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67.ペルクリウス魔法店

《納屋67》


 昨夜はウィリアムが宮殿へ行き、アメリシア殿下の荷物持ち出しを手配してきた。今朝方その荷物の回収も済ませて、今は内層へ買い物に来ている。


 錬金素材を買うため、龍皮紙を扱えるところを見せたら、店長に奥へ引き摺り込まれそうになったりもしたが、2割引で買い物できて結果的にはよかった。

 次は皇国一の魔法店だ。


 店を出てからずっとアゼリーナさんが挙動不審だ。

 時々、並んで歩く腕と腕が接触する。


 周囲の人の流れが途切れた。

「さっきのは何!?あれは魔法じゃない。魔力を流しただけとも違う。どうやったの!?」

 勢いに押されて、こちらの上半身がのけ反る。

「あ、あれも科学の併用ですよ。身体の微細構造を知っていると回復魔法の効果が上がるのと同じで」


 アゼリーナさんが立ち止まり、ガシッとオレの腕をつかんだ。

「龍翼の微細構造っ!!」

「いえ、詳しいことは分かってないですよ」

「でも!さっきのは!?」


 ダメだ。ずっとスイッチが入りっぱなしだ。

 もう周囲に人がいるかどうかなんて見えてないだろ。

「落ち着きましょう。外であんまり常識外の話はしたくないので、続きは宿で」

「うう、分かったわ」


 並んで歩く彼女の頭の中では思考がぐるぐる回っている。

 何かを思いついたらしく、ばっとこっちを向いて声が出かかる。

「今はダメです」

「うぐっ、くっ」


 *


 その日、全ての用事を済ませて宿に戻ったら質問攻めにあった。

 時空系魔法を使うためのイメージを、物理学用語にSFネタを交えて説明した。

「すごい!その、わーぷ理論を理解すれば転移魔法も使えるわけね」

「いや〜、それは理解しなくてもいいかな。やっぱり、まず必要なのは適正で、あとはそれなりに正しいイメージさえ持てれば何とかなるはず」

「理論があるのならちゃんと理解すべき!そうでなければ応用できない」

「はい。その通りで」


 * 


 着いた。

「ここが皇国一の魔法店です。装備品から素材まで大抵の物はありますが、主に装備品の店です」

「え〜と、ペルクリウス魔法店ね」

 メティシアの店よりだいぶでかい。

 看板のとんがり帽子と杖をあしらった意匠がしゃれている。


 入ってすぐに店員がリゼットに気づいて出迎えてくれた。

 店内に他の客はいない。

 やはり超高級店は一人では入りづらい雰囲気だ。


「こんにちは」

「いらっしゃいませ、リーゼレッタ様」

「今日は新しいお客様を連れてきたわ」


 店員はプライドの高そうな若い男だ。

 やっぱり人を値踏みするように見るんだな。

 ここで普段通りは良くないだろう。意識して姿勢を正し、普段よりゆっくり堂々と動くよう気を付ける。特に早口はダメだ。

 イングリットとレオンが付き人の位置にいてくれるので恰好はついている。


「遠い田舎から出てきたんだ。とりあえず店内をじっくり見たい」

「はい。どうぞごゆっくり」


 まず、壁にかけられた長さ数メートルの木の棒が目に入った。

「何だこれ?」

「杖、よね?」


「正式名称は105型レギオン大魔導杖と言いまして、軍団の装備用に大型化した杖です。使用には3人以上を推奨、適正人数は6人です。優秀な魔導師を揃えればドラゴンでも狩れますよ」


 大砲か!

 数個の宝石とミスリル細工に加えて、縦に積層するような構造の珍しい魔法陣が刻まれている。発想だけならともかく、実現は相当に困難だったはずだ。


「全員が魔法を同時発動できないと威力が落ちるとか?」

「そんな面倒はございません。まず、全員が杖に魔力を流し込み、最後尾の者が通常通りに魔法を発動させるだけです」


「つまり、最後尾の魔法使いの腕前次第だと?」

「その通りです。もちろん、全員の慣れは必要ですが」

「宮廷魔導士とかが使ったら、とんでもない威力が出そうだな。まるで攻城兵器じゃないか」

「ええ、軍団の払い下げですから、その解釈で合っています」

「払い下げということは、もっと高性能な大杖が開発されたとか?」


「はい。現在、軍団の装備はより高性能な120型に更新中です。その開発は当店の店主である、大魔導師ペルクリウスによるものです」

 店員は誇らしげだ。


「この店は技術力も皇国一というわけか。ちなみに値段は?」

「368万ギウスとなります。払下げ品としては最新ですからね」

「あはは、それはお買い得だな?」

「厳しいですか。さらに一つ前の95型なら最近値下げしまして305万ギウスですが」


 安い方でも金貨3万枚超えだ。

 最近は金持ちになったつもりだったが、所詮は平民感覚だったか。

 自分で作るにしても、このクラスの魔木は入手困難だ。

 

