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悪役令嬢にとりつかれました!  作者: 葉桜 笛
悪役令嬢にとりつかれました!

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20/92

第19話 ダンス(挿絵有り)

「皆とても良いお嫁さんになると思う」




 ……失言しつげんだったかな?

 マリーには言ってはいけなかったかな?

 



「いいえ。それはロザリー様です。

 ロザリー様は最強のお嫁さんになれますわ」




 と、マリーが得意気とくいげに言ったので、ホッとしたけど……。


 さ、〔最強〕って……めてるのかしら?

 褒めているのか、嫌味いやみなのかどっちかな? と思ったらロザリーに『よく見るべきですわ』と言われた。




 あ!




 マリーのまわりに花がっている!

 この世界独特(どくとく)の、愛があふれた時に舞う花!




「ロザリー様の旦那様になるおかたは世界一の幸せ者ですわ」

 ニコニコ笑顔でそう言ったスピカのまわりにも、花が舞っている。


「ロザリー様こそ、とっても良いお嫁さんになると思います」

 ティアも、花をわせながら笑顔でそう言ってくれたから、うれしくて涙が出そうになった。


「ありがとう。私はクッキーの作り方さえ知らないのに、皆にそう言ってもらえて嬉しい」




 と話したら「クッキーの作り方を知らないのに対決を申し込んだのですか!」と皆に笑われた。

 それは、とてもとても温かい雰囲気ふんいき片付かたづけタイムだった。






 ボウルや小麦粉などが片付かたづいたので、外に出たままの机の上をきに行くと、すれ違いざまゼアに、




「クッキーを作れなくても、嫁には行ける。気にするな」

 



 と言われた。

 突然とつぜんの事だったので、すごく驚いた。

 ゼアなりに、気を使ってくれたのだなと思うと、笑いがみ上げてきてクスクス笑ってしまった。




 机をいたので、校舎内の家庭科室に向かうと、家庭科室から校庭に向かうヘンリー王子に声をかけられた。




「ロザリー。水の魔法なら、君に勝てると思ったのだけど……今回も僕の負けだ」


「いや、私の魔法は暴走しているので、王子に勝てたとは思っていませんよ?」




 だって、ねぇ?

 ヘンリー王子は見事に制御せいぎょしていたもの。




「そう?

 じゃあ、その言葉に甘えて、君に伝えたい事があるんだ!」




 私の返事を聞いて、突然ヘンリー王子の表情が明るくなった。


 男の人ってプライドで生きているものね。

 まして、一国いっこくの王子ともなるとプライドが高そう。とりあえず、機嫌きげんを良くしてくれたなら良かった。

 ただ……。間近まじかで見るとキラキラすぎてこしけそうになるから、少しはなれてほしいと思っていたら、




「ロザリー。宮殿に来てほしい……」と、言われた。





 ヘンリー王子もか! 





 アイザック先生にいで、ヘンリー王子までもが、〔宮廷魔法騎士〕になれと言うのか!!


 衝撃しょうげきを受けている私とは別に、頭の中のロザリーは、『きゃあきゃあ』と喜んでいる。

 将来しょうらい、安定しそうなしょくだものね。




「なるほど。

 たとえ魔法の制御せいぎょが出来なくても、魔法の威力いりょくが強そうな人は早めにスカウトしようというわけね」


「え?」


「しらばっくれなくても良いです。

 先程さきほどアイザック先生にも言われました。

 でも私、学園に入ってまだ2日ですし、自分に自信が持てないんです。

 この先の授業に着いていけるかもわかりません」


「ロザリー、僕は……」


「王子。

 ティア達3人が宮廷にさそわれたのに対し、私だけおまけみたいに勧誘かんゆうされたのを気にしているのですね」


「え、何の話……?」




 ヘンリー王子はとぼけたフリも上手い!

 私が傷つかないように気を使ってくれるとは!!

 問題児もんだいじの私に、こんなにも気を使ってくれるなんて、将来しょうらい良い王様になるね。

 ありがとう。

 でも、




「そんなに優しくしてくれなくても良いですよ」


「???

