四十話 報告
昨日、投稿する予定の話でした。
昨日に完成していなく、投稿が出来ませんでした。すみません。
四国不可侵条約会議が終了してから三時間後。風魔連合共和国の首都、魔京にいた太陽と天将は中央支部にまで戻って来ていた。
ここは執務室。今は山積みになった書類がある机の前の椅子に座っているテツと客人用の椅子に座っている太陽、天将がいた。
「時成の異名が各国の上層部に届いた。1月にある次の会議までに俺達に飯田軍が派遣される」
太陽は頭を抱え込みながらテツにそう言った。
「時成の方は想定より5年ぐらい速いな。ちょっと待て待て待て。何て、今言った。12月ぐらいに軍隊が来るってどう言うことだ」
前者の時成の異名のことは予め知っていたテツ。その事に対しては感想しか言わなかったが、後者はどうやら情報が入っておらず知らなかったみたいだ。
「バロ・ジアスが言っていた。次の会議までに飯田が結果を残せなかった場合、風に帝国ダークブラッドが攻めるってな」
太陽ははぁーとため息をつきながらそう話す。
「どうしますかテツさん」
天将は静かにテツに対応を促した。
「軍隊の件は探りを入れる。だが時成は……」
テツは考え込んだ。
あいつは若い時の太陽と一緒だ。使うなと言っても大事なものの為には言いつけなど無視するだろう。その証拠は前回の暴走だ
テツもはぁーとため息をついた。
「天将。悪いが時成を連れてきてくれ」
「顔が優れませんね」
天将はフッと笑った。テツは置き場の少ない机に肘を置き頭を抱え込む。
「まったく誰に似たんだか」
この場所にいる人達しか知らない会話をしながらテツは小言を言っていた。
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先ほどの会話から少し後
「すまんな時成」
テツは半分諦めた顔をしていた
「呼びつけたと思ったら急に謝って、どうしましたか」
何も解らない時成は考え込んでいるテツを見ていた。その近くの椅子にはその理由を知っている太陽と天将は険しい表情をして口を結んでいる。
その様子を見て時成は深刻な話をするんだろうと予測した。だが太陽と天将は笑っているのを我慢していただけだった。
「外で緊急の時以外、能力を使わないでくれ」
時成は表情とは違ってテツが簡単なことを言ったので驚いて目を丸くしていた。
「たったそれだけですか」
何も知らない時成はその言葉通りの意味だと思って少し間が空いたが頷いた。
「グリーンアイ。それがお前の異名だ。飯田や各国は真剣にお前の素性を探ってくる。だから出来るだけ使うな」
ビックリするのはやっぱり時成。その反応を楽しみにしていた太陽と天将はニヤッと口元を上げる。
「えっ。何で俺に異名があるのですか。俺は唯、左出田って言う奴を倒しただけですよ」
「それが問題なんだよ」
「フハハハ」
漫才みたいな一連の会話を聞いた太陽と天将は同時に笑いだした。だがテツはそんな二人を睨み、睨まれた二人は口を押さえた。
「左出田は飯田の幹部。その幹部が異名が無い人物に倒されたとなれば飯田は警戒してその特徴を異名にする。特に風の民の関係者となればなおさらな」
「……」
時成は黙ってしまった。そうか俺は手をだしたら不味い奴と戦ったのかと今さら自覚した。
「俺達もお前の性格は分かっているつもりだ。だからもう一度あえて言うぞ」
テツははぁーと再びため息をついてからこう言った。
「緊急の時以外、能力を使うなよ」
と。
テツは分かっていた。弥生の身に危険が迫った時に「能力を使用しない」と言う選択肢が時成の中に無いことを。何故なら太陽と時成は性格が似ていること。左出田を能力を暴走させながら倒したあの日のこと。それだけで証明したことになっていた。
だからテツは緊急と言う言葉を使った。時成が能力を使い弥生を守ったとなればメリットは此方にあると理解していた。
人数が少ない妖力使用の回復能力者の一人の命と引き換えにグリーンアイの素性が分かるのであれば安い交換になるからだ
「分かりました」
時成は一礼してから執務室を出て行く。
「お二人さん。仕事だ」
諦めたテツは二人に声をかけた。
「分かりました。飯田の詳しい戦力を調べてきます」
太陽と天将は立ち上がり執務室を出て行った。しかしこの後、約三ヶ月。飯田家は軍隊を明確に風の民へと動かすことは無かった。
次回『風の想い人』四十一話は11月12日に投稿する予定です。
よろしくお願いします。