 本当にドラゴン狩りに使えばすぐに元が取れそうではある。

 伯爵かギルド長が欲しがるか、後で聞いてみよう。


「この店なら軍団の最新装備と同じ物も手に入るのかな?」

「まさか。最新装備は払い下げられたりしません。ですが、個人用装備で高性能を求めるのなら、官給品より一品物の方が上ですよ。まあ、このような戦略兵器は払い下げでしか入手できませんが」 


 日本語のカタカナ発音で言ってみた。

「まさにドラゴンバスターだな」

「え?」


「『ドラゴンバスター』遠い国の言葉で、龍を(ほふ)る者という意味だよ。格好よく聞こえない?この大杖にぴったりの名前だと思うけど」


「どらごんばすたー...たしかに、いい響きですね。この名前を使っても?」

「どうぞご自由に。ただの言葉だし」

「ありがとうございます。もし店主も気に入れば使わせていただきます」


 他に面白い物はないかと店内を見回した。

「あ、これ」

 ブルグンドの防具屋で売っていた魔法の面と同じ物だ。

「ご存知ですか」

「発掘品だろ。値段は?」

「12000ギウスになります」


 金貨120枚とは都会価格だな。

 ブルグンドで買った方がだいぶ安い。


「布ごしだが、一度これをかぶったことがある。意識が、なんと言うか、石の感触だらけになってストーンバレットを撃たずにはいられない衝動に駆られたんだが」


「それはつまり、あなたが最も得意とする魔法が土属性ということですね」

「ああ、そっか。これが土属性特化というわけじゃなかったのか」


 オレにはどの属性が得意とかは無いと思っていた。納得できるようで、何か引っ掛かりが残る解釈だ。実際、オレと融合した精霊ーーエーテル化思念体ーーは無属性だし。


「エド君、それはお勧め、しない」

「ええ、視野狭窄と限界までの魔力枯渇でしょ」


「そこまでご理解なら、最後の追い込み用として問題なくご利用いただけるのでは?」

「常用すると魔力回復が遅くなる可能性がある。まだ推測でしかないけど」


 限界まで使うと、細胞内の魔力器官にダメージが残るかもしれない。地球人には無関係のはすだが、オレの場合は精霊の部分にダメージが入らないとは言い切れない。


「その根拠を伺っても?」

「聞いたことない?この仮面を魔法の練習に使っても一向に上達しないばかりか、魔力量も増えないと」

「それなら、初心者が横着して道具に頼った当然の結果では?」

「上達しないのはそうだけど、魔力量が増えないのはおかしいだろ」


「ほう、なぜそう考えた?」

「ん?」


 大魔法使いだ!