 ……そっか。

()()()()()()()()良いか……。

 こういう事は"け引き"も大事だものね、ロザリー?」




 "駆け引き"って人材確保じんざいかくほのため?

 何かよくわからないから、笑顔で話を流して逃げた。


 だって、ヘンリー王子は笑顔なんだけど、何か腹黒はらぐろいオーラを感じてゾクゾクしたんだよ。宮廷ってそんなに人材じんざい足りないのかな? 実は魔法を使えるひと少ないの?







 学園からの帰りは、しろくてプリンセスが乗ってそうなカーブの多い作りのプリンセス馬車が、とてもなつかしく思えた。


 長い1日だった。


 クッキー対決が終わったら、すぐもとの世界にもどれると思ってた。まだ何もきないから、今日の夜に日付ひづけが変わると同時に帰れるパターンかも!


 これが最後になるだろうから、プリンセス馬車を思いっきり楽しんでおこう!


 学園を出発し、林をけてお店がいくつか並んでいる通りに出てくると、数人の通行人がいたので挨拶あいさつをした。




「大工のおじい様。お疲れ様です。

 新しいお店かしら? 素敵すてきな建物ね」

「ごきげんよう。奥様。明日もよい一日いちにちを」 




 かけたひと全員に声をけていった。馬車の窓もカーテンもまっているので、誰にも聞こえないけどね。

 聞こえないから、思いっきり〔お姫様ごっこ〕を楽しんだ。シンデレラ気分で、馬車から手を一人ひとりお姫様ごっこは楽しかった。





         *

         *

         *





 お屋敷おやしき(山の中の魔法学園に通うための別荘)に帰れば、今日もまた執事さんとメイドさん達がずらりと並んでむかえてくれた。

 そして、執事しつじさんに今日も聞かれた。




「お帰りなさいませ。ロザリーお嬢様。

 今日の授業はいかがでしたか?」




「校庭を水浸みずびたしにしてしまった」とは言えない。「先生に殺されそうになった」なんて、もっと言えない。




「そうね。

 昨日も思ったけど、やはりおしかた上手うまい先生だったわ」




 うそは言ってない。

 だって昨日は水の魔法を使えなかったのに、今日は使えるようになった。これはヨド先生のおかげ。




「それは良かったですじゃ」




 執事さんのおだやかな笑顔、いやされるわ。

 とても長く感じる1日だったため、一週間ぶりぐらいに帰ったような安心感がある。


 今日は本当に疲れた。

 ご飯を食べて早く寝よう……と思ったら、 





「お前、すごいな」



「え? アイザック先生?!『今日は家庭教師はお休み』って言ってませんでしたっけ?」


「お前が出した〔紫の水〕を早く片付かたづけて、様子ようすを見に来たんだよ。一応いちおうな」


「? そうですか」




 様子ようすを見ると言いつつ、「やっぱり今日も魔法のレッスンをやる」と言われるかもしれない。

 なので、屋敷やしきうらにある厩舎きゅうしゃ近くのテーブルでお茶を飲みながらお話を聞く事にした。


 



「お前、猫(かぶ)るの上手うまいよ。

 何だ、あの、『おしかた上手うまい先生だった』は!

 確かにそうだけど、すごく自然に色々とかくしたな。俺はお前を尊敬そんけいする」


「嘘は……ついてないですよ」




 私はいぶかしげしげにアイザック先生を見た。

 お説教せっきょうをされるのだろうか?




「貴族のお嬢様なのに、悪がきッポイのが面白いってめてんだよ」




 そうですか。

 ほめたのですか。

 ほめるなら、わかりやすくしてほしい。

 でも、これ喜んで良い事なの?




「と、いうわけで今日の稽古けいこは、ダンスだ」




 え?!

 何が「と、いうわけ」なのかわからない!

 学園では「今日の家庭教師はお休み」と言っていたのに、やっぱり家庭教師するのね。

 しかも、なぜかダンス!


 私はあせった。

 アイザック先生のいやがらせによるストレス発散はっさんタイムになるのかな?

