四十一話 突然の刺客
遅くなってすみません。
四国不可侵連合会議から約三ヶ月経った9月10日。
ここは旧風の民と妖魔共和国との国境の風の民側約3キロ入った場所。時成と弥生が中学院から中央支部への帰宅途中に、とある男が軍隊を率いて行軍しているのを発見していた。
「何でここに右原川狂郎が居るんだ」
「知らないわよ。知りたいんだったら時成が直接本人に聞いたらどうなの」
二人は偶然、道の交差点にあった物陰に隠れながらヒソヒソと会話をしていた。今の二人の顔を第三者が見たら、誰が見ても動揺していると言うだろう。それくらい二人は焦っていた。
「報告は無かったのかな。国境付近にはこっちの軍だっていたはずなんだけど」
弥生は疑問に感じていた。旧国境付近にも30年位前から飯田の動きをいち早く察知するために、風の民の軍と暗部が合同で監視をしていたはずだった。
「暗部の報告が中央支部に行くはずだけどここに誰も来ていない」
二人は小声で話しているはずなのに、
「おい物陰に誰かいるぞ」
二人の耳に飯田家の軍人の一人が、そう言っているのが聞こえてくる。
「ばれたみたいね、時成」
「後には引けないぞ、弥生」
その言葉だけで二人は、お互いの次の行動が分かってしまった。だから二人はそう言い合って見詰めた後、同じタイミングで物陰から全力で走って離れていく。
「居たぞー冷眼の娘だー捉えろー」
狂郎は大きな声をだし、部下に指示をする。その指示に従って一人の軍人は二人が走る先に丸い炎魔法を魔法陣を展開せずに、放った。
その魔法に気がついた二人は走るのを止めて立ち止まり狂郎の方へ振り返った。背後からはゴォーと言う音と共に、その魔法は着弾して辺りに生えていた木に燃え移り、白い煙が空へモクモクと上がった。
「良い魔法使いを揃えていらっしゃる。戦闘狂の狂郎さん」
時成は能力を使用して代償に自分の黒目が緑色に変色した後に狂郎に声をかけた。顎を引き、右の広角を上げて不適な笑みを浮かべる。
「冷眼の娘の側にまさか、グリーンアイが居たとはな」
その顔と姿に少しだけ、左出田がグリーンアイに負けた理由が分かった気がした。
「左出田に勝ったんだってなグリーンアイ。その実力、俺に見せてもらおうか」
狂郎は両手に魔法陣を起動する。その隙をついて時成は口を結んでから攻勢に打ってでた。右肩にまで木刀を持ち上げて走りだす。そして狂郎の近くまで突っ込んだ後木刀を振り下ろした。
パカーンと言う音が響くと同時に一人の軍人が薙刀で時成の攻撃を止めていた。
その瞬間に、違う軍人が今度は水魔法の水滴を尖らせて時成に向かって発射する。その魔法は時成に当たる前に木刀を当て、燃えてる木の向かって弾いた。
やっぱり人が多ければ多いほど考えることが増えるな
鋭い水魔法は一回では終わらない。何故なら魔法が使える軍人の殆どがこの魔法を使って時成に攻撃を加えていた。
遅くなったが、旧風の民の国境付近の場所を整理すると、空き家や、風の民軍、民間人が住んでいる集落になっていた。そして大通りが一本あり風の民の本部に繋がっている。
今回の交戦ポイントはこの大通りだった。だが今は何故か時成と弥生と飯田の軍人しか居なかった。
数多くの水魔法を弾くか避けていた時成は少し狂郎の方へ意識を向けてみた。その時に狂郎の真剣な顔が一瞬だけ笑みへと変わったのを見逃さなかった。
直径5メートルの炎の魔法が狂郎の魔法陣から展開されていく。近くにいた弥生が目を丸くして狂郎を見ながら指を指した。
「やばくないあれ」
何人かの軍人を相手にしていた弥生は時成の近くに寄っていた。軍人達も狂郎の近くに寄らず離れていく。
「不味いな。前に見たやつとは規模もそうだが中身が違うよな」
前に見たやつとは久しぶりに会った時に羽村と戦った時にいた部下使っていた魔法を思い出す。その時も直径5メートルだったが色は赤だったと時成は記憶している。
「炎の色って青だっけ」
自分の常識を疑うように時成に質問する。
「高温になったら青になるみたい」
時成は知っている知識を使って弥生に教えるが初めて見た青の炎に驚きを隠せてはいなかったが弥生も同じ見たいだった。
魔法が使えない時成でも目の前にある魔法の凄さは分かっているつもりだった。だからこそ称賛に値する魔法を自分達に向かって使用してくれることに感謝をして不適な笑みで笑った。
「俺を信じられるか、弥生」
「うん」
弥生は時成の質問に即答した。その反応を聞いて時成は覚悟を決めて木刀を握ってからこう言った。
「あれを斬る」
と。
次回『風の想い人』四十二話は11月23日に投稿する予定です。
よろしくお願いします。