 長い白髭を蓄えた、イメージ通りの大魔法使いが立っていた。きっとこれが大魔導師ペルクリウスだ。

 なんかテンションが上がる。


「理由は、古代の文献に出てくる、エクトス・マギ・コンドロス」

「魔力の根源か。小僧がそれの意味を解明したとでも言うつもりか。推測に推測を重ねた仮説など無価値じゃぞ?」


「確かに、魔力の根源というだけでは曖昧すぎる。だが、もしその言葉の文字通りの意味が分かるとしたら?」


 口調が変わるのを抑えきれない。

 もう完全にフリントロックの気分だ。

 大魔導師相手に不遜な物言いと、偉そうな態度になったオレを店員が睨む。

 だが、ペルクリウス本人は面白そうにニヤリとした。


「続けるがいい」

「文字通りの意味は『外から魔力を取り込む微粒子』だ」

「そう解釈できる根拠は?」


「これは神代語だ。大魔導師ともなれば、俗に言う古代語が旧帝国語と神代語に分けられることは知っているはず」

「無論じゃ。そこまで言うお主は当然理解しておるのじゃろうな?」


 ギロリと睨む大魔導師の眼力がすごい。

 だが、今のオレはその程度では動じない。


 オレにも神代語は分からないが、旧帝国語なら完全な情報を持っている。その中には多くの神代語由来の語彙があり、それらを説明する辞書的な情報もある。


 頭に詰め込まれただけの情報から、大急ぎで説明に必要な分をまとめる。


 この大魔導師がちゃんと話についてくるのが楽しくて、つい得意満面で古代語の講義をしてしまった。ペルクリウスも途中からノリノリで的確な質問を挟んでくる。

 もうアゼリーナさんでさえついてこれないようだ。

 さっきはオレを睨んだ店員も今は間抜け面で見ている。


「ふむ、その『細胞』とやらの中に魔力を取り込む微粒子がある、ということか。たしかに、お主の言うことに破綻はないが、そんな神代の知識など確かめようがなかろう」


「間接的になら確認する方法が二つある。一つは、本当に仮面の使用者の魔力回復が遅くなっているか聞いてみればいい。ただ、この装備は珍しいので調査は面倒すぎるし、そこまで面白い研究テーマでもない」


「まあそうじゃな。じゃが、この店ならその程度、造作もない。ワシが調べてやろう。して、もう一つの方法は何じゃ?」


「好奇心は猫を殺す」

「何じゃそりゃ?」

「教会の教えを否定する話かもしれないぞ。いいのかご老体?」

「ふん、くだらんことを気にするな。じゃが、店先でする話でもないの。奥へ来い」


 研究室へ通された。

 最後に部屋へ入ろうとした店員は止められた。

「お前は店番をせんか。誰もこっちへ通すでないぞ」

「えっ、そっ..承知しました」

 一瞬不服そうな顔を見せて店番に戻って行った。


「では続きだ。もう一つの方法とは、簡単なことだ。細胞の存在を直接この目で確かめればいい」

「それが出来ると抜かすか?」

「これだ!」


 単眼式の顕微鏡を出した。

 アゼリーナさんへの説明でも使ったやつだ。


 それを見たペルクリウスが「?...」から数秒遅れて目を丸くする。

 身を乗り出し、角度を変えながら凝視している。

 何かすごい技術で作られた道具だとは分かるのだろう。


「何じゃこりゃ!?」

「クックック、そう慌てるな」


 手始めに適当な物を低倍率で見せて、これが拡大鏡であることを理解させた。そして、今見ているのはオレの口腔上皮細胞だ。


「ぬう...これが、お主の言う生物の正体か...」


 ペルクリウスは接眼レンズから目を離すと、躊躇なく短剣で自分の腕を切った。それを元にプレパラートを2つ作る。

 腕の傷は、魔法を使った様子がないのにす〜っと消えていく。


「これが..ワシの細胞か...」

「面白いだろ。血液も見てみるがいい」

 血液を挟んだプレパラートと交換してあげた。

「...やはり、ただの赤い水ではなかったか。して、この中のどれが魔力じゃ?」


 血液は錬金素材に使われるくらい魔力濃度が高いので、魔力が直接見えると思ったのだろう。


「魔力はいくら拡大しても見えない。形のある物質じゃないからな」

「それもそうじゃな。見えるようでは体外へ放出できんか」


「残念ながら、細胞内のどれがエクトス・マギ・コンドロスなのかは分からない。だが、それでも体内に目に見える大きさの魔法用の臓器が存在しなくてもいい説明にはなるし、文献の説明とも完全に一致する」


 本当はどれだか特定できている。

 地球人の細胞には存在しない細胞内小器官を見つけているが、全部教える気はない。


「小僧よ、名はなんという?」

「我が名は...」


 くっ、抑えろ。

 深呼吸して落ち着け。

 今日はもう存分にフリントロックしただろ。


 久しぶりに勝手に口が動いた。

 だが今回は半分自分の意思だ。

「オレの名はエドウィン。西の辺境から来た、しがない魔法使いだ。冒険者をやっている」


 思い出した。

 エドワード・フリントロックがお忍びで使っていた偽名だ。今まで無意識にエドワードとエドウィンを使い分けていたが、異世界に来て最初に名乗ったのはエドウィンの方だった。


