四話 転校少女と落ちこぼれ
三話のタイトルと本文にミスがあったので修正しました。
転校してきた弥生は、空いていた時成の隣の席に座った。
「久しぶりだね」
「俺に話かけないほうが良いと思うぞ」
時成は、弥生のこれからの中学院生活の為にそう言った。なぜなら、
「あの転校生、落ちこぼれと話をしているぞ」
「多分なんて言われているか知らないのよ」
弥生は周りを見る。クラスの大多数の目線は、時成と自分に向かって冷たく突き刺さっていた。
「俺はクラスの中では、こう呼ばれている。『無能力者』と」
言葉では『無能力者』と自分を蔑んでいるのだが目だけは言葉と違い、相手を嘲笑しているようにしか弥生は見えなかった。
弥生のようにそう感じた人間が他にも4人ぐらいいたが、弥生は一切気がついていなかった。
中学院。12歳から15歳までが教育を受ける場所でもある。応用国語、基本数学、社会、能力学、能力技能の五種類の科目がある。一科目1時間くらいの授業で教師がそれらの事を教えており、毎日合計4時間くらい授業がある。
この世界には、自分の能力を使うために、三つの動力源がある。「魔力」、「妖力」そして「霊力」の 三つだが、大多数はこの動力源を知らなく、これらを基に使う「能力」と言う言葉を使っている。
それらの動力源の違いは見ただけでは、判断がつかない。だから動力源をの区別するのは難しく、能力を使うときの特徴でしか分からないそうだ。
能力を使う人の約七割は、魔力による魔法を使うので能力学は必然的に魔法学、能力技能は、魔法技能になるがその事を知っているのもまた一部しか知らなかった。
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午後2時30分放課後。
誰もいなくなった教室で、時成は弥生と話をしていた。
「時成が駄目な科目って能力学と能力技能でしょ」
「ああ、そうだよ」
中学院は、能力学、技能の二科目の成績で優劣が付けられる。他三つは、良い成績でも何でも良い、そんな学校だ。何故ならその二科目が良いと飯田から推薦が来て、卒業後、勤務が出来ることもあるそうだ。
だって時成は、昔から魔力は扱えないものね
少数の人しか知らない時成の秘密を知っている弥生は、事実を知らないクラスのみんなが可哀想に思えた。
そのまま知らない方がクラスの人達は幸せかもしれないよねーやっぱり
弥生は、この事実を時成がクラスの人に言わない限り、言うつもりはなかった。
「『無能力者』かっ。ふふっ」
「嬉しそうだな」
弥生は時成の事実を考えると笑うしかできなかった。
それを見た時成は微笑む。本当に小さな時にしか弥生とは会っていない。だから何もかもがとても久しぶりに思えた。
「一緒に帰ろ」
弥生は歩きだす。そして時成はその後をついていく。
「本当に久しぶりだな」
時成は呟いていた。
「えっ何か言った」
急に振り返った弥生は、時成の目を見つめる。
可愛い顔をしやがって
時成の今の弥生への感想だった。
「いいや何でもないよ」
そう言って時成は弥生の隣に行くまで走ってから一緒に歩きだした。
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ここは、風の民中央支部。支部とは、旧妖魔共和国にある風の暗部が運営や管理、拠点とする場所である。
中央支部の他に、アイスジーナ王国に一番近い西の支部と、都市国家アクアストーンに一番近い南西支部がある。
そんな中央支部に春風太陽と南雲天将の二人がそろっていた。
南雲天将。弥生の父親であり春風太陽と歳が同じである。背は天将のほうが低く、黒色の服に黒のジーパンを履いている。
「任務お疲れ」
部屋の奥に黒い人影に天将は目に殺気を籠めて人影を睨みつけた。
「おー怖い怖い。いつになっても、お前の殺気だけは、一瞬だけ身震いしてしまうんだよな」
そう言いながら黒い人影は自分にかかっている影を取り除く。
「お久しぶりです川田さん。ですが僕もよく帰って来ていたんですけどね」
川田影道。風の暗部のナンバー2であるが支部にいるほうが珍しく、思い立ったかのように居なくなったと思えば、多くの情報を持って帰ってくる。
髪は黒に近い茶髪だ。お洒落上手な一面もあり、環境に溶け込むことのプロフェッショナルでもあった。能力はさっき見た『影を操る能力』を持っている。
そのような中、中央支部のドアが勢い強く開く。入って来た人は、少しだけ息が上がっていた。
「報告します」
一人の男は、中央支部の中にいた三人に報告を始める。
それは風の民の、仮初めの平和が終わる瞬間でもあった。
次回『風の想い人』五話は3月12日に投稿する予定です。