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悪役令嬢にとりつかれました!  作者: 葉桜 笛
悪役令嬢にとりつかれました!

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19/92

第18話 誤解(挿絵有り)

『普通に生きてて、〔黄緑色のオーラ〕が出る人間なんていませんわよ?』


 そうよね?

 普通の人間は〔黄緑色のオーラ〕なんて出ないよね。


『抵抗するべきですわ』


 わかったわ!

 私は足を踏ん張り、つえにぎりしめた。

 そう。杖を握りしめただけなんだけど……。






「大変だ! 暗黒令嬢が本気を出すぞ!!」

「逃げろ! 逃げるんだ!!」

「もう、校庭だけではすまされないぞ!!」

「とにかく逃げろ!」



 え?

 え?

 え?

 え?



 何故か外野がいやが騒ぎ出した。普通の人間が校舎を壊せるわけないじゃない! しかも校庭から校舎までの間に中庭があるし、ちょっと距離がある。しかし、もうそれどころじゃない。

 私は先生の誤解ごかいを解く!




「ヨド先生。

 マリーとスピカは努力家です。

 そりゃ顔は意地悪そうな顔に見えますけど、それは今までくやしい思いをしてきたからです。

 頑張っても、突然現れた他の令嬢に自分の立ち位置を取られたら、ちょっと心がひねくれたりもします!」


「ダカラ クラスメイト ヲ  イジメテモ 良イイト、 アナタ ハ 言ウ ノ デスカ!

 “土ヨ、 アノ者 ノ  動キヲ  メロ!"」




 ヨド先生が〔土の魔法〕をってきた。

 かさずヘンリー王子とゼアが前に出て〔水の魔法〕で撃ち落としてくれる。




 あ―――!! ダメだ! 全然ぜんぜん会話にならない! しかも何か先生って話し方がおかしい!! 子ども番組の怪人みたいになってる!




「そもそも、苛めてなんかいません。

 どっちが美味しいクッキーを焼けるか、対決していただけです!」


「対決 ノ フリ シテ、〔光 ノ 魔法 使イ〕ヲ 焼コウ ト シテ イタ!」


「そんな事してません!

 だって私はティアが大好きだもの――!」




 思いのたけをぶつけるように叫んだ。

 すると花がブワッと舞い上がり、ヒラヒラと舞い降りて来た。




 あ、これ、私の花だ。




「先生! ロザリー様は私のために、クッキー対決を申し込んでくださったのです!」

挿絵(By みてみん)



 私でも花が出るのだなと思っていたら、ティアが割って入ってきた。

 そして、真っ赤な顔で、




「ロザリー様は、その、私がヘンリー様の事をおしたいしていると勘違いして、私とヘンリー様が仲良くなるきっかけにと、対決を申し込んでくださったのです」


「え! 勘違い?

 ティアはヘンリー王子の事、好きじゃないの?」


「人としては好きですが、恋愛のそれではありません。どちらかと言うと、不器用ながらも気にかけてくださるロザリー様の方が好きですわ」




 と、はにかむ笑顔がまた、可愛い。

 鼻血出そう。




「ふたりとも、花が舞っている……。

 嘘ではないようですね。

 ですガ、学園ノ平和ヲ乱すモノは、排除……」




 普通の話し方に戻りそうだったヨド先生が、また変なしゃべり方に!

 ……苦しそう。

 先生の体にビリビリ横線が……まるで古いTVみたい……。

 これって……。




『ゲームのプログラムのバグですわね。

 あらためて、自分がゲームの世界の住人だったのだと思い知りますわ。

 どうやら"学園の平和を保つ"という事に過剰反応しているみたいですわ』


 どうしたらヨド先生は治るの?


『わかりませんわ。

 ……〔光の魔法〕なら、もしかしたら……』


「ティア! ヨド先生に〔光の魔法〕をかけてほしいの」




 私は、すぐさまティアにお願いした。

 ティアは深くうなずいて、ヨド先生に光の魔法をかけた――――。




「“光よ。この者をやしたまえ”!」


 


 すると、先生の体の中から〔黄緑色のモヤ〕が出て来て、空に登って行った。それは不気味で、空にのぼっていくのは何とも信じられない光景こうけいだった。




『何をしてますの?!