「エドウィンよ、我が名はペルクリウス。この店の店主じゃ」

「おお、貴方がかの有名な」

 ここはわざとらしく感動しておこう。

 もうフリントロックモードは終わりだ。

 ほぼ普段のオレの気分に戻った。


「これほどの見識を持つ者がおったとは...どうじゃ、弟子にならんか?」

「残念ながら、すぐに辺境へ帰らねばならないのです」

「ただの店員ではなく、直弟子じゃぞ?」

「それでも無理です」

「若造のくせに偏屈じゃな。お主には大魔導師になる素質があるわい」


 弟子の件は案外すんなり諦めてくれたが、顕微鏡を買い取りたいとか、大杖と交換してもいいとか、こっちはしつこかった。

「ダメですよ。これが売れる物じゃないことは一目見て分かってるでしょ」

「ぬうう...ならば、ワシの杖と交換じゃ!」


 すごい杖が出てきた。

 国宝級、いやそれ以上か。

 おそらく発掘品で、世に知られている最高性能とされる杖を超える代物だ。

 アゼリーナさんまで目が釘付けになっている。


 正直、喉から手が出るほど欲しい。


「くっ、ダメだ」

 交換すればオレの丸儲けだ。

 だが、敵国一の頭脳に顕微鏡なんて渡せない。この大魔法使いなら簡単に生物学と魔法の応用を実現してしまうかもしれない。

 細胞を見せたのも間違いだったか?


「お主ならこの杖の価値は分かろう。これとて金では買えんぞ」

「くうう...それでも...ダメだっ」

 くそっ、くそっ。

 こんな顕微鏡、いくらでも買えるのに。


「ふう、若いくせに頑固じゃな。ワシもこの杖が惜しくないわけじゃない。今回は諦めるとするわ。そういえば買い物に来たんじゃったな。安くしてやるから、決まったら声をかけるがいい」


 店員に説明してもらいながら杖を選んだ。

 全属性の杖は威力が3倍くらいから急激に値段が上がる。3倍なら金貨150枚だが、4倍になると2500枚にもなり、上は青天井だ。値段が金貨1万枚を超えるくらいになると、神話から取ったようなかっこいい固有銘が付いている。安い杖は『火炎の杖』『豪炎の杖』みたいなシンプルで適当なシリーズ名になる。


 オレは全属性使えるとはいえ、やはり基本は極振りだ。迷いに迷って、金貨130枚の土属性用の杖を選んだ。もし金貨130枚を日本で売ったら、と考えるのはやめよう


 銘はゲアブレーゲ。

 あえて訳すなら「大地の衝撃」が近い。

 

 土杖:ゲアブレーゲ

 土属性:3.2倍

 その他:1.5倍

 収束効果:弱


 微妙に性能が違うゲアブレーゲが3本あった。その中でも土属性の倍率が一番高いのがこれだ。これ以上を求めるとコスパが悪くなるギリギリでもある。


 本当は火属性特化で爆裂したいが、土属性の方が使い所が多いだろう。

 デザインが派手じゃないところもいい。黄色い宝石と、その固定用に最低限のミスリル細工が付いている以外はシンプルな木の枝だ。


 魔法耐性があるマントを見せてもらった。

 これなら今持っているワイバーンと、メティシアの店で買った錬金素材でもっといいのを自作できる。

 ローブやとんがり帽子も見たが、やっぱりいらない。オレが普段、革鎧を着て帯剣しているのは魔法使いだとバレないためだ。生半可な魔法装備より、不意打ちで魔法を放つ方がよっぽど効果が高い。


 魔法防御用に使い捨てのスクロールを買うことにした。金貨1.5枚のやつを2枚。この前、雨の中で倒した馬鹿5人組の、弓使い2人が使っていたやつと同じ系統だが、これはもっと高性能だ。

 もう残金が少ないし、今回はこれだけでいいか。


「これくださ〜い」


「ふん、そんな物でいいなら、これと一緒に持って行け。金はいらん」

「えっ?」

「遠慮はいらん。お主がもたらした知識にはそれ以上の価値がある」

 ああ、やっぱり理解しちゃってるか。

 すでに何か思いついてるな。


 杖と仮面とスクロールをタダでもらった。その代わり、次に皇都に来た時には絶対に、絶対にこの店に立ち寄れとしつこく念を押された。


「もちろんここに直行しますよ。仮面の使用者についての調査結果も知りたいですし。それでですね、帰る前に大杖の試し撃ちをさてもらえませんかね?知り合いが欲しがるか聞いてみるので」

