八十九話 氷の武器職人VS浮雲
3日連続投稿1日目です。
飯田拠点の一階エントランスホールでは『浮雲』東堂たくと飯田幹部の一人である『氷の武器職人』左出田雪間との一騎討ちが行われていた。
「行かせてしまって良かったのか?」
すでに多くの暗部は通り抜けるときに何もしなかった左出田を横目に上の階に進んでいた。
「まぁ止めるのは何も俺だけではないからな。それにこの状態の浮雲なら戦えると思ってな」
その答えを聞いてたくは黒い仮面の下でニヤリと笑い右のポケットに手を突っ込んで昨日支給された魔道具を持っているかを確認する。
「俺がなぜ浮雲と呼ばれているか知っているだろう」
「ええ。勿論ですがその情報は今は関係がないな」
左出田はニヤリと笑った。それはたくの能力が最大限に発揮されることがこの状況ではないことを知っていたからだった。
それよりもなぜ、たくが『浮雲』と呼ばれている理由のうちの一つに彼は若い頃にサワバ・マジック帝国の風の民自治区側にある帝国貴族が管理していた砦の中の一つを一人で壊滅させて帰ってきたことがあげられる。そしてこの事件をきっかけにたくは『浮雲』として最初は帝国内だけだったが、いつしか世間に異名が轟いていた。
たくは自分の100センチぐらいある刀を抜刀する。二人は間合いを詰めてぶつかり合う。だがたくは氷の武器ごとたたき割ろうと二撃目を強くぶつけた。それを読んで左出田は体を右に流すとそのまま魔法陣を展開して武器をたくに投げた。
「やっぱり力には力をぶつけるのが一番だよな」
たくは投げてきた氷の武器を避ける間に左出田は自分の身長ぐらいある長い薙刀を創造していた。
「ふ……俺と力技で勝負しようっていうのかよ」
たくは軽く笑うと自分の能力を使い始めた。たくの能力は、特殊で一人でいるときに身体能力が急上昇するといった能力だった。具体的には自分が味方だと無意識に思っている人の最短距離が100メートル以上離れていれば、最大限に発揮させれる。だが60メートル付近で天将が戦っており、また二階にいるソーキとは僅か30メートルしか離れておらず能力を最大限に活用できないが全力の時成の1.2倍位はこの状態で出すことは出来る。
たくはそう言うと左出田を右肩から下にかけて振り下ろしたそれと同時に左出田は常時魔法陣を展開し続けて強度を保ちながら全力を込めて右から左へ振る途中で薙刀と長刀がぶつかり合った。だが少しずつたくが力技で氷の薙刀を斬っていく。だが強度を保とうとしていた氷の魔法が長刀を侵食し始め凍らせていた。
二人の意地のぶつかり合いはブシュッと斬られる音が聞こえると同時に終わった。氷の薙刀は刀身部分が真っ二つに切断され自身の肩から背中にかけてたくに大きく斬られてその出血で意識が朦朧とし始めた。だが左出田は朦朧とする意識の中で倒れながら、地面に魔法陣を展開すると地面に刺さっていた先ほどの武器から強い冷気と共に床が凍り始めた。それを即座に感じたたくは左出田の赤い返り血を浴びた黒い服のポケットの中に黒い帯状の円いロープをたくは逃さず左出田に投げつけた。
その黒いロープは魔道具開発者沙羅の新作で左出田に当たった瞬間そのロープは左出田を捕縛して気絶させた。左出田が気絶する少し前に左出田は呟いていた。
「申し訳ございません。正則様俺は貴方の期待に応えられませんでした」
そう言って左出田はたくに気絶させられた。自分の戦闘が終わったたくはこちらに歩いてきている天将を見てそう言ったが聞こえてはいなかった。
「はぁ。疲れたは貴方は俺が戦ったここ最近の中で一番強かった」
たくは自分の長刀を納刀するとその刀を杖替わりにして壁を背にもたれかかった。
戦いが始まる前から空には大きな雲が漂っており登り始めていた月を隠していたが、その月が見え始めていた。時刻は6時35分を過ぎていた。
次回『風の想い人』九十話は11月2日に投稿する予定です。
次回もよろしくお願いします。




