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風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
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九話 飯田の幹部会

あの交戦から3時間が過ぎた。


風魔連合共和国の首都魔京には60メートルぐらいの小高い丘がある。その丘の頂上に飯田家の四階建ての拠点があり、その丘を中心として、部下の家々が建ち並ぶ。


春風時成に敗れた羽村は今、拠点の二階にある寝室に連れ戻されていた。


「気がついたか。お前の部下から、話は聞かせてもらった。相手を侮って油断したらしいな。まぁ、命令した俺の責任でもある。すまなかった」


気がついた羽村に謝ったのは左出田(さでだ)だった。


羽村より背が大きい左出田は、長袖でも分かる位体格が良かった。天然パーマなのか髪は少し丸く巻いており、顔は濃い眉毛に少し白髪が混じった無精髭がよく似合っている。目は細目だ。


「結果をだせず、申し訳ございませんでした」


寝ていた羽村は体を起こして、左出田に向かって頭を大きく下げた。


「いや、そんなに謝らなくてもいいぞ。正則さんは、『辻斬り』と接触したことで今回の事は無しにすると言っていたからな」


左出田は細い目をさらに細めて口を開いて笑う。


「まぁゆっくり休めや。元気にならなきゃ次の話も出来ねぇしな」


そう言って頷いてから左出田は出ていった。


何故辻斬りと接触しただけで、正則さんが自分のミスを許したのか、羽村にはその理由が分からなかった。


飯田の拠点の三階の4分の3を占めるのは会議室である。その数は大、中、小の3つがあり、小会議室では今、大至急で幹部会が開かれていた。


丸い机に椅子が5つあり、左出田が座る時にはもう残りの椅子に、先に来ていた他の人が座っていた。


「ついに『辻斬り』とうちの連中が接触したそうだ」


口を開いたのは飯田家当主の正則だった。正則は当主の座を受け継いで10年が経過したが、まだまだ現役で活躍している。


「10年振りに、表舞台に帰ってきたか、辻斬り。10年前に斬られた胸の傷があいつの名前を聞くだけで疼くぜ」


そう言って机を両手でバンと叩いた。その人物の名前は右原川狂郞(うばらがわきょうろう)だ。


狂郞は、「飯田家の中で誰が一番武闘派ですか」と風魔連合共和国に住んでいる人に聞くと、誰もが最初にその名を口にする好戦的な人物だ。


「待てや(きょう)。お前が言いたいことは分かる。だが俺が知りたいのは理由だ。予測でも構わん。(せつ)、今回の報告を聞いてどのように感じたんだ」


正則に注意された右原川は、静かに黙り、今度は左出田が口を開く。左出田雪間(せつま)と右原川狂郞は、飯田正則の父親に拾われた、幼なじみでもあった。


()の頼みで南雲弥生を拘束する任務を羽村と約10名に依頼しました。羽村が言うには、強襲した時に一緒に居た緑の目をした人物が羽村達の邪魔して、そいつに止めを刺そうとした時に、辻斬りが出てきたそうです」


左出田は、事実を少しねじ曲げて正則に、報告する。


「緑の目……『グリーンアイ』っか」


自然と言葉を口にした飯田正則の言葉は、これからの時成の通り名になるとは、この時はまだ誰も知らなかった。


「僕の考えは、そのグリーンアイと冷眼の娘との両方に辻斬りが関係しているからこそ、助けに来たのではないかと推測しました」


「グリーンアイってやつと冷眼の娘の両方に関係があるっか。良い推測じゃねぇか、雪間。分かった。今から俺の部下を動かしてみる」


そう言ったのは、今まで黙っていた上野虹目(かみのにじめ)だった。


「グリーンアイの情報が虹の所に来るまでは、しばらく風に干渉するなよ。黒の殺し屋(ブラックキラー)が出てきて返り討ちにあっても知らないからな。分かったか」


飯田正則は他の4人に念を押した。


「はっ」


正則以外の4人は頭を軽く下げて返事をした。




次回『風の想い人』十話は、4月16日に投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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