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風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
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八話 回復能力の使い手

「時成のやつ、大丈夫なのか」


時成はいまだしゃがみこんだままだった。


「まぁ何とかな。親父」


時成はそう言って返事をするが、歩ける体力など零に等しかった。


「はいはい。私に傷口見せてね」


弥生は、時成の傷に手を向けて、手に力を籠める。すると、指先に丸い形をした直径5センチぐらいの光の粒が合計10個集まってくる。そしてその光の粒は、10秒ぐらいかかってから手のひら全体に集束する。


回復能力(ヒーリング)


弥生の手に集まっていた光は、時成の体の傷に向かって飛んでいき、傷に吸収されて傷が治っていく。


だが太陽は、見ているだけでそれを判断することは出来なかった。何故なら、時成の服が赤い血で染め上がっていて、傷口がよく見えなかったからだ。それでもその効果が凄いことだけは、昔から知っていた。


「やっぱり似ているな、あいつに」


太陽はそう呟いたが、弥生には聞こえていたらしく弥生と不意に目があっていた。


「いいや、なんでもない」


太陽は歩いてくる人達を見ながら弥生に首をふる。歩いてくる人達とは、太陽以外に観ていた三人のことを指す。


「久しぶりだね、時成君」


近づいてきた天将は時成の体を見る。さっきまでぼろぼろだった体は、弥生の能力で傷だけは治っていた。


あれから……強くなろうとしているんだな


天将は時成に向かって笑顔になった。


「ありがとう」


今度は真剣な表情でたった一言、感謝の言葉を述べた。


その後は何事もなく中央支部に帰ることが出来た。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


時間はちょうど同時刻。


風の民の本部には、龍我透(りゅうがとおる)と腹心の部下のテツが話をしていた。その時にザーと居間のドアが開いた。


「ここに居ましたか、隊長」


入ってきた男は二人に一礼してから話し始めた。


「報告します。春風時成と南雲弥生が飯田家の副幹部の羽村風立(はねむらかざたつ)率いる魔法戦闘員合計10名と交戦中です」


「おい、それでどうなったん。良正(よしさだ)


隊長と呼ばれた人物の名前はテツだ。テツは少し声を上げて、良正と呼ばれた人物に報告の続きを催促させる。


「予想外の出来事でしたので師……副隊長の判断で僕をこちらに、時成さんと弥生さんのほうには、春風さんと南雲さんで対応するように指示されてました」


「分かった。お疲れ様。どうせ君の事だから自分の目で見たことしか報告してないだろうからな」


テツは、良正に下がって良いぞと頷いてから透に向かって今後の方針を言い始める。


「私めも、良正と一緒に中央支部に帰ります。今回の不祥事の詳細と敵の思惑まで調べるつもりです」


「任せた。こちらも何かあればすぐにでも対応させるとしよう」


透は頷いてからそう話した。


「風の時間は再び動き始めるのかのぉ」


テツも良正も居なくなった部屋で透は、どこか寂しげに、どこか嬉しげにそう呟いた。

次回『風の想い人』九話は4月9日、投稿予定です。

よろしくお願いします 。

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