七十九話 崩壊の始まり
遅くなり申し訳ございません。
太陽が亮二と会っている頃。風魔連合共和国の首都の魔京の飯田の拠点では療養生活から帰ってきた飯田正則と腹心の新中黒尾と一番小さい会議室で会話をしていた。
「怪我はもういいんですか正則さん?」
「大丈夫らしい。それにしても憎たらしいなあの小僧は。何個か深い傷があって治すために何針か縫ったんだとよ」
「あなたが斬られるほどの剣士ですか。相当強いみたいですね」
新中は普段はあまり話さずに話を聞いているが途端に戦闘の話になると口数は多くなる。だが戦闘狂と呼ばれる右原川狂朗よりかはあまり戦闘には興味がない。新中は都市国家アクアストームとアイスジーナ王国の二つの国境の守備及び警邏の役割を担っている。実力では虹目とためを張る飯田家のナンバー3だ。
「あいつは恐らく黒の殺し屋の誰かの弟子だな。戦い方が辻斬りとか浮雲とかに似ていたからそこら辺のな」
「次は俺が行こうか?正則さん」
新中が動けば様々な状況に陥る可能性はあるが成功する確率は前回よりも確実に上がることは間違いはなかった。正則は少し考えた後、首を縦に振った。
「よろしく頼む。ああ、それと虹の奴も連れて行け。狙いは引き続き冷眼の娘の生け捕りだぞ。黒の殺し屋をここに呼び寄せる」
「了解しました」
新中は軽く頭を下げて出ていった。
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次の日、風の民の中央支部の執務室ではテツが影道からの報告を受けていた。
「支部長の二人は今日の深夜に到着する予定と連絡がありました。これを機に勝手にしましたが天将とたくはこちらに帰ってきてもらうように手配しました」
影道は執務室の椅子の後ろに立ってテツに報告する。
「飯田関連の情報は何かあるか?」
後ろを見ても影道がいると思われる場所にはテツの目からは見えないのだが声だけは聞こえてくる。
「中呂村の国境で小競り合いがまた起こりましたが膠着状態のまま、飯田側が撤退しました。また内通者によると『反撃の黒尾』が不審な動きをしているとの情報も」
「これで今年に入って小競り合いは4回目か。『反撃』の方は詳しく判るか?」
散らばっている机の上でテツは影道が持ってきた情報を軽くメモを取りながら、感想と疑問を質問する。
「私個人の見解はおそらく全線に来るのではないかと思ってます。それとソーキから子供たちが通っている中学院がある見ノ木村にも100人前後の軍が滞在していると報告がありました」
「姐さんって今どこにいる?」
「ソーキの近くにいるはずですから水無村の何処かにはいると思います」
「急な転移魔法陣の対応要請があるかもしれないから、魔力の管理に気をつけて欲しいと伝えてもらいたい。伝令の人はそのままソーキの補佐の方もよろしく頼むと伝えてくれ」
「了解しました」
テツは軽く息を吐いてから決意を固めてから、消えている影道に目を向けて話し始めた。
「影。分かっているかもしれないが長老様の予知は絶対に外れない。飯田との戦争は必ず起こる。飯田家の崩壊をその時に狙う。狙うからこそ一撃で立て直し不可能な被害を与えようと考えている。全部の手配の方をよろしく頼む」
「それにしても動き出したのか、動くしか選択肢がなかったのか。確か『反撃』って?太陽が唯一殺し損ねた、元風雲家の譜代家臣の一族の跡取り息子だよな」
思い出したかのように影道は両手を軽く叩いてそう言った。テツは目を瞑り、頭をゆっくりと下げて頷いた。
次回『風の想い人』八十話は9月2日に投稿する予定です。
次回もよろしくお願いします。