 あの〔黄緑色のモヤ〕を燃やしなさい!!』


 え?

 モヤ(あれ)を燃やすの?


『何のためにあなたをこの世界に引きずり込んだと思ってますの?!

モヤ(あれ)”がわたくしが死んだ原因ならば、あれを燃やすべきですわ!』




 あわてて〔火の魔法〕をとなえようとしたのだけど、〔黄緑色のモヤ〕は空の彼方かなたへ飛んで見えなくなっていた。



 あの〔黄緑色のモヤ〕、ティアの魔法で消滅したんじゃないのかな?


『チッ。たとえ消滅であろうと、りはキッチリ返してやりたかったですわ!』

 

 ロザリー、怖い……。

 や、役立たずでごめんね……。




 ヨド先生はフラッとしながら、

 



「何故、僕はここに?

 放課後と思ってましたが……今、授業の時間ですか?」




 少し記憶がけ落ちているみたいだけど、やった!

 良かった! 良かったねロザリー!!

 プログラムのバグ取れたよ!

 と安心したのもつかの間。




「お前ら! 何やってんだ!!」




 ほんわかムードの中、怒りの声が響く。

 校庭の階段のおどり場からはまだ見えないけど、声のぬしはアイザック先生だった。

 校舎から大股おおまたで歩き、マントをひるがえしながら近付いて来るのが、少ししたら見えてきた。




「人がちょっと休憩きゅうけいに行ってる間に、大騒おおさわぎじゃねぇか。

 ……話をくわしく聞かせてもらおうか?」




 優雅ゆうがで威厳のある歩きをしながら

 ずっと文句もんく言ってる。

 何だか怖い……。

 逃げたくなってきた。

 そうだ!

 逃げよう。そうしよう。

 と、こっそり逃げようとしたら、




「ロザリー、職員室に来い!

 取り巻き3人も一緒だ!」


「取り巻き3人?

 アイザック先生、ティアは私の取り巻きではないです……」




 と、言いかけた所で


 


「ヨド! 貴様もだ!

 オマエラ、ゼンイン、コイ」




 うぅ~。

 アイザック先生の怒り、てしない。


 私達は抵抗できず、私とティアとマリーとスピカとヨド先生とで職員室へと向かった。










「なぁ、教師が生徒を殺そうとするってヤバイ話だぞ?」



 職員室に行くと怒られると思ったのに、アイザック先生は真面目まじめに事実確認を始めた。


 


「僕はそんな事を?!」




 とヨド先生は頭をかかえた。


 


「数人の女生徒から、ロザリーさんがティアさんを殺そうとしていると聞きました。

 誤解ごかいだと思ったのですが、いちおう確認のために校庭に向かったんです。

 途中ティアさんに向かって杖を振り上げたロザリーさんが見えて、危ないから止めなきゃと思ってから記憶がひどくボヤけて……。

 まさか、ロザリーさんを殺そうとしてたなんて僕は消えてしまいたい……」

 



 と言って、しぼんでいる。




「本当にすみませんでした」


「ヨド先生! 私は生きています!

 ねぇ、皆!

 ティアがヨド先生に〔光の魔法〕をかけたら、緑のモヤが空に登っていくのを見たでしょ?

 ヨド先生は《《悪霊》》に《《とりつかれていた》》のよ!

 だから、皆!

 今日の事は忘れましょう!!

 "今日の放課後は何もなかった"それでいいじゃない?」


「ロザリー様はそれで良いのですか?」


「もしもとりつかれたのが自分だったらどう?

 正気しょうきに戻った時、乗っ取られていた間の事を責められたらつらいよね?」


「……確かに辛いですわ」


「でしょ?

 だから、皆! 忘れましょう!

 被害者の私が言うのだから良いのよ!!」




 と、無理やり押し通した。

 だって、先生の行きすぎた考えはプログラムのバグだもの。めるのは可哀想だ。

 ヨド先生の姿がビリビリとかすんだ時は恐怖しかなかったけど、もとに戻って良かった。




 話を無理やり終えた所でアイザック先生が、口を開いた。




「君達、卒業したら宮廷に来てはどうかな?

