六十九話 太陽の隠し技と接触
遅くなり申し訳ございません。
「でも本当に強くなったな。太陽に隠し技まで使わせたのだからな」
模擬戦が終わった後テツは時成の近くに歩きよってそう言った。
「隠し技ですか?」
時成は頭にはてなマークを浮かべ立ち上がる。だがよく思い出してみると戦闘中に確かに違和感があった。例えば斬撃が最初から来る方向が分かっているみたいに行動していたり的確に木刀を当てて返したり、フェイントが通用しなかったりと様々だが。
「風の感覚。俺達は太陽のこの技をそう呼んでいる。特にこの技はピンチの時に効果範囲を広げる癖があるんだ。大丈夫強くなってるよ確実に」
「ありがとうございます」
「全ての元凶を倒すためには力をつけないとね」
二人はゆっくりと歩き出した。近くでは賭け事で盛り上がった暗部たちにテツは一括する。
「負けたものは約束通り食事を準備しろー。無礼講だ。好きにしろ」
この一言で中央支部では宴会が開かれた。暗部にとって未来を分ける1年がこうして楽しく始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
月日は流れ1月25日、南雲弥生はその日は珍しく一人で見ノ木村にある中学院から中呂村にある家に帰っていた。その帰り道に正体不明の人物に自分の背後に立たれて身動きが取れなかった。
「君が冷眼の娘だな」
弥生の背後から聞きなれない声が聞こえてくる。弥生は鳥肌が立つ。自分の背後に立つ人は間違いがなく強者と呼ばれる人で敵に違いはなかった。
「だとしたら貴方はどうしますか。ここは風の民自治区との境。私に何かすれば外交問題にでもなりますよ」
この脅し通用しないことも弥生は知っている。相手は飯田家の幹部以上と分かっていた。その時、左の首筋に銀色の刀身をした刀を真っすぐにして当ててくる。
「もう外交問題になっているからたいしたことはないかなぁ」
余裕綽々の言葉に弥生は少し嫌な予感がする。今自分の背後に居るのは幹部ではなく本人だと思った。そして嫌な予感ほどよく当たることを知っていた。
「いいの?私を殺せば出てくるのは怒り狂った黒の殺し屋かもしれないのよ」
その言葉を言った瞬間、弥生は強く地面を蹴り背後にいた人物から距離を開ける。弥生の予想は的中していた。自分を襲おうとした人物は飯田正則だった。そしていつの間にか隣に緑の目になっていた時成がいた。
次回『風の想い人』七十話は作者の都合により6月12日の土曜日に投稿する予定です。
投稿する日付が少し違いますが次回もよろしくお願いします。