「良かろう。お主には、特別に最新型を試さてやる」

「いえ、店に出ているやつで。買えない物じゃ意味ないので」


 裏庭に出て杖の使い方を詳しく説明してもらった。

 普通なら空へウインドカッターでも放つところだが、それでは威力が分かりにくい。


 水平に撃つ許可をもらった。

「絶対に本気でやるなよ。壁を壊したら弁償じゃぞ」

「分かってますって」


 通常の3倍の魔力量でウィンドカッターを放つ。

 発動はアゼリーナさんで、オレは魔力量の調整だ。

「じゃ、始めます」

「了解」

「.2.1」

「ウィンドカッター!」


 ブオン!


 3本の丸太がスパンと切断され、後ろの石壁に傷跡が残った。

「あははは。威力が高すぎてこんな標的じゃ意味ないや。仕方ない、これを使おう」


 大岩を出した。

「む、そんな物まで入る収納か」

「この杖を使ったとしても、さすがにウィンドカッターじゃ大岩は切断できないでしょ?」

「まあ、そうじゃな」

 ウィンドカッターは、ある程度以上硬い物に対してはすごく効率が悪いのだ。


 魔力量を変えて岩に入る傷の深さを測定した。それと杖無しでの威力を比較した結果、この大杖の威力倍率は約7倍だった。魔力量による効率の変動はほぼ無い。

 性能は最初に聞いていたが、こいう大掛かりな装備は使い勝手が気になる。アゼリーナさんと役割を交代しながら実際に使ってみた感想は、実に完成度が高い、使い勝手のいい装備だ。


「どれ、ワシの魔法も見せてやろう。お主はそのまま杖を支えておれ。打ち砕け!ウィンドカッター!」


 ドバッ!


「「きゃっ!」」

「うわっ!」


 岩の厚み半分ほどが砕けてバラバラと飛び散った。


「見たか、ウィンドカッターでも岩は砕けるぞ」

「えぇぇ...魔力の無駄遣いだよ。それに風魔法で『打ち砕け』はないでしょ」

「かっかっかっ。魔法は気分が重要じゃ」


 新しい杖の性能は、この大杖の半分弱。だが、風で削るより石をぶつけて岩を砕く方がずっと簡単だ。残るMPは140。

 いける。


「...ゲアブレーゲも試してみるかな」

「お、やるのか?お主の力を見せてみよ」


 新品の杖を構えた。

「たぶん、破片が飛び散るから」


 必要なのは打撃力だ。

 硬さが同程度と思われる石対石で貫通力は無意味。

 過剰な収束はかけない。


「石弾!」


 バゴッ!!


 見えない速さで一発玉が飛び、ターゲットの岩ごと砕け散った。

「ほお、やるではないか」

「すごい」

「すごいです。エド様」


 一面に小石の雨が降っている。


「うわあああ、隣の家に当たってるよ」

「気にせんでいい。よくあることじゃ」

「いいんだ?」

「問題ない」

「...そっか」




 最後は肝が冷えたが、用事が済んだので店を出る。


「本当にいいのか?給料は弾むし、ワシの研究室も使わせてやるぞ」

「オレは戦う冒険者なので都会に住む気はないですよ」

「はん、若いのう」

「信じられません。ペルクリウス様の申し出を断るなんて」


 店員は好条件を断ったオレに怒り半分であきれている。

 どうやら、田舎者が大魔導師に気に入られて嫉妬しているらしい。


「時にお主、今さっきのストーンバレットに何倍の魔力を込めた?」

「20倍よりは多いくらい?」

「その程度の杖では、やりすぎると腕が吹き飛ぶぞ」

「それは分かってるけど、金貨130枚の杖だし、まだまだ余裕でしょ?」

「自在に魔力量を変えられる程の腕前なら、もっとマシな杖を使うものじゃ」

「そっか。でも、オレは当分これでいいよ」


 次は神殿へ行く。

 上空から見たら古代遺跡だったので、機能しているか確認しておきたい。他にも宮殿その他、遺跡を利用しているっぽい建築物はいくつかあったが、余所者でも入れる場所で一番面白そうなのが神殿だ。


《納屋67》

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