その名前たと顔を隠してても、3人とも正体バレバレだよ。
「つまり……。
“ヘンリー王子”と“アイザック先生”と“ヨド先生”ね」
「さすが“悪役魔法少女”!
僕がこの国の王子だと、もうバレてしまった」
“ヘンリー王子仮面”がとても満足そうに微笑んだ。
仮面をつけていてもイケメンね。
でも気になる言葉が……。
「あくやく……まほうしょうじょ?」
『そうですわ。
私達は〔魔法少女〕ですのよ?』
「……うそ」
聞きなれた声が聞こえて左を向けば、そこに同じ顔の少女がいた。
「ロザリー!!」
『約束通り手をかしに来ましたわ』
ロザリーが目の前にいる!!
同じ顔の人物が2人いるのに誰も不思議に思わない。
これは夢ね!!
ロザリーがいるなら私は元の世界の体かと思いきや、そうでもなくて私もロザリーの姿。
いつものでっかいカールが、私の足元を見えなくしている。
そして黒を基調とした“魔法少女”の衣装!
「さ、ロザリーさん達!
ここで魔法少女の決めゼリフです!!」
妖精さんがとんできて、そう叫んだ。
『よろしくってよ!
こら!
そこのモグラ型モンスター!!』
ロザリーがモンスターに向かって叫ぶと、私の口が勝手に動いた。
「これ以上あなたの好きにはさせないわ!!
この〔暗黒令嬢ロザリー〕と!」
『「悪霊令嬢ロザリー〕が!』
『「暗黒界へ送ってあげるわ!!」』
あぁ。ついに自分で暗黒令嬢って言ってしまった。
ロザリーなんか、自分が悪霊だって認めたし。
……暗黒界。
夢の中では“ある”っていう設定なのね。
「君達が来たからには、もう安心だ。
さぁ!
ここからは力を合わせて戦おう!!」
「俺達じゃ退治しかできないからな」
「あなたたちの魔法なら、モンスターを傷つけずに元の世界へ送ることができるから、来てくれてありがたいです」
仮面戦士たちはとても嬉しそうにそうにいったあと、巨大なモンスターへと挑んでいった。
それとは別に、他に数人いた町の人が恐怖の叫び声をあげた。
気がつかなかった。他にも人が何人かいたのね。
「うわぁぁぁぁぁ!
悪役魔法少女が現れた!」
「もうお終いだァァァァァ!!」
「逃げろ! とにかく早く逃げるんだァァァァァ」
「暗黒界に引きずり込まれる!!」
えぇ!? なんですって?!
私は夢の中でも、何かやらかしてるの?
「僕達が時間をかせぐよ!」
「たのんだぞ!!」
「ロザリーさん達、お願いしますね」
ヘンリー仮面とアイザック仮面とヨド仮面は、モグラ型モンスターと戦いながら声をかけてくる。
お願いされても、どうすればいいの?
迷っていたら、モグラ型モンスターの右足がこっちに向かってきた。
ヘンリー仮面たちに攻撃されて、モンスターがよろめいたからだ。
(吹き飛ばされる!!)
そう思った時、モグラ型モンスターの足に〔水の魔法〕が直撃した。
「謎の戦士ゼア仮面!!」
妖精が叫んだ。
いや、まって。
それ、ティアのお付きのゼアってことだよね?
『何をボケっとしてますの?
必殺技のチャンスですわ!』
「え? あ、うん」
『「ダブルロザリーアタック!!!!」』
ロザリーと一緒に叫ぶ。
すると、どこからか一つ目で一本足の烏が飛んできて、私とロザリーのステッキが紫に光った。
モグラ型モンスターの足もとに紫に輝く魔法陣が広がる。
(え? カラス?!)
魔法陣からは黒い煙が溢れだす。
「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「巻き込まれるぞ!!」
「暗黒界に引きずり込まれる!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
仮面の戦士を見たくて残っていた町の人が、悲鳴をあげながら逃げていく。
夜の森で、紫に光る魔法陣に黒い煙は、たしかに不気味よね。
しかも、おでこの部分に大きな目が一つある一本足の烏が必殺技の発動をうながすって……。
魔法陣は「ゴゴゴゴゴ」という音をあげて、モグラ型モンスターを飲みこんだ。
それは何だか恐ろしい光景だった。
あ、〔正義の味方〕の仮面戦士たちに対して、町の人を巻き込みそうになり恐怖を与える〔悪役〕の魔法少女ってこと?
