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54.魔導コンデンサを回収した

《納屋54》


 マリーが3番目の彼女になった。

 街が遺跡の上に作られていたことが分かり、地下遺跡の一か所を稼働させて強化甲冑を回収した。


 一通り試し終わって、今は甲冑と銃を使った戦術や、誰に使わせるかを議論している。


 事務職員。

「ギルド長、Cランク以下に使わせるのがいいのでは?さすがにBランクともなれば質のいい鎧を持ってますし、身体強化の補助も不要でしょう」


「そうだな。高価な装備を揃えられない冒険者に使わせるのがよかろう。あまり弱くては意味がないから、Dランク上位からCランクといったところか」


「高価と言えばこの甲冑なんて金貨1000枚どころの話じゃないですよ。もし無償支給なんてしたら、漏れた者からの不満に対処できません」


「タダでやるわけなかろう。貸すだけだ。その後は我々が...」

 その場の全員が思い出したようにオレを見た。

「ん?え~と、街の地下から出た物がどういう扱いになるのか、まずはギルド長の意見を聞きたいですね」


 ギルド長は困った顔で事務職員を見た。

 事務職氏は困った顔をしながらも答えてくれた。


「え~と、まず、冒険者が得た収穫は貢献度に応じた割合で分配するのが基本ですよね。我々は見ていただけですし、情報を提供したのも遺跡を開けたのもエドさんです。その一方で、あの場所は冒険者ギルドが管理する土地です。我々も土地所有者として、せめて3~4割の取り分は主張できるかと。強弁するなら5割も、いえ、そこまでは言いません」


「う、まあ、そんなところだろうな」

 分け前の少なさにギルド長は渋い顔だ。だが、冒険者ギルドの親分が冒険者の利益を守らないわけにはいかない。


 事務職氏が続ける。

「それも、ここまでで終わればの話です。まだ数か所あると思われる遺跡についてもエドさんの協力が必要です」


 ギルド長が『あ』という顔をした。

「え、エド君、こ、この街の存亡がかかった事態だし、その、なんだ、穏便にな。我々の仲だし、その」


「ご心配なく。お安く協力しますよ。とりあえず、今思いつく条件は2つ。もしオレの冒険者ランクの昇格が可能なったら、昇格するかどうかは任意で行使できる権利にしてください。分け前は、甲冑や武器その他、有用な物を現物で3割もらえればいいです」


 本当は銃を全部回収したい。


「たったそれだけでいいのか?」

「ええ、全ては戦争に勝てればの話ですし。何か思いついたら条件を追加するかもしれませんけど、戦争準備に差し障ることは言いませんよ」


 その日のうちに全ての遺跡を回り、強化甲冑37体、チャリ4体、カリバー1体を回収した。


 遺跡は街の東西南北と、中央の計5か所にあった。中央の遺跡は冒険者ギルドの土台になっていたので、今後は地下室として使えるよう建物が改装される。


 ギルドの営業時間が終わるのを待ち、数名の幹部職員に壺を見せた。彼らの驚きが収まらないうちに壺に押し込んで訓練場から飛び立つと、全員が面白い顔になった。

 ただ空を飛んでいるだけなのに、状況を理解できないようだ。


 魔導兵器の威力を見せるため、少し遠くまで飛んできた。

 訓練場では街の地下から出たチャリもカリバーも見せていない。


 まずはズドのエクスプロージョンばら撒き器から。


 キュドドドドド...ドーン!


 星空に5つの光点が3回連続で撃ち上がり、15連続で右から左へ流れるように空中爆発が起きた。


 唖然とする見物人を、連続する閃光と衝撃波が見舞う。

 爆発にだいぶ遅れて、遠雷のような反響音が返ってきた。


 十分安全を確保できる射程はあるので、説明無しでぶっ放した。

 空を飛んだ直後にこれだし、皆言葉もない。


 続けて主武装の重機関銃を見せる。

 手を上げるとアゼリーナさんが車のヘッドライトを点灯させ、草原の向こうにターゲットの木が浮かび上がった。

 射撃開始。


 ズドドドドド!