 妖精を呼び出せる者や、精霊と契約した者はいるが、例え偶然でも実体化した精霊をび出せる者はそうそういない。待遇たいぐう良くむかえてもらえるぞ」



 

 アイザック先生、宮廷モードになってる!

 職員室に呼び出した本当の理由は、勧誘かんゆうだったか!


 にしても、私が焼かれている間にマリーとスピカが

 水の精霊をび出したというのには本当に驚いた。すごい子たちね




「素敵なお話ありがとうございます。でも……」

 



 と、ティアとマリーとスピカがチラチラこっちを見た。

 まさか、精霊を喚び出せない私に気を使っているの?いいのよ?気にしないで――――――




「ロザリー様が王になった時、そばでおつかえしたいのです。」








 え”え”ぇ――――――――――――――っっ!








 あなた達、本当に私が王様になると思っているの?!





『ホホホホホホホホ! 良い心がけですわ!!』




 ロザリー大喜び。

 いやいやいやいやいやいやいやいや。


 


「私、王様になる気なんて無いわよ?」




「え? そうなの?」という顔をするティアとマリーとスピカ。「まぁ、そうだろうね」という顔をするアイザック先生とヨド先生。




「ま、卒業までまだあるから頭のすみに入れておいてくれ」




 これで今回の話は終わり。そんな空気になった時、ヨド先生が




「そういえば、ロザリーさんが二人に妖術をかけたと聞きました。

 いったい二人に何をしたのですか?」


 


 疑問を投げ掛けてきた。

 アイザック先生も興味があるみたい。




「ボイストレーニングです。

 ヨド先生のお話を聞いてて、それぞれの精霊にとって、聞き取りやすい音がある事を理解しました。

 だからヨド先生がお話された〔可愛い声〕を出しやすい発声法を2人におしえたんです」




 そして私は、お昼にマリーとスピカにした〔声を出すときのポイント〕を説明した。顔の中の筋肉とポジション。そのためのヤッホーのポーズ。

 説明を終えるとヨド先生が、




「そうですか。

 まだ授業が始まって2日しかたってないのに、僕の話を聞いて、そこまで考えていたのですか。教えがいがあります」


 


 って言ってくれて、〔妖術使い〕という誤解もとれたので本当に良かった。




「へぇ。ヨドってそこまで魔法の研究してたんだな。どうりでこの学園の生徒の魔法まほう習得率しゅうとくりつが高いわけだ。

 〔聞き取りやすい音〕があったとは……」




 アイザック先生が感心かんしんしているから、どうやら〔精霊の聞き取りやすい音〕はヨド先生が独自どくじに研究したものらしい。




「俺、そんなの気にした事なかったな」




 あぁ、アイザック先生は天才肌てんさいはだの人だ。

 昨日「初心者に魔法教えるの苦手」って言ってたものね……。


 ま、何はともあれ誤解が解け、私達は帰れる事になった。わかぎわ




「宮廷への話は、お前もだぞ。

 推薦すいせんするから、俺の部隊に来いよ」




 と、アイザック先生に、とても温かい目をして言われた。

 何やら感動的なムードを出されようとも、たまったものではない。優しいヨド先生の教え方と違って、スパルタ教育に違いないと思う。


 


「あ、すみません。

 〔宮廷魔法騎士〕は私には無理だと思います。

 私、ヨーロッパの剣は苦手なので……」




 と、やんわり断っておいた。

「ヨーロッパ?」とアイザック先生が首をかしげていたけど、〔剣が苦手〕という事は伝わったようだった。

 そうだよね。〔ヨーロッパ〕はわかんないよね。気を付けよう。







 帰れる事にはなったけど、忘れてはいけないクッキー対決の後片付け。

 マリーとスピカとティアと、ティアを待ってたゼア。そして、ヘンリー王子と護衛の2人までもが後片付けを手伝ってくれた。




「皆、ありがとう。

 〔クッキー対決〕したいと言い出したの私なのに、最後まで付き合ってくれて嬉しい……」




 マリーとスピカにいたっては、準備までしてくれたのだ。




「皆とても良いお嫁さんになると思う」




 片付かたづけをしながら、ティアとマリーとスピカを見てたらポロッと言ってしまった。

 は! マリーは婚約破棄された過去があるから嫌味いやみに受け取れたらどうしよう?


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