町の人への配慮がたらないから“悪役”とついてしまうのか……。夢の中とはいえ、なかなか厳しい世界ね。
そんなことを考えていたら、木から落ちそうになった。必殺技で大量の魔力を使ってしまい、足がふらついたみたい。
(意外と体力いるのね)とか思いながら体勢を立て直そうとした時、“ヘンリー王子仮面”が手をかしにきてくれた。
「お姫様だっこ!?」
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ドキドキするからやめてほしい!!
木から落ちそうになったところを助けに来てくれたのは嬉しいけれど、お姫様だっこで木から木へと跳び移るって、さすが夢ね!!
でも今は顔を見れたくない。
顔が、顔が真っ赤になるのを止められないのが自分でもわかる!
真っ赤な顔を見られるのは、はずかしい!!
「このまま君を王宮に連れて帰るってのも良いよね」
ヘンリー王子仮面が何か言っている!
ドキドキしすぎて何を言っているのかよくわからない!!
「?!
なにをおっしゃっているのか、よくわかりませんが、い、いじわるしないでくださいね!!!!」
とりあえず叫びながら、お願いしておいた。
地面は!?
地面はまだなの!?
「でも君は、“優しくしなくていい”と言ったじゃないか」
「……!!」
さっきと違い、静かにゆっくり話したヘンリー王子仮面の言葉がしっかりと耳に入ってきた。
頭が「ボンッッッ!!」って爆発したかと思うぐらい、顔の温度がさらに急上昇した。
ロザリーが、ロザリーが寝る前に変なこと言うから、こんな夢を見るんだ!!
それから無言のままで、“ヘンリー王子仮面”はお姫様だっこをしたまま木から木へと跳び移り、やがて地面に降り立った。
顔が真っ赤なのを変にからかったりされなくてよかった……。
「“優しくしなくていい”と君は言ったけど……」
「……?」
「大好きだから、優しくしたいと思うんだ。
……困ったものだよね」
「!!」
ドキドキしすぎて言葉が出てこなかった。
もう何も考えられない。
ヘンリー王子仮面は、そんな私の頬にそっと手をのばして、はにかんだ。
「夢の世界でずっと一緒にくらすのもいいけれど、やはり現実で君にふれて存在を感じたいから、今日はおとなしく帰るよ。
じゃあね」
そういって、ヘンリー王子仮面は闇へと消えていった。
ヨド仮面とアイザック仮面がいつのまにか近くにいて、私の頭をポンポンとなでてさっていった。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ、ドキドキした!」
謎の戦士が立ち去ってから一気に気が抜けた。
夢って恐ろしいわね。
ヘンリー王子があんな甘いセリフを悪役令嬢の私にを言うわけないのに、妙にリアルだった!
夢の世界。本当、おそろしい……。
「カァ!」
「あ、まだいたの?
魔法の発動をうながした不気味なカラス。
ダックスフンドよりデカイ……
いやぁぁぁぁぁ!
肩に止まろうとしないで!!
こわいぃぃぃぃぃ!!!!」
「いやぁ、無事にモンスターを暗黒界に送り戻せて良かったですねぇ」
烏が肩に止まろうとするので逃げ回っていたら、妖精さんが飛んできた。
「そのカラス、悪役魔法少女のマスコットキャラですよ? かわいがってあげてください」
「急には無理! 怖い!!
こんな時こそロザリーじゃない?!
ロザリー!
助けてロザリー!!
悪夢を見たら助けてくれるって約束してくれたじゃない!!!!」
必死にロザリーをよんだら、ふらふらとロザリーが歩いてきた。
あれ?
いつもの自信満々な態度は?
「ロザリー? あの、だいじょうぶ?」
「ふふふ。
悪霊令嬢のロザリーさんは、謎のゼア仮面に『ぎゅ〜』ってされたんですよね?」
「ぎゅ〜?」
妖精さんが何を言っているのかわからなくて、ロザリーに説明してもらおうとロザリーを見れば、顔が真っ赤!
「じつはですね、必殺技で魔力を大量に消費してふらついたロザリーさんを、ゼア仮面が抱きしめたんですよ!」
「あ、だから『ぎゅ〜』ね」
「いえいえいえ。
それだけじゃないんです!
『ロザリー。生きていてくれて良かった』って、いってからの『ぎゅ〜』です!!
しばらく抱きしめられてましたね」
「!!
ロザリー! 恋! 恋の始まりね!!」
一つ目一本足の烏が私の肩に止まったけれど特に害はないし、もうどうでもよくなった。
「あぁ! ステキなロマンスね!!
詳しく、詳しく聞かせて!!」
『よ、よろめいたところを、助けていただいただけです!!』
「それでいいから、そこを詳しく!!」
そこからは妖精さんと「キャーキャー」言いながらロザリーに話しを聞こうと盛りあがったところで目が覚めた。