 バシバシ枝が吹き飛ばされて、大量の葉っぱごと落ちる。

 木の幹へ射撃を集中すると激しく木片が飛び散る。


 射撃をやめ、見物人の方を向くと背後から木が倒れる地響きがした。

 うん、最後はカッコつけた。


 驚きが収まるのを待ち、皆が十分落ち着いたところで試してもらった。

 今度は誰も強化甲冑の時ほど浮かれていない。本当に魔導兵器が戦争の切り札になると確信し、それを扱う真剣さが違う。ギルド長以外は手が震えている。

 そのギルド長もほとんど無言だ。


 *


「問題は魔力消費量です。この壺に完全に魔力を充填しきるまでにアゼリーナさんですら3回空っぽになった程です」


「分かった。Aランクの魔法使いを2人、Bランクを6人用意しよう」

「そんなんじゃ全く足りません。できればアゼリーナさんをあと10人連れてきてください」

「何を言っているのだ?」

「こういう兵器が他にもたくさんあるのに、動かせないと言ってるんです」


「なっ、こっ、こんな代物がか!?」

「ええ。もっと強力なのもありますよ」


 またショックがぶり返したようだ。

 口を半開きで固まるギルド長が落ち着くのを待った。


 帰り道に言われた。

「もう一生分を通り越して驚いたぞ。早死にしたらお前のせいだからな」

 他の職員達も(うなず)く。


 広く魔力を集める体制を作ってもらうことになり、翌日、ギルドの掲示板に常時依頼が一つ追加された。


 依頼者:冒険者ギルド

『人造魔石に魔力を充填するだけの簡単なお仕事です。

 余った魔力は寝る前にお金に換えてしまいましょう。

 買い取り量の上限無し』


 これは最重要案件なので、字を読めない冒険者も見逃さないよう、魔法使いが来たら必ずお勧めされる。


 ギルド長の部屋へ出向き、個人的にとても重要な条件を伝えた。

「協力するにあたり、絶対譲れない条件が一つあります。オレが提供する魔導兵器は戦後に全て回収します」


 チョビ髭オヤジがギロリと射殺すような眼力で睨み、うなるような声を出す。

「...あれを独占する気か、フリントロック」

 

 手の震えを隠してこちらも無言で睨み返す。


 彼らに選択肢はない。

 オレが納得する管理体制を作ってくれたら戦後も貸し出すつもりではいる。


「ギルドが入手した分も、飛び道具はギルド管理にすることをお勧めしますよ。それに、まだ他にも戦力を上げる道具を提供する予定なんですけどね。それは明日ザック達が説明します」


 その道具とは無線機と双眼鏡だ。


 *


 翌朝、まだ暗いうちにアゼリーナさんと2人で壺に乗った。


「メトラ、大容量の人造魔石が欲しいんだけど、どっかに転がってない?」

『ならばターリンス要塞へ行け。シーヨフからの応答が途絶えて1953年になる。抜き取っても構わんだろう』


 それは西の森の奥にある要塞で、管理人格はすでに死んでいるらしい。

「壊れた要塞か」

『応急修理はされた。2228年前に高空からの大質量貫通弾を食らってな、外壁の穴はふさがれたが重要設備が壊れたままだ』


 脳内マップを頼りに、まだ薄暗い森の上を飛んで要塞の真上まで来た。森を歩くなら、高ランク冒険者でなければたどり着けない場所だ。


「遺跡内ではチャリの俊敏性は必要ないでしょう。ここはズドとカリバーがいいと思います」

「そうね。賛成よ」


 たぶんオレの方がアゼリーナさんよりは身体能力が高いのでカリバーにした。彼女がズドを使うことになるが、重火力の中の人も大火力で火力に極振りだ。


 もしこれがMMOだったら実に正しい。

 極振りは正義だ。


 手早く済ませたいので、いちいち探索はせずに、魔力を通せる一番近い部屋を目指す。


 トゲトゲの不気味な生物が懐中電灯に照らし出された。

「大蜘蛛だ!」

「蜘蛛ガニよ」


 それは蜘蛛のような形だが、300~400Kgの重量がある陸ガニだった。ヤシガニに近い生物ではないかと思う。

 とんでもなく食いでがありそうだ。

 半分は殻の重量らしいが。


 ズドドドドド!

