表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
35/255

三十五話 太陽の訓練その3

太陽との勝負が始まる少し前。


「ちょっと聞いて」


沙奈香は道場の片付けが終わった三人を呼び止める。


「どうしたんだ」


時成は木刀を片手に持ち、歩くのを止めて沙奈香の方に振り返った。弥生と真も沙奈香の方に向いた。その間に沙奈香は自分の感覚を研ぎ澄ます。そして、はぁー、とため息をついてから真剣な表情をして話始めた。


「ごめん。私、魔力が殆ど体に残ってない」


「えっ」


驚きを隠さない三人に沙奈香の口元が緩む。


「まっ、詳しくには後魔法陣を3回展開出来るかどうかかな」


「ってことは沙奈香ちゃんの魔法には過度な期待は出来ないね」


冷静に考察する弥生。その話を聞いて核心する。足手まといは私だと。何故なら戦闘スキルは他三人より低く魔法は余り使用しない。


自分のことは人より知っているのは弥生の中では辺り前。だから太陽の予想外から攻撃したいと考えている。


「分かった。でも作戦は沙奈香に任せるしかないぞ。適任は沙奈香だからな」


時成は三人を見て異論がないか確認する。


「時間がいると思うし、その間は俺と真がどうにかする」


「えっ、俺も」


真は分かっていたが驚いた。そして、髪を右手でいじりながら頷いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時は戻って現在。


「ちょっといいかな」


沙奈香は三人が固まっている方向へ歩いた。そして、口角を上げて、目を細める。


「面白い作戦(こと)を考えたのだけど乗ってみる」


その言葉に反応した時成と真は立ち上がり悪い顔していた沙奈香を見て悪い顔になった。


「聞かして」


二人は同時に同じ言葉で返事をした。そして、その様子を見た弥生は両手を肩ぐらいまで上げて諦める素振りをする。そして、悪い顔した三人の方向へ歩いた。


「内容によっては止めるからね」


とか言いながら弥生も悪巧みに参加した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


戦闘開始から十五分が経過した。


沙奈香と弥生は少しずつ近づいては来ているが全く勝負に参加してこない。そして、時成と真は連携などしていないような立ち回り


多くの雑木林の中を夜の闇と同化している太陽はこれまでの戦闘結果を踏まえ、多くのことを考える。


太陽は、四人の位置関係を気配と殺気だけで特定する。特に裏山は管理されていない木や雑草が生い茂る。文字通りの雑木林である。さらに立っている地面はもちろん勾配がついていて足場が悪い。


太陽曰く、その条件なら探索のプロでは無くてもある程度なら視力や能力を使用せずに把握が出来るらしい。


裏山に入ってから時成と真の襲撃を太陽は合計六回防いでいた。その過程で太陽は無意識に裏山の西側(水の都やアイスジーナ王国との国境がある方向)に移動していた。


「ザッザザザ」


不意に太陽の背後から足音が聞こえる。だから太陽は急いでその足音の方向へ向いた。その瞬間、緑の目と目があった。その緑の目の持ち主、時成は木刀を水平に振った。


「まだ甘いぞ、時成」


夜の闇で余り目を信じることは出来ないが太陽は簡単に時成の木刀を愛刀で受け止める。だが時成は攻撃を止めなかった。


一度、太陽の刀に押されて半歩下がってから。今度は上から木刀を振り下ろす。その行動の対応に太陽は、刀の背を右手、柄を左で持って時成の攻撃を自分の頭の真上で受け止める。


太陽の刺客はまだ他にもいる。今度は二人を巻き込むように真の斬撃は山の斜面を駆け上がる。太陽は自分の懐まで真の斬撃を呼び込み、少しの動作で斬撃を避ける。


太陽が避けた時に斬撃が飛んできていることに気がついた時成はもうどうすることも出来なかった。


「うわぁ」


と言いながら、山頂の方向へ吹っ飛んで行った。


その様子を見ながら太陽はここまで来た方向に逆戻りするために走り出した。だがそれは許さないと真は追加の斬撃を増やして二発目、三発目と進行先に飛ばしていく。だから太陽は西側へと進むことが出来なかった。


ちょっと待て。何故俺は西側(こっち)に行っているだ。気がつけば中央付近の山の中腹で迎撃していたはずなのに。どうしてだ


七回目でようやく自分の行動に疑問を感じた太陽は足を止めて刀を持っていない手で顎を押さえて私案する。


何故女子二人は勝負に来ない。真の斬撃は何を基準に量を増やしたり減したりしている。人の行動には必ず理由があるはず


後少し時間を使うと何か分かりそうな問題だが、それを許さないと真の斬撃が飛んで来る。


太陽は刀を強く握り斬撃を捌く。そこへ真の斬撃に吹っ飛ばされた時成が帰って来る。


「何を待っている、お前は」


太陽と時成は刀を交差させ鍔迫り合いをする。能力込みの力比べでは太陽の方が分が悪い。だから時成は太陽を西側へと追い込んでいく。


「さぁー」


ニヤッと笑った時成は少年が悪戯をしている最中のような悪い顔になった。


何か企んでいるな


そんなことしか分からない太陽へ向かって一本の光の様な矢が斜面から駆け降りて飛んでいく。それを見た太陽は時成の企みが分かり勝利を核心する。


会心の一手だな。これは沙奈香の魔法の矢。この一発を当てる為に隙を作っていたのか。光のような矢を作れるのは沙奈香だけ。残りの魔力が少ない沙奈香はもう殆ど魔法は使用出来ないはず。接近戦は俺の方が圧倒的に有利。


太陽は光の様な矢を避ける為に精一杯の力で時成を後方へ押し込むと自分も後方へ三歩下がった。


光の様な矢は二人の間を虚しく飛んでいく。だが続いて二本目が太陽へと飛んで行く。


「あれっ」


何で二本目が飛んで来たと思った時にはもう遅かった。時成はその間ずっと声には出してはいないが笑っていた。


「俺達の勝ちだ」


そう時成が言った瞬間、太陽の体は動かなくなった。

次回『風の想い人』三十六話は10月1日に投稿する予定です。


近々活動報告も更新する予定です。


これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