 ダンスなんておどれないし、不安……

 



「お前、自分に自信がないだろ。

 それが魔法に出ている可能性がある。

 自信がないから、必死に全力で呪文じゅもんとなえる。

 そして、大惨事だいさんじ




 あたってる。

 火の魔法も、水の魔法も出せる気がしなかった。だから必死に呪文を唱えたら、まさかの大惨事になった。

 え? だからってダンスをする理由にならないんじゃぁ……。




「さ、ロザリー様」




 と、アイザック先生は腰の剣をテーブルに置いて立ち上がり、私に近付いて来た。そして、左手で紳士的に私の右手を下から軽くにぎる。

 それと同時に、私の左肩甲骨(けんこうこつ)下に右手を当て、私を右胸に引きせた。

 その動作全てがスマートで紳士的だったので、それはとても自然な事だと思えた。




 

 いやいやいやいやいや!


 



 アイザック先生があまりに自然すぎて、されるがままになってたけど、“自然な事”なんかじゃない!


 だいたいアイザック先生は口は悪いけど顔はカッコイイ上に、身長が高い!

 魔法の練習の時は上着をいで黒のTシャツ姿になるんだけど、今日は宮廷魔法騎士の制服を来たままなのでさらにカッコいい!! 

 その上、とつぜん紳士的な言葉を使われると体温が急上昇きゅうじょうしょうしちゃうわよ!!


挿絵(By みてみん)


 騎士だからなのか、すっと背筋せすじびてて王子様みたいだし、ふれている手とか、あたっているうでの一部分から(筋肉ついてるな〜)とか(ヘンリー王子より筋肉あるな。騎士だもんなぁ)とか考えてしまうのよ!

 だから、その流れでヘンリー王子にお姫様だっこされたのを思い出したりもして、はずかしくて顔が赤くなる!


 連想れんそう終わって、われに返ればアイザック先生との距離が近くてドキドキする!

 現実世界ではアイザック先生との方がとしが近いから、余計よけいに意識してしまうのよ!!


 しかも、こんな時にかぎって夕陽がキレイ!

 もう頭の中ぐちゃぐちゃ。

 頭から火が出そう!





「踊りましょう」





 と、アイザック先生は静かに微笑んで、ステップをんだ。

 ちょっと! まって! 私、ダンスなんてならっていないんですけど!



 でも、あれ?

 ……おどれてる。



 というか、今、あれ?

 今も..?


 体がれてる一部分を少しだけされたり、引かれたり……私、さりげなくあやられてる!! 

 急に紳士になったけど、アイザック先生のオラオラ気質きしつ変わってない!

 自然に人を思い通りに動かしている!!

 そして、ふれてる部分が全然ぜんぜんいらやしく無い!

 そう、これはたとえるなら……




 お姫様(あつか)い!!




 私は今、お姫様扱いを受けている!

 アイザック先生は、私をお姫様扱いしながら、思い通りに操っている。




感覚かんかくするどいな。

 リードするたび反応はんのうするとは……」


「“リード”っていうか、人をあやつってますよね」


「いいや、“リード”だよ。

 ま、細かいことは気にせず、とりあえずダンスを楽しんでみろ!」




 アイザック先生はそう言うと、スピードをげた。

 一直線にタッ、タッ、タッ、と大股おおまたで進んだかと思うと、「グルン」と左に回って遠心力えんしんりょくで私の体が外に体重がかかった。

 その遠心力を利用りようして、アイザック先生は私をグインッとななめ上に持ち上げた。





 うわっ! 空を飛んでるみたい!!


 



 「ブゥワッ!」っと体がいて、体が中にとどまる。

 "位置エネルギー"ってやつだ!

 学校で「物を投げた時、一番高い位置で物体がその場にとどまろうとする」っていうような事をならった気がする。


 それから、「フワッ」と女神が地上にり立つように、ゆるやかに私は地上に降ろされた。





 何これ!

 遊園地のアトラクションみたい!!





「アイザック先生! これは楽しいです!!」

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