 ダンッダンッダンッダンッ!


 すごく硬いはずの蜘蛛ガニにも石の弾丸が楽々突き刺さる。足が粉砕され、甲羅が割れて肉がぐちゃぐちゃだ。


「あー、もったいない」

 一応、収納はする。


 進むにつれて蜘蛛ガニが増えてきた。

 粉砕された蜘蛛ガニを拾いながら進む。

「Bランクの、パーティでもここの探索は厳しいわね」


 途中の部屋にびっしりいた。

「うげ、気持ち悪い」

「美味しそうだわ。せっかくだからきれいに、確保できないかしら?」

「そういうことならまかせて!」


 部屋の入り口をアイテムボックスから出した四角い大石で塞いだ。

 隙間からアゼリーナさんがファイアーストームを放てば部屋が丸ごと石窯になる。

 廊下まで炎が噴き出してきた。

 魔導甲冑じゃなかったら大火傷だ。


 3発目で蓋をしてしばらく待つ。


「よし、中の反応は全部消えました。帰りがけに回収しましょう」

「ふふっ、火が通るのを待つのね。楽しみだわ」


 目的の部屋に到着し、魔力を通した。

『メトラ、ここからならヴァシュレール要塞へ魔力を送れるよね?』

『可能だ』

『これは衛星の軌道変更に使ってくれ』

 アゼリーナさんが大量の魔力を送ってくれた。


『これで加速度を上げられる。低軌道に2年留まれる魔力を残しても、軌道変更にかかる時間を157日に短縮できる』


『まだまだ足りないな。まあ、そっちはついでだ。どう、この要塞は動く?』

『主機関の再起動は無理だろうが、最深部への通路は開くぞ』

『やった!今から最深部へ向かう。扉はオレ達が通ったらその都度閉めてくれ』


 そこから先は敵に遭遇せずに進み、要塞の最深部に到達した。部屋の中央には天井を突き抜ける高さの、石のような材質で巨大な多重構造の円筒があった。それを精密で複雑な幾何学模様のパターンが覆っている。

 まるで立体魔法陣だ。


「ここまで、来た者は誰もいないはずよ」

「これ、神代のエーテル機関ですよ」

「本当にあったのね。一目見ただけですごい物だと分かるわ」

「でもこれは動きません。ここの精霊は死んでいて、要塞中枢の制御装置も壊れているそうです」


 エーテル機関の周囲に配置された補器類から6個の人造魔石を抜き取った。それは高さがオレの肩まである、ドラム缶のような円筒形カートリッジだ。重量は、高級乗用車くらいありそうだ。


 これを使って王国の首都と主要都市でも魔力を集める。敵が攻めてくる前に十分な弾薬(魔力)を備蓄できるだろう。


 帰りがけに火が通って赤くなった蜘蛛ガニ17匹を回収した。

 このでかさじゃ、まだ生焼けだろう。


 ターリンス要塞を後にした。

「ねえ、メトラ。どうやって衛星へ魔力を送ってるんだ?」

『一度エーテル波に変換している』

「損失が大きかったりする?」

『最終的な効率は93%だ』

「そりゃすごいや。さすが魔法技術だ」


 ***


 -皇国東部-


 ブルグンドから遥か東にあるこの場所にはすでに朝日が射していた。

 遺跡の発掘現場には皇国中からかき集めた大量の魔石が運び込まれている。


「よし、これで一回反応を見る」

「試すだけでそんなに使う気ですか!?それが金貨何百枚分か理解していますよね?これで上手く行かなかったら間違いなく首が飛びますからね。あなたも、私も!」


「あっはっは。まだまだ時間がかかるんだから気楽にやりましょーや」


《納屋54》

円筒形魔石カートリッジ=魔導コンデンサ

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