七十三話 虹目の撤退の心得
遅くなり申し訳ございません。
「まさかあの蒼い炎を相殺させるとは流石黒の殺し屋と呼ばれるだけはありますね。だけど無傷とはいきませんでした……か」
予想と反することが目の前で起こった虹目はとても驚いていた。虹目の予想と違った原因は水蒸気爆発に巻き込まれたソーキは、上の服はボロボロだったが体には傷一つついてなかった。それは弥生も同じだった。勿論、弥生が爆発したときの煙がたちこめたときに能力を使い怪我を治していた。
「まぁな。だがいいのかここまで派手に暴れたら両軍駆けつけてくる。その展開は避けたいんじゃないか?」
ソーキはそんなことはないと知りながら虹目に声をかけて牽制した。だが返ってきた言葉は想定した返答と異なっていた。
「分かっていたことですが、やはり黒の殺し屋は化け物ですね。それにしても面白い。暗部それも黒の殺し屋が出てくるということは冷眼の娘がそれほど大事に見えてしまいます。やはり彼女は私たちが知らない何かを持っていそうですね」
ニヤッと笑う虹目の顔は悪いことを企んでいる顔だったが、すぐに上がっていた右の口角が震えだす。そして素早い決断をする。
「帰りますよ。裏工作はもっと慎重かつ大胆に動かなければいけません。向こうが一枚上手でした。失敗です」
「虹目さん。帰るのですか?今こそ攻勢に出るべきだと思います」
一人の軍人が自分の案が通ると思い魔法陣を手のひらで起動させる。だが虹目はそいつに向けて鋭い目で睨んでこう言った。
「死にたいのなら攻撃すればいいでしょう。ですが化け物を数人、一人でしばけますか?」
その言葉を言われた瞬間一人の軍人は虹目の言ったことを否定するかのように魔法陣を起動するのを止めた。そのときだった。ソーキの背後には青黒い転移魔法陣が展開される。その魔法陣に立っていたのは虹目に化け物と呼ばれたテツと沙羅だった。
「ほら言っていたら来ましたよ『鉄人』と『氷結の姫』がお怒りになってね」
虹目が連れてきていた軍人は虹目が数秒前に言っていたことが起こり、とても驚いて二人を凝視していた。だが虹目は来ることも想定していたのかすでに手のひらに魔法陣を起動していた。
「それでは私たちはこれで。私たちは援軍にきた化け物の狩りをしろと言う命令は出ていませんので」
右手を顔付近にあげてから心臓まで手を下げて右足を引いてお辞儀をする。その瞬間そこにいた飯田軍は姿を消していた。
「ここに弥生ちゃんがいるということは飯田正則は時成が相手しているのだな」
四人はすでに嫌な予感と殺気の漏れが強くなった方角を見る。そして弥生が力強く頷いたことで予感が決定的な確信へと変わった。
「時成が暴走していると思います。多分ですけど私が悲鳴を上げた瞬間から殺気が強くなったのでもう限界のはずです」
「弥生が言うのなら絶対だな」
テツは両手で握り拳を作る。暗部の中で一番時成のことに詳しいのは弥生だった。そんな弥生が時成の暴走の限界が近づいていると言うのならのならそれは間違いがなかった。
それを聞いた瞬間、沙羅は黙って青黒い転移魔法陣を地面に展開し始める。そして展開が終わり不安になっていた弥生に声をかけた。
「もうすぐみんなが来るので少し待っててね。彼は絶対に死なせないから」
そう言ってテツとソーキと沙羅は青黒い転移魔法陣の中へ消えていった。
次回『風の想い人』七十四話は7月15日に投稿する予定です。
次回もよろしくお願いします。




