六十二話 冷眼vs戦闘狂 2
遅くなり申し訳ございません。
真っ白な白銀の世界の光景の中心では紗奈香は魔力が急激に減ったために体がいうことを聞かずに倒れていた。今の紗奈香のこの状態は時成の暴走した後の光景に類似していた。
「ごめん。体動かなくなっちゃた。どうやら今はここが限界みたい」
話す元気はあるのか紗奈香は口をひらく。
「欲を言えば走れるくらいの魔力は残しておきたかった」
「毎日必死になって魔法陣を作っては壊すことを繰り返し努力していたことを。その努力で少しずつ伸ばしていた魔力の今の限界値はここみたいだな。ありがとう」
時成は無言で動けない紗奈香を背中にのせてレストム要塞に戻っていった。
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紗奈香が銀世界を使用する少し前、狂朗と交戦していた天将は狂朗の魔法を体に受けて軽く火傷していた。だが狂朗は天将に複数回斬られて赤い血が多く流れていた。
「時間だ」
天将がボソッとそう言った瞬間、自分が立っていたすぐ背後まで氷が迫り狂朗の足元は凍っていた。
「終わりだ」
天将は二本の刀を狂朗に振りかざして下ろした。だがそこには狂朗は居なく変わりに黒い魔法陣ができていた。
「全く油断しすぎですよ貴方は。勝負に水を差すのは好きではありませんが状況が状況です。今回はここまででいいでしょう。ここに居ても魔力を感じましたよ。フフ」
黒い魔法陣から虹目の声が聞こえてくる。だが姿は見えていなかった。
「そこにいるのかよ」
天将は右持っていた刀を黒い魔法陣に向けて刀を横に振る。振り斬った場所には何も残って居なかった。そして飯田軍は蓋突及び妖心村へ撤退した。
飯田軍はこの日、魔法『銀世界』を受け前線は崩壊した。それと同時に風の民はレストム要塞の死守に成功した。
次回『風の想い人』六十三話は4月29日に投稿する予定です。次回からは戦争後の話になります。
次回もよろしくお願いします。




